間話休題 の 一つ目
先生みたいにアコーディオンが弾く‼︎ と思っていた私ですが、芸人として風船やジャグリンクなどの芸も披露していました。当時の私はペーペーで、ステージに立つのがやっとの状態でしたが(笑)
そんな私を見ていた望月先生は、鍛えよう! と思ってくれたのか…どうかは分かりませんが、お店にある小さなステージに立たせて下さいました。
この鍛える? シゴキ? 可愛がり? は、イキナリ始まったんですぅ〜(涙)
ある日、いつもの様にお店に出演していたら先生から呼ばれました。
「お前、そこでやれ」と言われて私の頭にはハテナマーク。
先生はアコーディオンを抱えてステージの隅の椅子に座り弾き始めます。
お客さまの視線がステージに集まり、手拍子が始まり、期待度が高まり・・・
私は「この場を乗り切らねばならない、何かしなければならない」と思いつつ、心の中で「どうしよう、どうしよう」という言葉だけが響くパニック状態。でも、アコーディオンは無常に曲を奏で続けます。
頭の中真っ白の私は、奏でられる音楽に合わせてパントマイムを始めました。
急に言われて、何の準備も無く何も持たずにステージに上がったんですよ。当時の私は芸人として3年。風船芸はそこそこ出来ましたがパントマイムは真似事程度のレベルでした。でも「ステージに上がった以上時間を保たせなければいけない」と考えていました。
今どうしてこんな行動をしたのか考えると、「オール・ザット・ジャズ (All That Jazz)」の影響かなぁと思います。当時、貸ビデオ屋で色々な映画を借りまくっていました。この映画はその中で観たボブ・フォッシー (Bob Fosse)監督、ロイ・シャイダー (Roy Scheider)主演のミュージカル映画です。監督のボブ・フォッシーの自伝映画なんだそうです。映画の中で主人公のジョー・ギデオン(ロイ・シャイダー)が身体を壊しているにも関わらず何度もステージに上がるんです。「さあ、ショー・タイムだ!」と鏡に向かい自分を奮い立たせるように言って。主人公が死に向かっていく暗い映画なんですが、私の中で妙にハマっていまして。いい年こいて厨二病ですよね(笑)
ちなみに、ロイ・シャイダーは「ジョーズ(1作目)」で鮫学者役のリチャード・ドレイファスと漫才をかましている刑事役をやってます。「オール・ザット・ジャズ」を観て、歌って踊れる舞台役者と知りました。
映画の話は置いて、、、
この体験で、自分の甘さを実感しました。身体が出来ていないからステージングが最悪だったです。あんな中途半端な演技を人に観せるなんて恥ずかしいったら無いと落ち込みました。
この事がキッカケで、パントマイムをキチンと学ぼうと思いました。
こんな話を聞くと、私が虐められた様に感じられるかもしれませんが、違うんですよ。だって、このステージの後、先生は私を叱りませんでしたから。最悪な出来だった私に、優しい目を向けて下さいました。
先生は、私が大した事が出来ないと分かっていたんだと思います。あの時出来る精一杯をやった事を評価してくれたんだと思うんです。
教える様になり実感します。生徒さんが私の指示に完全に出来なくても、その時の精一杯やろうとする意思があれば、教える側は嬉しいと感じるんですよ。間違えるとか出来ないなど些細な事なんですね。
あの時の先生の目は、そういう感じのモノだったのではないかな? と思っています。




