第二十八話
なんの成果もなしに洞窟を出た二人。
「..すみません、せっかく来たのになんの成果もなくて..」
「気にするな。久々に疲れる戦いかたしてよかった。なんもしなかったら鈍るからな」
「そう言っていただけると幸いです...」
レイナは精神的に疲れていた。
杖がなかったこと、自分が弱いせいでシグルドに迷惑をかけていること、そして、シグルドとの圧倒的な差を見てしまったこと。
「シグルドさん!帰ったら早速お願いしますね!」
「ん?......あー、稽古ね。じゃ今からするか」
突然のシグルドの提案に
「えっ」
と、思わず口にするレイナ。
「ま、初日だから遊び感覚でいいか」
シグルドはレイナの方を向き
「ここから村までの約5kmある。俺が村につくまでに俺を捕まえる。これで行こう」
「...なんの稽古なんですか?」
「身体能力向上だ。安心しろ。俺は魔法を使わない」
「なるほど、それなら...って無理だと思います..」
「なぁに、頑張ればそれでいい、今回は遊びみたいなもんだからな」
シグルドはレイナの頭をポンポンと叩いて前を向いた。
「じゃ、始めるぞ。俺がスタートと言ってから5秒後にお前はスタートしろ。いいな?」
「はい!」
「じゃ、スタート!」
シグルドは走り出した。
「1...2...3...4...5!」
レイナも走り出した。
シグルドはレイナがギリギリ追い付けないスピードで走っている。そしてその右手にはいつ拾ったのか、木の棒が握られていた。
「いい忘れたけど、攻撃OK、武器OKだからなー。俺はハンデでこれだから」
シグルドは走りながらレイナに木の棒を見せた。
「くっ、このスピードじゃ剣なんて..」
レイナは苦痛の表情を浮かべた。
そして、レイナは追い付くことができずに村についてしまった。
「残念、惜しかったな」
シグルドは涼しい顔をしている。
「はぁ、はぁ、全然...惜しくないです...」
レイナはかなり息を切らしていた。
それもそのはず、トップスピードで約5km走ったからだ。
もっとも、シグルドは流していたようだが。
「さて、訓練part2といきますか」
「えっ?まだやるんですか?」
「もち、今アップが終わっただろ?これからは剣を使った稽古」
「お、お願いします!」
「よし、じゃ始めるか」
場所は村の外。シグルドは先ほどの木の棒を持っている。
レイナは、剣を両手でもち、隙の少ない構えをとっている。
「さっきと同じで魔法は使わねぇから」
「わかりました」
「うし、じゃあ、こいよ」
シグルドは左手を前に出し、指をクイクイっと曲げた。
「行きます!」
レイナはシグルドに向かって走り出した。
まず、縦振り、しかしかすりもしない。
次に、横振り、これもかすりもしない。
次に、突き、からの横振り、しかしかすりもしない。
「...まったく当たらない...、どうすればいいの...」
肩で息をするレイナ。
「おいおい、威勢がいいのは最初だけか?違うだろ。もっとこいよ」
「わかってます!」
レイナは再びシグルドに向かって走り出した。
レイナは剣を振るも当たる気配がない。
「レイナ、少しヒントをやる。なにも剣は振るだけじゃない」
(振るだけじゃない、...そういうことですか!)
レイナはシグルドに近づいた。
そしてレイナは剣を思いきり地面にあて、土を飛ばした。
それをシグルドはサイドステップで避けた。
レイナもそれを読んでおり、避ける場所に先回りし、追いうちを狙った。
「まぁ、正解だが、まだ甘い」
シグルドはレイナの剣を木の棒で弾きとばした。
「うし、今日の稽古はここまでな」
「...ありがとうございました...」
レイナは頭を下げた。
(せめて一矢報いたかったな...)




