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二話『魔族との戦い』

 孤児院を出て、村の広場に向かうと、傷だらけの兵士たちが何人も倒れており、そこに黒い悪魔のような姿をした黒髪の男がいた。


 男はこちらを見るなり、にやりと笑った。


「ようやく来やがったか。見た目はあの女にそっくりだな……」

「あの女って誰?」

「そりゃ決まっているだろうが。お前の母ちゃんさ!」


 魔族の言葉に息が詰まりそうになった。


「母さんを知っているの? 母さんは生きているの? ねえ。答えて!」


 魔族はやれやれと肩をすぼめた。


「何にも分かってないみたいだな。まあ。いいや。いまのうちに殺しとくのが吉ってもんだ! 我々魔族にとってはな!」

「どういうこと?」


 魔族の男はふぅと溜息を吐いたあと、腰の片手剣を抜き放った。


「これ以上は言えねぇな。聞きたきゃ実力で吐かせてみるんだな!」

「望むところだよ!」


 あたしは右手をかざした。


「ユニークスキル【自由自在】発動――ッ! フォルムランス!」


 あたしは槍を作り出すと、魔族の男はひゅうと声を上げた。


「なるほど。それがお前のユニークスキルか。武器を自在に作り出すたぁ。なかなか使い辛そうなスキルだな!」


 わたしは不敵に笑った。


「違う。むしろ使い勝手がいいくらい!」

「ほぉ。器用なんだな!」


 わたしは槍を構えた。


「無駄口はいい。早くやろう!」

「好戦的なガキだぜ! すぐ分からせてやる!」


 先手は魔族が攻めてきた。遅い。あたしにはまるでスローモーションのように見えた。


 相手の連続斬りをひたすら回避して、相手の隙を見極める。


 魔族の男は焦り始めた。


「何故だ!? 本気を出しているのになんで当たらない?」


 わたしは無言で。相手の隙を突いて槍で腹を突き刺した。


「見えな……ぐはぁ!?」


 これではっきり分かった。この魔族は下っ端だ。最強種である魔族があたし如き村娘に、こんな簡単にやられるわけがない。


 魔族は激怒した。


「クソ抜けろ! 抜けろや! クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 この状態なら少しは母さんのことが聞けるかもしれない。


 そう判断したあたしは、槍を指す強度を丁度いい具合に弱めた。


「さあ。母さんのこと話して?」


 魔族の男は嫌らしく嗤い、舌を出した。


「ばぁぁぁか。お前みたいな小娘にあの女の情報を教えるわきゃねぇだろうが! いますぐぶっ殺してやるぜ!」


 どうやらまだ諦めていないらしい。魔族は魔力を全力で解放した。


「この身諸共お前をぶっ殺す。闇魔法【ブラッディ・バーン】!」


 魔族の男が魔法を放つと共に、あたしは武器の生成を解除して、無詠唱で【プロテクション】の魔法で爆発を防いだ。


 周囲の兵士たちはヒリアが上手く回復しているようで無事だ。


 魔族の男は黒焦げになりながらも、姿が大幅に筋骨龍柱となり、まるで野獣のような姿になっていた。


「この姿を見た奴で今まで生きていた奴はいねぇ。今度こそぶっ殺してやるぞ。メスガキ!」


 あたしももう容赦する必要がないと分かり、魔力を少し解放した。


「御託は良い。村のみんなを傷つけたお前は許さない。覚悟してよね!」


 魔族の男は愉快そうに嗤った。


「そうか。村人が大事か。ならまずはそこでこそこそ回復している小娘からぶっ殺してやるぜ!」


 魔族の男が物凄い勢いでヒリアの背後に斬りかかろうとした瞬間、あたしは自分の魔力のギアを一段階上げた。


 すぐに男の前に立ち塞がり、今度は間違いなく心臓を槍で貫いた。


「この娘に手を出したら。ただじゃおかないから!」

「え、え!? リベル!?」


 どうやらヒリアは襲われていることにすら気が付かなかったらしい。


 そんな子を襲うなんてやっぱり許せない。


 あたしは槍に炎の魔力を全力で注ぎこんだ。


 メラメラと燃え盛る炎に焼かれて、魔族の男は狂ったように嗤った。


「ぎゃは。ぎゃはははははははは。やべぇ。こいつはやべぇぜ! やっぱりあの女の娘。こいつは規格外だ。そりゃ俺じゃ勝てるわきゃねぇってこったな。ぎゃははははははははははは!」


 あたしはもう一度男に呼びかけた。


「母さんの情報を教えて。母さんは何処にいるの?」


 男は焼かれながら、ふざけたことをほざいた。


「いいか。よく聞けよ。メスガキ。お前が生きている限り世界中の魔族がお前の命を狙いに来る。だってお前は我らが魔族の敵であるあの女の娘なんだからな。我々は絶対にお前ら親子をぶっ殺して、この世界を魔族主体の世界に染め上げてやるぜ。ぎゃははははははははははははははははは。ぐはぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 炎が臨界点まで達して、男は灰になって消え去った。


 戦いが終わると村人たちは歓声をあげた。


「や、やったぞ。リベルの奴が魔族からこの村を救いやがった!」

「こりゃめでたい。この村の新たな英雄の誕生じゃわい!」


 なんだかとんでもない騒ぎになってきたと思ったら背中に安心する感触に包まれた。


「流石リベルです。ほんっとうに凄いです。やっぱりリベルは最強ですね!」

「別にあたしなんて大したことないってば……」


 しかし、ヒリアのテンションは収まらなかった。


「本当に凄いですよ。あとわたしの命とこの村の人たちの命を救ってくださりありがとうございました!」

「そんな大袈裟な……」


 村人たちは更に騒ぎ立てた。


「今日は宴会を開くぞ。村の英雄に対して乾杯じゃ!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 なんだか妙にテンションの高いことになってきて、ちょっとうんざりしてくる。


 それに魔族の言葉で、胸にひとつのことが引っかかっていた。


 魔族はあたしを狙っている。


 つまり、この村にあたしがいたら村が狙われる。


 だから、この村を出よう。


 そして、母さんを探して一体何者で、何故あたしを捨てたのか確かめよう。


 あたしは秘密裏にそう決断した。

 次の更新は明日か明後日です。よろしくお願いします。

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