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夜の星のメンテナー  作者: M
7章 夜明け

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15 May. 14128「うたかた。」

15 May. 28 -4×4砂漠-


 ボクは再び旅を始めることができた。

 今日はカラハーイと気象学者と一緒に、プラスチック砂漠の真ん中にある青い泉を覗いている。この泉の色は青緑に近く、ターコイズのような色。


 泉の底から、ぶくぶくと泡が湧き上がってくる。

 浮袋を膨らませた時の圧縮空気が溢れ出たのだろう。もうすぐ浮上してくる。


 ブクッブクブクッ

 ザバーッ


 潜水服のヘルメットが泉から出てきた。

 ボクと気象学者は命綱を引っ張って、潜水服を引き上げる。


「すごいね!」


 フルフェイスのヘルメットを取って顔を出したのは「僕」。「ボク」の後にメンテナーになった新しい僕だ。

 新しい僕も泉に潜りたいだろうと思って、今回はボクの代わりに潜ってもらった。


「なんて言うか……なんて言ったら良いんだろう」


 僕は一生懸命に良い表現を探すけど、言葉が出てこない。ボクと一緒だ。


「キレイだったでしょ」

「そう。水と光がとってもキレイだったんだ」


 気象学者が「もっと具体的に表現できないかな」と言うが、これがボクたちにできる精一杯の美辞麗句だ。


「前の時もこんなものでしたよ。後で映像を見せてもらいましょう」


 スクーターが呆れたように言う。

 前にボクが泉に潜った時は、バイクに手伝ってもらった。

 そのバイクは気象学者の手に渡り、彼女に合わせたオーダーメイドのパーツでカスタムされ、ルーフ付きのスクーターに生まれ変わった。

 でも、中身は今までと一緒。ボクには辛辣だ。


「それと、これ。泉の底にあったんだ」


 僕はグローブで金属片を掴んでいた。


「ここ見て」


 指差したところに何か文字が刻印されていた。アルカリに侵食されて、ほとんど消えかけている。


「読んでみよう」


 気象学者の高精度センサーでスキャンしてもらう。


「SE……2024、これは型番かな。それから、10869年……製造年だろうか」


 その言葉を聞いて、ボクと僕の左眉が下がる。

 そして、お互いの顔を見て、笑い出してしまった。


「やっぱり、ボクはボクだった」

「僕が考えることはみんな同じだね」


 気象学者もスクーターもカラハーイも、突然笑い出したボクたちを、きょとんとして見ている。


「それは、ボクのまえのメンテナーのかけらなんだ」


 ボクたちと同じ型番。年代からすると、先代のメンテナーの部品だ。

 先代はボクに記憶と仕事を引き継いだ後、こんな所にいたんだ。


 先代もこの泉に潜りたいと思ったんだ。そしてそのまま、泉の底で眠ることに決めた。


 ボクたちと同じ。憧れていたんだ。

 それが、可笑しくて仕方なかった。

 新しい僕も同じことを思ったに違いない。だから笑ったんだ。


「僕にも潜水服を貸してくれてありがとう」

「よかったでしょ」

「とっても。今日は最高の休日だよ」


 みんなで、潜水服についている水滴を拭き取る。強アルカリの青い水は、高濃度のため氷点下でも液体のまま。

 直接液体に触れると、アンドロイドの身体でも侵食されてしまうから、分厚い布で拭く。


「俺も着てみたかったな」


 気象学者が羨ましそうにするが、ヘリコプターの羽根のような頭部は、このヘルメットには入らない。


「このまま貸しててくれると嬉しいんだけど」


 新しい僕が、名残惜しそうにする。


「ダメだよ。じぶんでさがしなよ」

「このレベルの潜水服って、他にどこにもないんだ。この性能とか、まるでオーパーツなんだよ」


 気象学者も不思議がる。


「確かに、何故これがニライカナイのアンティークショップなんかに置いてあったんだか」


 ボクがこの潜水服に出会えたのは運命だったんじゃないかなと思っている。

 偶然に偶然が重なって、奇跡みたいな出会いがあるんだ。

 

 別れ際、新しい僕がボクに約束する。


「緑の泉を見つけたら、連絡するね」

「たのしみにしてる」


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