天使の世界11
「ここからは、なぜそんな能力を有しているか・・・の説明をするのだけど、天使は神様に創られた存在で、生物っていうよりはシステムとして生まれた、命令通りに動くロボットって言えばわかりやすいかもしれないわね」
「それはなんとなく、そうじゃないかなって思ったけど」
「本当? よかった。でも、それは最初だけの話。神様は人間が大好きで、自分達の姿も人間に寄せていった。そうなると、自分達が創った天使という存在が命令でしか動けないことを嫌悪するようになったそうよ」
「AI的な話なのかな? 自由な選択による変化が欲しかったとか・・・」
「神様の趣旨や思考を正確に測ることはできませんが、つまらないと感じたのではないでしょうか。そこで人間の欲望に着目したわけです。もちろん、神様にも似たような欲が存在していたので、それを基に。まずは性別やそれに伴う快楽と種族の維持と繁栄を結び付け、同時にルールも作りました」
「ルール・・・?」
「所謂、善悪の定義ですね。欲望は感情を呼び覚ましますから、なにかと問題が起きたのではと推測できます。堕天という現象も、この時を境に記録されるようになっていますから、大きな変化があったのはまず間違いないわ」
「だとしたら、堕天っていうのは犯罪者みたいな括りになるの? もっと、なんていうかこう、不意の――突発的な現象だと勝手に想像してたんだけど。違反で点数が減って規定値以下になったら堕天っていう処理がされる・・・みたいな感じ?」
「いいえ、想像している現象が近いはず・・・と言っても、ごめんなさい。堕天については詳しくわからないの、ざっくりと天使に与える罰として知られてはいるのだけれど、その原因を明確にしてしまうと対策を打つ不届き者が現れるかもしれないから」
「あぁ、抜け穴的な」
「そう。だから堕天したらどうなるかも、知っている天使は居ないと思うわ。一説によると、悪魔は堕天した天使の成れの果てと言われているのだけれど、悪魔の正体には他にも説があって。天使を創る過程で生まれた失敗作だとか、天使を作ることを良しとしなかった神様の手で創られた反天使生物だとか」
まぁ天使が居れば、悪魔も居るかと納得する反面。
お互いの認識や勢力を把握していないことに違和感を覚える逸人は。
(あ、でも。お互いじゃなくて一方的に知らないだけの可能性もあるのか)
直ちに嫌な想像を働かせてしまう。
魔が差すという言葉を知っているからこその思考だった。
知らずの内に忍び寄るのが悪徳である。
「ルールについては生活していく上で嫌でも知ることになるでしょうから、ここでは割愛させてもらいますが、凡そは下界の法律に近しいと思っておけば問題ありません。転生者が堕天したという記録もありませんからね」
「そうなんだ?」
「ええ、転生者は下界で前項によって徳を積み上げて来ているわけですから、普通に生活するだけで堕天の危機は遠のいて然るべきでしょう」
堕天という現象が罰として機能している。あるいは悪行と結び付けられているならば、ルールイールの言うことは正しいはずだ。
実際には堕天のトリガーは不明である以上、絶対ではない・・・が、心に留めておく程度でも避けられると思っていいだろう。
逸人に転生者としての自覚も、善行を積み上げてきた実感もないことを除けば、だが。




