天使の世界5
「・・・・・・・・・・・・?」
女の子からきっと、ありったけの勇気を消費しての告白。
けれども、逸人の答えは沈黙。
しばらく待っても反応がないせいで、女の子は首を傾げ、終いには怒る。
「おい! 無視するなよ‼ ヒデェじゃねぇか‼ そんなに好みじゃねぇってのか⁉」
「えっ? あ、ああ! あまりにも急だったから、理解が追い付かなくて」
「そんなに難しい話はしてねぇよ‼‼」
「嘘でしょ⁉ 人生における最大の分岐点だと思うけど⁉⁉」
人生。
そう人の生で省みれば、伴侶を選ぶというのは1つのゴールである。
特に結婚の制度が設けられ、一対がルールとして定められていれば、それはそれは大きな分岐点となる。
ただし、思い出すべきは逸人の現在と、この世界。
少なくとも逸人は自認において死人である。
であれば・・・判断のための基準が生前と一変していてもおかしくはない。
そうすると女の子の告白に勇気が必要だったかは不明となるが。反応を見る限り、そこはあまり違いはないのだろう。
「なんでだよ‼ お前は男なんだから―――」
女の子は途中まで口にして、はたと逸人の格好に目が行く。
「お前・・・もしかして転生者か?」
「・・・たぶん、そうだと思うんだけど」
「なるほどなあ‼ 焦ったぜ! そんなに俺に魅力がねぇのかってよ・・・でも転生者なら仕方ねぇよな‼」
「っ⁉ そうなのかな⁉」
ガッ! と急に肩を組まれたことで、またしても緊張を増す逸人。
一瞬でも身体が離れて安堵したところへ不意打ちを喰らい、目まぐるしく変形するパーソナルスペースに惑わされ続ける。
「だってまだ転生してきて日が経ってねぇだろ?」
「―――・・・つい、さっきのことで」
「そうだよな! なんにもわかってねぇんだもんな‼ そうだと思ったぜ! そうじゃなきゃ迷ったりしねぇはずだもんよ‼」
立て続けに、今度は急激に顔を近付けられてタジタジの逸人。
女の子が顔を近付けた理由が威嚇や威圧だったと知る由もない。
「だったら色々と困ってるんじゃねぇか? 聞きたいこととか、わからねぇことばっかりだろ?」
「そう、だね。教えてくれる?」
「おうよ! 任せろ‼ そんじゃ、話ができる静かな所に行かねぇとな‼ さっきみたいに絡まれちまったら雰囲気が最悪になっちまう」
「いや、雰囲気とかは気にしないんだけど・・・!」
「そうか? でもま、図書室でいいだろっ! 図書館が別にあるから、穴場なんだよ‼」
有無を言わさぬ積極性で肩を組んだまま、組まれたまま歩き出す両者。
教員棟が遠退く中で、これでいいのか? どういう状況なんだ? と困惑し続ける逸人だったが・・・そんなまともな思考も。腕というか、脇腹というか、この中途半端な部分に当たる柔らかさに乱され、霧散してしまう。
半分ほど押し出された腕の所在が見つかることはなく、その感触にドギマギしている間に図書室へと名前も知らない女の子に連行されてしまった。




