天使の世界17
「そんじゃ、寮まで送ってってやるよ!」
ということになり、そのまま寮を目指す。
他にも気になることは山ほどあれど、これ以上を聞いたところで覚えきれないだろうなと逸人自身も判断したための移動だ。
道中、お金の名称や価値についてだけは流石に確認が入ったが・・・出店で商品を購入する過程も見ていたのだ。それほどの乖離などあるはずもなく。
名称はエーテルで表記はEが多いらしい。
また価値については円よりは少し高いが、物価比較では円とほぼ同等。
出店の焼きそば、たこ焼きが300円と聞くと夜店価格かと思うが、凡そ3人分で300円だと思えば、カップ麺1個100円と差は感じないはずだ。
支給額は月に10万E。
転生者でも位階は得られ、それを上げれば支給額も増えるのだとか。
寮費は存在せず、光熱費も払わなくていいと言われたので、逸人としては位階なんか上げなくても生活には困らなさそうだなと。
(もちろん。初期投資が必要な部分があるのはわかってるから、しばらくはひもじいだろうけど・・・・・・大丈夫なはず、うん)
いかんせん侮り過ぎなような気がしないでもないが、不安に圧し潰される必要性もない。
転生者が注目を集める存在であるなら、困ったから助けて欲しいと言えば手掛かりられるんじゃないか? なんて楽観思考も持っていて。
その思い上がりの原因は両サイドを固めるキレイどころの天使達なのだが、浮足立つ逸人には気付けない。
しかし試練というものは、いついかなる時にも襲い来る。
今回は寮を目にした瞬間。
いや、その少しあとから――。
(小さいな!)
それが寮に到着した逸人の最初の感想だった。
生憎と学生時代の只野逸人に寮生活の経験はない。
そして当然であるが、故に学生寮というものに馴染みなどない。
それでも寮というものが”ちょっと大きい一軒家”より大きいものだということぐらいは知っていた。
「ここが寮・・・で、合ってる?」
「そうだぞ!」
「間違いありません」
言い切る両者の態度から嘘ではない様子。
とはいえ、形からして一軒家だ。
なんなら塀に囲まれてもおらず、門すらもなく。
郊外からも少し離れた田舎にある家といった印象。
それがポツンと。
「この鍵は玄関の鍵・・・ってこと? 裏口とか勝手口もないの?」
「さあ? 裏に回ってみるか?」
「中から探した方が早いのでは?」
恐る恐る鍵を差し込むと、すんなり滑り込み、回すとカチャンと音が鳴る。
ノブを捻って引けば、扉は抵抗もなく開き―――ちょっと受け入れがたい惨状が広がっていた。




