表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/27

天使の世界6

 図書室。

 なんの変哲(へんてつ)もない、よくある書物を詰め込んだ部屋。

 なのだが・・・逸人の目線からは1点だけ、普通と違う部分があった。


 書架(しょか)の全長だ。

 高くても精々(せいぜい)2Mかそこらが一般的だと思うが、この図書室の書架は天井までみっちりと本を(くわ)え込み、そそり立つ。

 しかもだ。天井の高さが3Mは(ゆう)に超えてそうなほど高いのだ。


 そんな状況で数多の背表紙(せびょうし)に見下ろされる図は、真っ先に落本(らくほん)による怪我を想起させるが、ママエルの何気ない言葉が(よみがえ)る。

『下界と違って地震はない』

 この光景はそれを証明するかのような存在だった。


 そして、見上げればたった1人が逸人に、天使と人間の違いを見せつけていた。

 天井近くで本を選んでいるのだ。

 飛行能力など、人にはあらず。

 現実の認識を更新する機会をくれる。


 時を同じくして、(いま)だ名乗らぬ肩に組みついた女の子もその存在に気付く。

「げ・・・面倒なのが居やがる」

 そう短く吐き捨てると、

「こっちだ!」

 強引に逸人を(あやつ)って部屋の奥へ。


 規則的に立ち並ぶ書架の足元を縫い、奥まった場所に設置された机と椅子へ腰を下ろす両者。

 逸人としては対面が良かったが、なにせ肩を組まれていたせいであえなく、横並びでの着席となる。


「あんまりデッカい声は出すなよ?」

「そりゃぁ、まぁ・・・図書室だからね」

「そうじゃねぇけど、それでいい」


 女の子は軽く周囲を警戒(けいかい)する様子を見せるが、直ぐに会話へ前のめりになる。


「それで、なんか聞きたいことはあるか? なんでも答えてやるぜ!」

「あー・・・っと、それじゃあ――男だと告白を断っちゃいけないみたいなのはなんで?」

「別に断っちゃいけねぇわけじゃねぇよ。あんまり断る意味がねぇだけだ。あー、お前は日本で暮らしてた・・・んでいいよな?」

「そうだね。日本は知ってるんだ?」


「当たり前だろ? ここは日本の担当区画だからな。そうなると、えー結婚と比較してだな? 天界だと一夫多妻が基本なんだよ。それが普通で、妻は何人いてもおかしくないどころか、力の強い妻が居ることが一種のステータスになるっつーか、そういう妻を(めと)ることでもっとモテるようになるっつーか、まあデメリットがねぇんだよ」

「いやでも経済的なこととか、その妻同士? での関係とか、あとから問題が出てくるんじゃないの?」

「下界とはその辺りもかなり違っててな。天界での婚姻ってのは新しい家を建てるようなもんなんだよ。そこに住む全員が家のために働くし、男の――つまりお前の言うことが絶対になるんだ。だから娶った順番とか、子供の有無とかは関係なくて、お前の気分次第でどうにでも出来るってことだ」

「えぇ⁉ それで上手くやっていけるの⁉ 急に捨てられたりとか・・・」


「もちろん、そういうこともある。ただし、理由も無しに女を捨てようもんなら、周りからの評価はどん底に落ちるし、捨てた女が堕天しようもんなら神罰が下るから、あんまりそういうことはねぇな」

「・・・神罰?」

「よくあるのは落雷だな。避けられにくいし」

「ああ、わかりやすい」


 地上にも浸透(しんとう)した神罰のイメージだ。

 天使であっても雷は避けられないのかと納得する人間あがり。


「あれ? でもそれだけだとメリットも無いような?」

「なんでだよ‼ お前は女に興味がねぇのか⁉ それとも、アタシの身体が貧相(ひんそう)だからか⁉」


 大声は出さないよう念押しした側が騒ぐ。

 慌てて宥めようと否定する男。


「別にその―――・・・、君の身体がどうとかじゃなくて!」

「~~ッと! ワリィ、まだ名乗ってもなかったか。アタシはヤンキエル! お前の女にしてくれるなら何て呼んでくれたっていいし、要望があればどんなことにも応えるぜ‼ 例えば体型や胸だって―――」


 そう言いながら、ヤンキエルと名乗った女の子は自身の胸をそれぞれの(てのひら)(つか)むと、信じられない光景を作り出す。

 逸人の目の前で、胸の大きさを盛り始めたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ