天使の世界12
「次は――そうですね、神様になれるのか? という疑問を消化しましょう。そうすれば自ずと、学園の存在意義にも触れることになります」
「学園の・・・?」
「ええ。まず、神様になれるか? ですが、なれる――と、されています」
「されているっていうのは、つまり・・・」
「残念ながら、過去に神の座へと至った天使は居ません」
なぜ? とは思っても、言葉が出ない逸人。
出さないのではなく、間違いなく”出なかった”だ。
どこか納得してしまっていたからだ。
神話の中でも天使から神になった存在に、心当たりがなかった。
そこへ被さるように、天使ロボット説と堕天システム。
これらが絡み合うと足を引っ張り合うような気がしたからだ。
「天使は・・・って言うことは?」
「想像の通り、転生者であれば存在したとされています」
「昔のことって認識でいいのかな?」
「はい。2000年程前だとか」
2000年も前と言われてしまうと、どうしてもチラつく名前があるが、触れると面倒そうだと考え、逸人は華麗なスルーを選択した。
「それからは1人も?」
「その間は誰も。神界へ招かれた者は居ません」
「神界に招かれたら神様なんだ?」
「神の住まう地ですからね神界は。足を踏み入れることができるのは完全な神格を持った者のみと言われています」
「言われて・・・?」
「少なくとも天使でそれを確認できた者が居ませんので。言葉を頂くことはありますが、天界へ赴く神様もいらっしゃらないから」
「そっか。人間だって天使を知ってても、天界のことなんか知らないしね」
「神界への入口である門は存在しているのよ。開けられたなら、それでも神として認められるらしいけれど・・・」
「開いているとこを見たことがない?」
訊けばルールイールがコクンと頷く。
(それじゃあ眉唾でも仕方がないのか。それにしたって、話を聞くだけでも肩が重いな・・・天使から神様になったことがないなら、実績がある転生者の方へ期待や注目が集まるよね? たぶん)
永らく学生を続けてきた只野逸人という人間は。
突出した才能を持ち合わせて居らず。
期待や注目からは縁遠く。
しかしてそれで満足していたのだった。
そんな小市民が―――・・・、と不安に押し込まれる最中。
肩にズシリと感じる重みが動く。
「なに、してるの・・・?」
「だぁって暇なんだもんよぉ~~」
首を回して隣を見やれば、ヤンキエルの顔がいつの間にか肩に乗っかっていることに気付いた逸人。
飛び上がるほど驚いたものの、どうにか身動ぎ一つ起こさず耐える。
――というと聞こえがいいが、本当はただ固まっただけである。
異性の顔がこんなに近くに来たことなどなかったからだ。
そして肩の上でモゾモゾと蠢く頭の一挙一動に慄いた。
(肩でも形って意外なほど鮮明にわかるんだ)




