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天使の世界7

「でぇッ⁉ ちょっ‼ なにそれ⁉」

「おっ? どうだ⁉ やっぱりデッカい方が好きか⁉」

「胸の大きさなんか気にしないから‼ っていうか、それどうなってるの⁉ 大丈夫ッ⁉」

「なに驚いてんだよ? 下界でも天使は両性だって伝わってるはずだろ? 性別を任意に変えられるのに、体型を変えられないわけねぇじゃねーか」

初耳(はつみみ)なんですけど⁉」

「そうなのか? まあその面白れぇ反応が見れたからいいけどよ・・・ん? ちょっと待てよ? 胸の大きさじゃねぇなら、なんでアタシは拒絶(きょぜつ)されてんだ?」


 本当にピンからキリまで驚いてばかりの人間。

 生活や社会の常識ではなく、生物としての常識が(いちじる)しく違うのだから無理はないのだが、(いささ)か見飽きたと言える。

 別の反応を期待したいが、しばらくは難しいか。


「それは君のことを知らないからだよ! それどころか、天使? 天界? のこともよくわかってないのに、(めと)る娶らないって言われたってさぁ!」

「そう言われてもなあ・・・アタシは逆に下界のことなんか授業でしか聞いたことねぇし」

「そう! それも‼ なんで学校があるの⁉」

「え~‼ そっからかあ~・・・? う~ん、なんでだっけな? 要約すると神様になるため、なんだけど」

「ごめん、そこも気になってた。天使って神様になれるの?」


 話の腰を折りに折りまくる逸人(いつひと)

 しかし重要なことだ。

 天使の生態、神になるための学園の実態、神への昇格という命題。

 どれも、今後この世界と付き合っていくには外せない話に違いない。


「あ~そういう堅苦しい話は苦手なんだよなあ・・・」


 目を細めてポリポリと頭を()くヤンキエルの後ろから、


「そのくらいのこと、常識として備えておくべきでしょうに」


 (まさ)しく天使(ぜん)とした女の子が(あき)れた声で指摘する。


「げぇ、なんで見つかっかなあ・・・」

「あなたの声が大きいからよ。それでそちらのあなたは、この学園のことについて知りたいのだったわね?」

「他にも天使のこととか、神様になれるのかとか、その・・・色々と」

「転生者なのよね? それなら気になるのは当然だもの。けど残念ながら、彼女は粗忽者(そこつもの)だから、あなたの疑問には十分に答えられないの。同族として謝罪させていただくわ。ごめんなさい」


 一拍を置くほど丁寧なお辞儀(じぎ)は、頭の輪っかを通して頭頂部(とうちょうぶ)(のぞ)き見える。

 また、背中には綺麗に折りたたまれた大きな翼を見ることも出来た。


「誰が粗忽者だ! 頭でっかちのルールイール‼」

「ええ、そうね。ありがとう、自己紹介の手間を(はぶ)いてくれて」

「このっ‼」


 悪態(あくたい)をさらりと流されてご立腹のヤンキエルが勢いよく立ち上がろうとするが、大きくし過ぎた胸に振り回されてバランスを崩すと、ルールイールと呼ばれた女の子のヘソの辺りにキスをする格好に。

 ルールイールはそれを迷惑そうな顔で耐え支えながら、


「こんな醜態(しゅうたい)(さら)してまで胸を強調しようだなんて、横着者(おうちゃくもの)のほうがお似合いだったかもしれないわね。改めまして――私はルールイール。彼女よりは博識(はくしき)だと言えるから、気になることがあるなら話してみて? ここ、図書室の本も多く読んでいるから、探す手間も省けるはずよ」


 涼しい顔に切り替えつつ華麗(かれい)な自己紹介を終える。

 逸人としてはヤンキエルのあしらい方に感服(かんぷく)すると同時に、”彼女”という言葉の端に居心地の悪さを感じていた。


(わかってる。ここで言う”彼女”ていうのは、あの子やその子みたいな二人称であって、恋愛的な意味がないことはわかってる・・・んだけど、初めて告白された後すぐにその単語を聞いて、意識するなって方が難しいよなぁ)


 この居心地の悪さは心の浮つき具合から来ていて、そのことを自覚した時、逸人は自身が調子に乗っていたことに気付くことになるのだが――・・・。

 今はまだ、その時ではないのだった。

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