3 Mar. 14128「哀想歌」
ウナイの葬儀は、花屋に近いホールで行われた。
沢山の花々で飾り付けられた祭壇には、ウナイの写真が掛けられ、その手前に棺が置かれていた。
親族をはじめ、ウナイの通うスクールの友達、お店の常連、ご近所の皆さんが集まり、悲しみを共有する。
コロニー更新工事で取り壊し中だった内側のドームの破片が、先日の地震によって落下した。
偶然、その下に立っていたのがウナイだった。
突然友達を失ったスクールの子供たちは、混乱したように泣きじゃくる。
「信じられない、ウナイちゃんが」
「ホントに? ホントに?」
「うぇっ、グズ……」
大人たちは沈痛な面持ちで、静かに座っていた。
こういう時は、しっかりと泣いた方が良いことを大人は知っているから、子供たちの涙を誰も止めない。
ウナイの棺は小さかった。
「お姉ぢゃーん」
妹が泣いている。それを抱きかかえるように母親も泣いている。
父親はぐいと歯を食いしばり、挨拶をする。
「本日はお忙しい中、ウナイの葬儀にご会葬いただき、ありがとうございます。突然のことで、未だに信じられない気持ちで……」
昨日、急いで月から帰ってきたボクと気象学者は、末席で静かに儀式の様子を見つめる。
カラハーイは、ボクの膝の上で、しゅんとして動かなかった。時折、羽根がしゅらしゅらと揺らめく。スピーカーが無いから声は出せないけれど、きっと泣いているのだろう。
気象学者はこういうのに慣れているみたい。頭部はヘリコプターの羽根だから、どんな表情をしているのか分からないけれど、落ち着いた雰囲気で座っている。
一方で、ボクは感情の処理に時間が掛かっていた。
ボクの手を引いて走るウナイ。
お店の中で大好きな歌を歌うウナイ。
お土産のお菓子を食べて舌鼓を打つウナイ。
カラハーイとお話ができて飛び跳ねるほど喜ぶウナイ。
ボクの記憶の中のウナイは、いつも笑っていた。
涙を流すことはできないけれど、ボクも泣いていたんだと思う。
最期のお別れの時。
普通なら棺の蓋が開けられて、故人に花を手向けるものだが、ウナイの棺は一度も開けられることは無かった。
みんなは祭壇に向かい、何も言わず微笑むウナイの写真に花を捧げる。
「故人の旅立ちです」
司会の厳かな声とともに、ウナイの魂を送るための曲が流れる。
それはウナイが大好きだったアイドルの歌。家族が望んだのだ。
ポップな曲調は、葬儀には似つかわしくないかも知れない。でも、ウナイを見送るには一番相応しい。
妹が目をこすって涙を拭く。そして、掠れた声で歌い始めた。
だんだん声が大きくなる。
ウナイの友達も、泣きながら一緒に歌う。
「哀しい時には歌いたくなるものさ」
そう言って、気象学者も立ち上がり歌い出す。
何人かの大人がそれに続く。
店主やサティを見送った時は、こんなことはしなかった。でも、ウナイは特別なんだ。
ボクもみんなに倣って立ち上がる。
ウナイの両親も、周りの大人も歌い出し、皆で合唱して彼女を送り出した。
歌うことを楽しんで、家族を愛して、優しく踊るように生きて。
そんなウナイの短い生涯が、幕を閉じた。




