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003 どこからどうみても焼いた食パンだっつーの!

 鈴木が巻き添えを喰らって、異世界へ一般モブとして来てから、瞬く間に数日が過ぎた。


(あんなことを言われたが……、未だに信じられないっつーの)



 ◇数日前 巻き添え同盟アジト◇


「いいかい、鈴木君。我々、巻き添え同盟は、異世界転生者達による自意識過剰な転生行為によって、理不尽な巻き添えを喰らってしまった哀れな地球人の集まりなんだ」


「転生行為による理不尽な巻き添えを喰らった? つまり俺もあの飛び出してきた奴のせいで、巻き添えを喰らってしまった……、そういうことですか?!」


 鈴木の問いに、佐藤は黙って頷いた。


「つまり、異世界転生者が俺達の世界にある日常的な物すら持ち込んでいた場合、その名前を口にすると……」


「そうだよ。あの時、検監視の役職を持つ騎士へ君が「自動車です!」なんてドヤ顔で言った瞬間、君の喉元は、検監視の剣で貫かれていたんだ」


 喉元……という言葉を聞いた鈴木は、自分がこの世界へ来てから、飲み物すら飲んでいない事に気づいた。


「佐藤さん、喉が渇いたんですけど……」


「鈴木君、まさか飲み物を買いに行くのではないだろうな?」


「異世界転生者がいるのなら、当然じは――、えっ?」


 自販機と鈴木が発しようとした瞬間、佐藤が眉間に皺を寄せた。


「いいか。この場所では、自販機と言ってもいい。でもこの場所から出たら、何を聞かれても自販機と呼ぶなよ、『――――――――』と必ず呼ぶんだ」


(それがこの世界で生きる術だと言うのかよっつーの!)


 ◇そして現在◇

 ◇リィンカチートア モブコロニの街 市場◇


 市場へ来た鈴木は、この市場に対して抱く違和感を拭えないでいた。


(なにか知らないが、妙な違和感があるのは気のせいだろうかっつーの)


「はいはい、そこのモブさん!」


「はっ? 俺か?」


「そう、あんただよ! 腹が減ってんだろ?」


(そうだ……俺は朝から何も食べていないっつーの)


「その表情はやはりな! なら一般モブの僕が作る『食神様リョウ・リカミ様がもたらしたリィンカ麦から作られた芳ばしい香りのする薄柔らか板』はいかがですか?」


「はっ? それパ――」


「おい、バカ! 検監視がそこにいるだろ!」


 それは不幸中の幸いだった。

 街を巡回していた検監視は、鈴木がうっかり発してしまいそうになった言葉を聞いておらず、そのまま鈴木達から離れたのだ。


「君も大変だな。もちろん僕も大変だよ、鈴木」


「君も……、ということは君も巻き添え同盟員なのか?」


「こらっ、声が大きい! 僕の名前は杉本だよ、カミド市に住んでいたのに、あの客による異世界転生の巻き添えを喰らった結果、この世界に来てしまった哀れな『リィンカ麦から作られた芳ばしい香りのする薄柔らか板』職人さ」



(あの客……でも杉本さんは、つまりパン職人ということだろっつーの!)



「じゃあその……焼かれた『リィンカ麦から作られた芳ばしい香りのする薄柔らか板』を一枚……」


「毎度あり! 120冨だよ、鈴木」


 硬貨を杉本に渡した鈴木は、焼かれた食パンを杉本に渡された。

 しかしこの状況について、鈴木は次の様に考えていた。


(長いし、言いにくいし、しかも喉が普通に渇くっつーの)


 焼かれた食パンを食した鈴木は、杉本にある物の場所を尋ねた。


「杉本君、『七? 福神? 魔王ハルトミリアンが創造せし? 氷と炎の精霊が封印された? からくり仕掛けの剛鉄の? 白き魔石大箱?』は、この近くにありますかね」


「……ふぅ、長いよな……でもその『七福神魔王ハルトミリアンが創造せし、氷と炎の精霊が封印された、からくり仕掛けの剛鉄の白き魔石大箱』なら、そこにあるよ」


 杉本が営むパン屋のある露店市場の至る所には、日本の日常である自動販売機が設置されていた事を、今更ながらに気付いた鈴木であった……。


(自販機を無闇矢鱈に設置して放置すんなっつーの、どうやって補充してるんだっつーの!)


 そんなことを頭で考えながら、鈴木は自動販売機から缶コーヒーを一本購入した。


「ふぅ……うまいっつーの!」


 続く!

【本話における転生者】

 ・自動販売機の転生者の名は、七福神魔王ハルトミリアンで、この時に巻き添え転移を喰らった人は立山(諜報員の為、モブコロニの街にはいない)。

 前世は自動販売機配達員〈福上 遥仁(フクガミ ハルト〉。

 転生理由は、自販機を異世界やパラレルワールド中に設置すれば、会社内の営業成績生涯1位になると本気で考え、同僚の立山が運転する配達車両にわざと突っ込みリィンカチートアに異世界転生。

 東京在住。


 ・食パンの転生者の名は、食神様リョウ・リカミ。

 前世は、巻き添えを喰らう前の杉本が、カミド市で営んでいたベーカリー杉本の常連客〈理上 リョウ〉。

 杉本に弟子入りを志願するも、杉本に断られたため、杉本の目の前でパンをヤケ喰いした。

 その瞬間、限界を迎えた理上が倒れた直後に発動した転生魔法陣によって、杉本が巻き込まれてしまい、文明崩壊後のリィンカチートアに異世界転移してしまう。

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