天使の世界13
「暇だもんで邪魔をしない。あなたの大好きな彼のためでしょうに」
「そうは言ってもよぉ! そんな歴史! なんて知ったって役には立たねぇだろ? もっと今の話をしようぜ‼ せめてさあ!」
「わかったから・・・はしたない行動は慎んで。そんな姿を誰かに見られたらどうするの」
「いいじゃねぇか別に。な~?」
ヤンキエルはルールイールと意見をぶつけながら、固まる逸人を良いように枕としていた。具体的には膝枕とでも言う状態か。
並べた椅子に寝転がり、後頭部の結び目を股の間に突き刺すが如く仰向け。
逸人としては股間と急接近する異性に緊急事態宣言を発令したいが、下手に動くでは何かとんでもないことになりそうだったために、引き続き静止。
「困ってるじゃない」
「そんなことねぇって! アタシにはわかる! これは間違いなく喜んでる‼」
「それが本当ならいいんだけど・・・位階の品位はあまり貶めないでね」
「アタシより上位になってから言ってみろ!」
「位階?」
急に飛び出た言葉に逸人が引っかかる。
「天使の階級のことだ! 一がショボくて、十が最強! 十まで上がれば、大天使になれるんだぜ‼ ちなみにアタシは七位な‼」
「大天使になれば天使を導く権利が与えられるので、この学園の教師の皆様、十位まで位階を上げられて大天使になられた諸先輩方ということになります。私は現在六位になります」
「それってどうやって決まるの?」
「力を証明すんだよ! アタシはこれだけ強いってな‼」
「それはあなたの場合でしょう? ほとんどはその分野でのテストや実績で決まります。そのための授業ですから」
「人によって違うんだね?」
「おうよ! 目標が違うからな‼」
「目標?」
そういえば”目指すべきところ”がとか言っていたなと、しかもそれが個人で違うってことなんだろうか逸人が思っていると、
「その話をするために、学園の創設について説明させてほしいの。いい?」
ルールイールはヤンキエルにも確認するように訊く。
聞かれた側は嫌そうな表情を見せるも、短く息を吐いて掌を差し出す。
「ありがとう。まず学園を創設したのは神様なの。これは少し話したと思うけど、天使に目標を与えるための手段ね。最終的には神様になることが目的ではあるのだけど、その過程は天使によって違うわ」
「学園っていうなら、過程は統一した方が効率的じゃない?」
「本来であれば、そうね。でもそれはできなくて、原因は神様と天使の特性にあるの」
「特性? それも天使だけじゃなくて神様も?」
「ええ、聞いたことはない? ○○の神様っていう呼び方」
「ああ・・・それってさ」
「想像の通りだと思うわ。中には万能を冠する神様もいらっしゃるけれど、皆が皆そうじゃないでしょう? 同じものを司ろうとすると」
「メジャーな方に流れちゃうわけか」
静かに頷きが返ってくることで事実が確定する。
言ってみれば競合他社だ。
国を跨げば結果が違うことはあっても、近い場所であればどうしても――そういうことは起こり得る。
それを理解するば自ずと疑問が浮かぶ。
では、彼女らはなにを?
口には出なかったものの、視線に気付いた両者が答える。
「私は規則や規範を」
「アタシは喧嘩だ‼」
軽く会釈するルールイールと対照的に、寝転がっていた状態から跳ね起きるようにして力こぶを作って見せるヤンキエル。
それぞれ名前とキャラの関連を感じる内容だけに、つい気になった。
「それって名前とは・・・」
「もちろん関係あるぜ!」
「生まれにも由来しますが、大部分は目指すべきところから来ています」
そうなんだと、心中で手を打つ隙間。
(だとしたらツインテエルとかメダウナって―――・・・?)
途中であった天使の名前に思いを馳せた。




