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一話『魔族襲撃』

 新作です。


「そこ!」

「きゃあ!」


 あたしの放った一閃により、ヒリアの木剣が吹っ飛んだ。


 青いツインテールの髪が靡き、ぐったりとその場にへたり込んだ。


 負けたことがよほどショックだったみたいで、ヒリアは分かりやすいほど落ち込んだ。


「はぁ……。またリベルに負けちゃいました。何十年も一緒に剣の稽古をしているのに、なんで勝てないんでしょう……」


 あたしはヒリアに近寄り、ポンと肩に手を置いた。


「……大丈夫だよ。毎日ちょっとずつだけど強くなっているよ。ヒリアは才能あると思うから頑張ればきっと強くなれるよ」

「でもリベルの方が才能ありますよね? 正直嫌味にしか聞こえません!」

「ご、ごめん……」


 またいつも通り拗ねちゃったよ。我ながら面倒臭い幼馴染を持った物だなと思う。そんな時、孤児院の庭にいたあたしらに院長先生が声をかけてきた。


「ふたりとも。ご飯ができましたよ。手を洗ってらっしゃい!」

「「はぁぁぁい!」」


 あたしたちは裏手にある井戸から組んだ桶から、水を柄杓ですくって手を洗い流した。


「冷たくて気持ちいい……」

「ですね……」


 ふたりして朝の冷たい水が夏の暑さを冷やしてくれて、これ以上ない至福の時を迎えていた。


 桶に映るあたしの髪は桃色だ。珍しい髪色だと言われるが、自分でもなんでもこんな色の髪をしているのかよく分かっていない。


 当然ながら地毛だ。


 その時ふとヒリアと手が触れあった。


「ご、ごめん……」

「いいえ。お気になさらずに……」


 なんとも言えない気恥ずかしい空気が流れる。あたしはすぐに気を取り直した。


「さぁ。孤児院に戻ろっか? 院長先生に説教される前に」

「そうですね。急いで戻りましょう」


 あたしたちは大急ぎで孤児院の中に戻ると、もう朝食の支度はできているようだった。


 今日のメニューは黒パンとスープとサラダだ。いたっていつも通りの質素な食事だ。


 でも院長先生の使っているスパイスが利いていて、すごく美味しいんだよね。


 みんなが席に座り、準備が整ったところで、院長先生が手を合わせた。


 それに習ってあたしたちも手を合わせる。そして、一同一斉に――。


「「「いただきます」」」


 あたしはさっそく黒パンから口に放り込んだ。ちょっと酸っぱくて固い味わいがなんとも言えないくらい美味い。


 続いてスープにも手を伸ばし、スプーンですくって口に運んだ。


「美味しい……」


 思わず口に出てしまった。食べ慣れた味だけど、やっぱり家の孤児院のスープは質素だけど、絶品だ。


 続いてサラダもフォークで食べてみる。特性のドレッシングの酸っぱさが利いていて、とてもしゃきしゃきして食が進む。


 そんなこんな食べる手が止まらずに、あっという間に食事を終えてしまった。


 あたしはお腹いっぱいだが、隣にいるヒリアは遠慮なく手を上げた。


「おかわり、お願いします」


 院長先生はくすくす笑いながら、ヒリアの皿を受け取った。


「はいはい。育ち盛りなんだから、今日もいっぱい食べなさいね」

「はい!」


 ヒリアはとても嬉しそうに喜んでいた。分かりやすいほど彼女は大食いだ。


 あたしの三から四倍くらいはいつも食べる。


 孤児院にはあたしとヒリアしかいないので、運営的にはそこまで困ってないらしい。


 何でも先輩の冒険者がウチの孤児院に支援してくれているから、あたしたちはなんとか生きていけているのだ。


 その先輩たちももう五年も会っていない。みんなどうしているのかな。


 それにしても、ヒリアはよく食べる。あと妙に今日の外は静かだ。小鳥たちのさえずりがあまり聞こえない。


 そんな時、バタンと孤児院の扉が開かれた。


「院長。大変だ。魔族だ! 魔族が村に襲撃してきたぞ!」

「なんですって!?」


 魔族の襲撃。そのワードを聞いた瞬間、思考が冷静に研ぎ澄まされる。いまいる村の兵士では魔族には絶対に勝てない。


 勝てるとしたら、ユニークスキルを持つあたしくらいだ。


 わたしは急いで扉のおっちゃんに声をかけた。


「どいて。あたしがやっつけてくる」


 おっちゃんはあたしが予測した通りの反応をした。


「無理だ。子供のお前に何ができるってんだ!」


 そう言った瞬間に、あたしは魔力をちょっとだけ解放して、おっちゃんを睨んだ。


「この魔力量でも負けると思う?」

「だが、しかし……」


 迷っているおっちゃんをあたしは手で振り払った。


「……どいて。被害が出てからじゃ遅いんだよ!」

「お、おい!」


 その時、あたしの手をヒリアが掴んだ。


「わたしも行きます」


 駄々を捏ねるヒリアにあたしは言い聞かせた。


「いまのヒリアが来たって魔族に勝てっこない。正直、あたしひとりの方が効率的に戦える……」


 それでもヒリアはわたしの手を離さなかった。


「絶対にわたしも行きます。足で纏いにはなりませんから……。傷ならわたしが癒します」


 ここであたしは冷静に分析する。魔族との戦いで自分が負傷しないとも限らない。そうなるとヒーラーであるヒリアがいた方がかえって有利に立ち回れる可能性もある。


 そこまで考えが至った時、あたしはヒリアの手を握った。


「わかった。連れていく。でも絶対にあたしの後ろに隠れていてね?」

「はい。承知しました」


 あたしは孤児院の外に出ようとしたら、院長先生に止められた。


「止めなさい。リベル。ヒリア。あなたたちはただの女の子なのよ。多少強くたって最強種である魔族に勝てるわけないわ!」


 そこであたしははっきりと言い捨てた。


「ではみんなで逃げ出すの? あたしの分析では人間の魂を捕食する魔族が、そう簡単に村人を生き残らせてくれると思わないけど?」


 あたしの正論に、院長はそれでも食い下がらなかった。


「それでもいま行けば。すぐに殺されちゃうわよ。それなら一分でも生き残る方が良いに決まっているじゃないの!」


 あたしは首を振った。


「残念だけど。このまま逃げたらこの村は終わる。誰かが戦わなきゃ。人が死ぬ。こうしている間にも何人か被害者が出ているかもしれない……」


 院長はそれでもあたしを止めようとした。


「でもリベルが戦うことないじゃない。村の兵士さんたちに任せておけばなんとかなるわ!」


 あたしはもう一度首を振った。


「村の兵士では魔族に勝てない。勝てるとしたらユニークスキルを持ち、幼い頃から魔力だけは先輩たち以上だったあたしだけだよ」


 あたしはもう一度ボウッと魔力を放出した。今度はさっきよりも強めだ。


 それを見た院長はため息を吐いた。


「分かった。もう止めないわ。でも絶対に死んだら駄目よ? 無理だと思ったら逃げなさい? いいわね?」


 あたしも今度は頷いた。


「わかった。勝てない相手に立ち向かうほど馬鹿じゃない。だから安心していてよ」


 あたしがサムズアップすると、院長も苦笑いして頷いた。


 そして、そのままヒリアの手を握った。


「さあ。行くよ。ヒリア」

「はい。リベル」


 いきなりの魔族との戦い。あたしは自分がどのくらい魔族に通用するのか、今から少し楽しみだった。

 いかがでしたか? 見切り発車のため更新は不定期です。なんとか続けられるところまでマイペースに投稿を続けていくので、長くお付き合いくださると助かります。


 次回もなるべく早く更新します。早くて明日。遅くても明後日には投稿するので、よろしくお願いします。

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