第二十九話
翌朝、シグルドとレイナは村の外の森に出ていた。
「今日の稽古はここでする」
「今日はどのような内容なのですか?」
「今日の内容はだな、《俺を探すこと》だ」
「...はい?」
突然のシグルドの言葉にレイナは理解できなかった。
「今、お前に目の前にいる俺は俺が魔法で作った偽物だ。本体はこの森のどこかにいる。探しだせたら、そこから剣の稽古だ。わかったか?」
「わかりました!でも、どうやって探せばいいのですか?」
「五分おきにお前に殺気をとばす。それを感じとって探せ。本当なら気配だけで探してもらいたいとこだが、まだできないなら仕方ない。わかったなら始めたいんだが?」
「わかりました!始めましょう!」
「んじゃ、スタート!」
そう言うと目の前にいたシグルドは消えてしまった。
(本当に魔法だったんだ...。シグルドさんすごい...)
そんなことを思っているとかなり遠くの方で殺気を感じた。
森にいた鳥たちも殺気を感じ、遠くに飛んでいった。
「かなり遠くなのにここまで殺気が感じ取れた...。とりあえずはやく行かなきゃ」
レイナは殺気を感じた方向に走り出した。
「...おかしい」
レイナは疑問を抱いていた。
「なんで魔物がいないの...。けっこう走ったのに一匹も見当たらない...」
レイナとシグルドがいた森は魔物が多いことで有名だった。
それなのに一匹もみないのは不自然だと思っていた。
そんなことを考えていたら、シグルドの殺気がとんできた。
「...もしかして鳥たちと同じように魔物たちもシグルドさんの殺気で逃げたのかな...」
魔物が逃げるのも不思議ではない。
レイナもシグルドに近づくにつれて殺気が肌に刺さるように感じてきたからだ。
「シグルドさんももう少し抑えてくれたら...」
そんなことを考えていたら、目の前に一匹の魔物が現れた。
その魔物は犬のような体で、硬く黄色の毛におおわれていた。
「あれは...雷狼?でも、住んでいるのはもっと南の地方じゃ...」
「ウォォォォォォン!!」
雷狼は雄叫びをあげた。
するとどこからともなく、稲妻が落ちてきて、レイナを襲う。
「くっ、考えている暇はないようです...」
レイナは剣を両手でもち、構えた。
そしてレイナは雷狼に攻撃をする。
しかし、雷狼の動きは素早く、当たる気配はない。
「...どうすれば...、あっ」
そこでレイナはシグルドの言葉を思い出した。
『剣は振るだけじゃない』
レイナはあの時と同じように土を飛ばした。
雷狼は横に跳んだ。
レイナは雷狼が跳んでいる途中、空中で攻撃をした。
ザシュ!
雷狼の血飛沫がとぶ。
雷狼は深傷を負い、逃げていった。
「はぁ、はぁ、勝った...のかな?」
レイナはまだ勝利を実感していなかった。
そこでレイナは座り込み深呼吸をした。
「私、勝ったんだ...初めて...魔物に勝った...」
そこでレイナを現実に引き戻すようにシグルドの殺気がとんできた。
「...私はシグルドさんの所に行かなきゃ行けなかったんだ」
レイナは立ち上がり、また、走り出した。
レイナが走ると一本の大きな木にたどり着いた。
「たぶんこの辺だとおもうんだけど...」
すると木の上から殺気がとんできた。
「...シグルドさんはこの上なのね」
レイナは木を登り始めた。
初めて木に登るレイナだったがスイスイと登っていく。
よくみると木には手や足をかける穴がいくつもあいていた。
「...シグルドさん、ここまで、してくれたんだ...」
レイナが天辺まだたどり着くと
「お疲れ」
「ウォォォォォォン!」
シグルドと先ほどの雷狼がいた。
「は、はい。ってなんでここに雷狼が!?」
「ん?俺のペットだが?」
「...そうだったんですか...」
「お前の修行には丁度よかったろ?」
シグルドはそう言ってレイナに笑って見せた。
「...おかしいと思ったんですよね、こんなところに雷狼がいるはずないのに」
「なんだ、気づいたのか。つまらんな」
つまらなそうな顔をするシグルド。
「まぁ、よかった」
「なにがです?」
「お前がここに気づかないでもう少し進んでいたらサイクがスタンバイしてたからよ」
「...よかったです」
「もし、サイクが倒された事を考えて一緒にグリフもスタンバイしてた」
「......本当によかったです」
「さて、今日の稽古終わりな」
「えっ?剣の稽古は?」
「どれだけ稽古しても一回の実戦は及ばない。今日でわかったろ?」
レイナは無言で頷いた。
「今、お前の体は実戦を経験していい感じだ。ここで稽古してももう意味はない。だから明日から魔物たちと本格的な実戦をする。いいな?」
「は、はい!」
「んじゃ帰りますか。あ、いい忘れたけど帰るまでが稽古だから。じゃあな『転移門』」
シグルドは光に包まれて消えた。
「えっ...、なんでこうなるんですかー!!」
レイナは一人、木の上で叫んだ。




