↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/12

第六章 モンスターカスタマー

 二週間後の新幹線のデッキ。


 浅見は電話を耳に当てていた。相手はヴァルカン社の城山綾乃だった。

「以前の仕様と違う? そんなのは状況で変わるのよ。理解できてる?」

 城山の声の奥に、どこか追い詰められたような震えがあった。

 浅見は短く返事をした。

「いやしかし、仕様が定まらないとプログラムとしては……」

 車窓の外を流れる風景が、ただ灰色に見えた。


◇   ◇   ◇


 出張先のビジネスホテル。

 深夜だろうと関係なく電話が鳴った。

「仕様決めたわ。今から口頭でいうから。間違えちゃダメよ」

 城山の突然の電話に、浅見はあわててメモを取った。


 浅見が大急ぎでキーボードを叩く。

「よし……これでできあがり」

 やっと安心しかけた時、また電話が鳴った。城山からだった。

「さっきの仕様は取り消し。これから別の仕様を言うから。急いでメモして。口頭でいうから」

 城山の声は、いつも追い立てる側でありながら、いつも追い立てられているような雰囲気も感じられた。

 浅見がまたメモをはじめる。


◇   ◇   ◇


 電話を切ると、どっと疲れが押し寄せた。

 浅見はメモを見返した。そこには五種類の仕様が並んでいた。

 どれも「最新」と言われたものだ。

 どれが正しいのか、精査するまで確定しない。

……まるで量子の仕様書だ……。

 浅見はそう思いながら目を凝らして、メモを読み直した。


 浅見が精査の後に、最も確からしい仕様を見出し、キーボードを叩き始めた。

 そして、ほぼ完成したところで、また電話がかかってきた。

「ああ、このプログラムだけど、もういいわ。この機能なしにするから」

 ガチャリと一方的に電話が切れた。

 

 浅見は、ぐったりと椅子に崩れ落ちた。

 しばらく身動きができなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。