石焼き芋とさんにゃんにゃん
秋である。
天高く馬肥ゆる秋。仔猫も肥ゆる秋である。千代が石焼き芋屋さんで買った焼き芋を、沖田総司と源九郎にも分けてくれた。
「食べ切れない分をくれてやるだけなんだからね!」
「解っております。ありがとうございます、お千代さん」
「にゃあにゃあ!」
沖田総司と源九郎が破顔して礼を言えばうっすら染まる千代の頬。勘違いするんじゃないよ、と言い置いて、去って行った。何のことか二人にはよく解らないが、とにかくありがたい。
「お芋さんにゃあ! マヨネーズ、バター、チーズ、何と合わせても美味しいんにゃあ」
「源ちゃんは食通ですね。流石、長生きしている仔猫なだけはあります」
「えっへん」
早速、二人して色んな味付けを楽しみながら焼き芋を賞味する。昨今、石焼き芋を買うにも、かなりのお金がかかる。沖田総司と源九郎は、心の中で千代に手を合わせながら熱々でほくほくの快楽に身を投じた。
「そう言えばさんにゃんにゃんって誰にゃあ?」
源九郎がはぐはぐ芋を食べながら沖田総司に尋ねる。
「さんなんさんのことですか? 源ちゃん、どうしてその名を知ってるんですか?」
「沖田君が寝言で言ってたにゃあ」
「……そうですか。源ちゃん、口元にマヨネーズがついてますよ。それから、さんなんさん、です。さんにゃんにゃんでは何が何だか解らなくなってしまいます」
源九郎、口元のマヨネーズをペロリと舐める。
「さんにゃんにゃん」
「さんなんさん」
「さんにゃんにゃん」
「違います、さんにゃんにゃん、……あ」
「さんにゃんにゃんにゃあ!」
ドヤ顔の仔猫源九郎、もう一個、と焼き芋に手を伸ばす。
もくもくもくもく、食べる、食べる、一生懸命に両手で芋を持ち、食べる姿は愛らしいと言えば愛らしい。沖田総司も、そんな仔猫の姿に、呼び名の訂正を諦めて苦笑すると、自分もまた新たな一個に手を伸ばした。
山南敬助。
彼は沖田総司が兄とも慕った一流の剣客であり、新選組の総長だった。そしてまた、沖田総司が介錯を務めた相手でもある。