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天使の世界10

「話がそれましたね。説明に戻りましょう」

 コホンと一つ咳ばらいを挟んで、ルールイールは本題を動かす。

「確か、天使は人間を模して創られた――・・・だったっけ?」

「そうです。人間の誕生にも諸説(しょせつ)ありますが、もし仮に。神様が下界に直接的な介入ができるのであれば、天の御使いたる天使など要らないと思いませんか?」

「そう言われれば、そうだね」

「つまり、神様は下界に直接的に介入する手段がなく、それに代替(だいたい)する手段として人間に近い存在を作り、神の住まう上界、または神界と呼ばれる世界と、下界あるいは人間界と呼ばれる世界とを繋ぐため、天界という世界まで設けてしまった」


「なんでそこまでして・・・?」

「神様が人間をこよなく愛しているからでしょうね」

「えぇ⁉ なんでぇ⁉⁉」

「そんなに驚くこと? 人間は下界で最も優れた生物なのよ? だから繁栄(はんえい)した。そして、優れた生物を好きになるのは、別におかしなことではないでしょう?」


 そんなペットを選ぶみたいに・・・と思った逸人だが実際、近い感覚だったのかもしれない。

 犬や猫が人類史によく出てきたのは、賢さと愛嬌(あいきょう)のなせる(わざ)だとよく言われている。

 指示に(したが)い、(やく)を遠ざける故の愛玩(あいがん)


 人に近い形で道具も使える猿が、ペットとして定着していない理由にも繋がる気がした。

 人間の信仰が動物の従属(じゅうぞく)に近いのであれば、神目線では人間は賢く愛嬌のある生物というカテゴライズになり得る。


(だとしたら天使って、ペットロボットみたいな扱いになるのかな?)


「納得してくれたみたいだから、天使の能力について話すわね。まずはもう知ってるはずだけど、光輪や翼の有無と性別や体型の変更ね。ほとんど見た通りで、人間よりも万能に近くなってると言っていいでしょう。光輪については特別な能力はないけれど、こんな風に髪留めくらいにはなるわ」


 言いながら、ヤンキエルの腕を取って動かす形で神の結び目を見せる。

 ポニーテールとなっている彼女の髪の根本には、光輪と思しきものが。


「なんでアタシので説明すんだよ‼ 自分でやりゃぁいいだろ‼」

「あるものを使った方が早いでしょう? それに可愛いと思うわよ?」

「そういう問題じゃねぇよ‼ 大きさや色も変えられるんだぞ⁉ そっちも見せるにはデカいのを出した方が見やすいだろ⁉」

「でもそれって特に意味がないでしょう?」

「そーだけどよ‼」


 文句を言っていても、ルールイールの言葉にヤンキエルが賛成するぐらい、光輪には特別な使い道はないらしい。


「あとこれもわかってると思うけど、光輪と翼は出し入れができるわ。飛翔(ひしょう)する場合には翼を出した方が制御しやすいの。隠した状態でも飛翔は可能だけど。それに光輪も翼も、体型と同じように好みの形に整えられるわね。一部(こだわ)りが強い天使も居て、気が付いたら褒めてあげると仲良くなれるかもしれないから、覚えておけば損はしないでしょう」

「メリットとかはないんだ?」

「異性に好かれるくらいの効果は見込めるはずね。まあそれに振り回されるようじゃお話にならないけど」


 わざわざ視線をヤンキエルに送る。

 それに釣られるように逸人が同じく見やると、ヤンキエルは少しだけ(ほお)紅潮(こうちょう)させながら、フン! と首を振った。

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