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人生屋  作者: 城戸 慎太郎
ガーベラ
20/21

2-4 格上

本日更新になります。

遅くなった分ちょっとだけ今回は長いです。


8月5日 a.m. ■■:■■

 部屋に響いていた溶接音と電子音が止まり、静寂の中に彼は佇みそれを見ていた。

 淡い橙色が全身の基礎カラーの機体は、周りにある量産型よりも小ぶりで細身だ。

 奇しくも、そのコンセプトはある機体と同じであり、基礎設計図にも類似する部分が多い。

 しかし、この2機には圧倒的な差があった。



「おらららららららららららあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 コクピット内で咆哮しながらミニガンの砲身を回転させる。連続して放たれる魔力エネルギー弾を、真紅の機体は最小の動きで避けている。

 その動きが全くもって本気でないこと、また、此方を意図的に挑発してきていることは攻撃しており、挑発されている本人故によく分かる。


(最悪の想定通りだなクソッたれ!!こっちの手札を使い切るのにそう時間はかからないだろうな……ッ)


 今のでミュトラが使用した攻撃手段―――ここで言う手段とは撃つタイミングと射角、威力の調整によるバリエーション―――は20通り目。既に4分の1を切っている。1つの手段で約5分が稼げるとしても、残り5時間しか保てない。それでは殿の意味を果たせているとはお世辞にも言えないだろう。


(―――切り札の切り方を、考えるべきだな)


 チラリと傍らにある3番目の操縦桿へ視線を向ける。

 この機体の基礎設計者マイアス・マキ・マライトも知らない、彼が自ら作り装着したオリジナルの最終起動機構。

 これを使うにはかなりの覚悟が必要であるため、今までの、特に前回の自分が負傷するような戦闘でさえ切ったことはない。

 それを切ることを視野に入れる必要性が高いと、判断させるほどの実力差がある。


「だが!切り札はあくまで切り札!最後の最後まで諦めなかった者が使うことを許されたモノだ!!」


 操縦桿を前へ倒し機体を急接近させ右腕を振るう。

 2丁のミニガンを装備した腕は、重力の無い宇宙空間であっても重量によって普通の機体よりも稼働速度が減衰してしまう。

 そんな鈍重な攻撃が小さく俊敏な機体にあたるはずもなく、一瞬で避けられ一撃が人間で言う左腹部へと入る。しかしそれは左腕を少し動かすことで防ぐことが出来た。足裏の噴射口からエネルギーを全力噴射し同時に腰の左右に備えられたレーザーキャノンからレーザーを放ちながら距離を取る。

 敵も宙返りのような跳躍によって後退した。


「何故―――」

(―――追撃してこないんだ?)


 防御力が高いが動きの鈍いこちらの攻撃を躱し、お得意の連続攻撃へ簡単に持ち込めるはずなのに何故……?


「何かを待っているのか、狙っているのか……」


 待っているとすれば何だろうか?敵の迂回チームが第一戦艦裏へ移動しきることか?

 狙っているとすれば何だろうか?こちらの隊長格が出てくるか、もしくはあちら側の増援が来るのをか?

 どちらも否だろう。

 こちらは色々な場所に小型監視艦船を送っている。迂回するチームがいれば、すぐに報告が来るはずだ。

 増援が無いと思うのは、これが正式な決闘であるから。

 助太刀はご法度と決めたのはあちら側なのだから、自分たちから破ることはないだろう。

 

「だーもうっ、考えてもこれっぽっちも分かるかよ!」


 左腕を頭上へと伸ばし一振りしながら連射を再開する。

 弾速はやや遅めで的外れの場所にばら撒かれた魔力弾に、一瞬だけ敵の視線と注意が向く。

 その一瞬を逃すことはしないのがプロという者だ。


「グラストジャベリン!!」


 肩部分のレーザー砲2つの砲門から、予め用意されていた鏃型の光線が放たれる。

 マスタング11が出せる最速の弾丸。エネルギーの凝縮と形成に20分を要する為、この相手には5度使えるかどうかの代物。

 

「当たれっ!!」


 つい声に出して叫んでしまう。

 敵に悟られる恐れもあるが、発射された後だったので問題ないだろう。

 頭部、胸部、右足を狙った光弾は、だが紙一重のところで順に躱されてしまう。最後の一発を躱した瞬間、その敵機の背に連続して爆発が起こる。

 敵機から息を呑んだような気配が感じられた。


「っし!」


 コクピット内でガッツポーズをする。

 連続して発生した爆発。それはあの鏃型の光弾発射前に頭上へ撃った一見無断なように見えた弾。

 あの弾の正体は誘導魔法と隠蔽魔法を複合した光弾。

 鏃型高速光弾に気を取られた刹那にその姿を隠し、かの機体の背後へと回り込んでいたのだ。

 さすがに気づかなかったようで、見事目論見は的中したのだが……。


「……ははは、嘘だろ」


 魔力弾との衝突によって発生した白煙の中で何事も無かったかのようにそのシルエットは佇んでいる。

 何事も無かったかのような、何のダメージも受けていなかった。

 いや、傷自体はついている。此処からでも背中に焦げた部分や亀裂の入った部分が見受けられる。

 しかしその傷は、自ら装甲が伸びてきて塞ぎ始めている。焦げ跡だって、今はもう見る影もなく曇りもない新品のような光沢を放っている。


「肉体治療魔術を機械に応用している……?まさか、自己回復術式を完成させたとでもいうのかッ」


 医療の分野において、肉体に付いた傷を治療する魔術はどちらの惑星にも存在する。

 だが、基礎の知識は同じでも発展の仕方と速度には二惑星間で大きな違いが存在する。

 マトラクス側の治療魔術は人間を対象としたモノを重点的に発展させてきた。対してガンリアン側の治療魔術は人間だけにとどまらず、無機物への使用を可能とするマルチタイプへと発展していった。

 理由は、互いに与えられたもう一つの基礎知識が違ったから。

 マトラクスは魔術に関する知識よりも魔法機械学の知識への偏りが大きい。なので無機物に治療を施す、つまり機体をわざわざ魔術で修復せずとも人の技術で間に合っていたのである。

 このことは何方も知りえないことである。

 しかし今この戦場では、有利不利が激転する差であることは間違いない。


(速度は落としても威力は普通の光弾と全く同じものだった。それであの程度の傷しか与えられず、尚且つあの速度で修復されるとなれば……グラストジャベリンでも致命傷となるような傷は与えられないってことじゃないか)


 深紅の機体は白煙の中から未だに動こうとしない。

 どうやらこちらの攻撃を待っているらしい。


「相変わらず舐めてくれてよお……」


 致命傷を与えるなら、舐めてくれている今しかない。

 しかし手だてが一つしかないうえ、出してしまえば自分は確実に死ぬだろう。

 この状況下で出すことが最善であるかどうか。ミュトラには図りかねていた。

 その時、またメールの通知を知らせる、ポン、という音が耳に届く。


「この緊張状態に誰だよ――――――ッ!?」


 愚痴をこぼし舌打ちまでしながら、敵機への注意をしながらという器用な方法で、メールを開いた。

 差出人の欄に入っていた名前を見た刹那、息を呑む。


「―――アーカリアル・インベック」


 そう。今まさに目の前で敵対している筈の相手からのメールであったのだ。

 決闘中のメールはあまりよろしくない行為だが、このタイミングで送られてきたからには、何かしらの意味があってのものだろうと考え、視線を本文の方へと移した。


『お前では勝てない。退け。今なら見逃してやる』


心臓がドキリと大きく鼓動する。耳の横に心臓があるのではないかと錯覚してしまうほどの大きな鼓動。それはその文面を差し出した相手から、不可視の手によって心臓を掴れたような寒気を感じたからか。もしくは、一人のプロパイロットとして敵に情けを掛けられたという屈辱を受け入れたいと考えた自分を嫌悪してか。

本人さへ何故起こったのかわからない動機に、一瞬目の前の敵から注意がそれる。


「なっ――――」


 その一瞬の隙を目敏く悟った深紅の機体が、目にも止まらぬ速度で残像だけを残しマスタング11の脇を通り過ぎていく。

 

「くそっ、こっちの注意を逸らすためのダミーだったのかよ!?」


 急ぎ旋回しそのあとを追う。既に後方では爆発が見え、通信機からは短くだが絶え間なく悲鳴が聞こえてくる。

 ぎゅっと目を瞑りたくなるその惨状に、勇気を振り絞り飛び込む。

 敵の機体が仲間の一機を籠手で貫いた時、一瞬だけ動きが停止した。

 

「やめろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 その背に向けて両腕を振り下ろす。右側へスライドするように回避した深紅の機体は、反撃せずにまたその場で停止した。

 腹部を貫かれた機体を近くで無事だった他のパイロットに任せ、その期待に改めて対峙する。


「一つだけ聞かせてくれ。さっきの手紙の通り俺が逃げたら、お前はその次、何をする?」


 拡声器を使った問いへの答えは、やはりメールであった。


『簡単なことだ。そこにいる全ての雑兵を倒す。そして私の求める好敵手が出てくるまで、貴様らの戦艦を破壊し尽くす』


 愕然とする答えだった。

 このパイロットとこの機体であれば、容易に可能な最悪の未来。

 改めて口に出しはっきりと告げられたことで、ミュトラの中で引っかかって決心を妨げていた何かが取れる。

 それは自分の命を守るための生物が持つ本来のリミッターだったのかもしれない。

 リミッターが外れた先に顔を出した感情は決心などではなかったが、この場では、この手札を切るには必要な精神―――自己犠牲の精神が彼の内に芽生え開花した。


「ならば、ここを通すわけにはいかない」


『お前は弱い。貴様では私を止められない』


「わかっていますよそんなことは。とっくの昔に」


『ならば何故立ちふさがる?』


「決まっている」


 チラリと横目で背後の戦艦と、そこへ退避していく一般兵たちの姿。そして見えない家族を見る。


「―――守りたい家族がいるからだ」


 そう言い切った瞬間、ミュトラは傍らの第三操縦桿を前にスライドさせた。

 刹那、機体に迸る雷光。全体を循環していた魔力の流れが高速化され、外装で見えている黒いラインが発光する。その光は徐々に強くなっていき、赤い装甲の中でも浮かんで見えるほどの光となった。


『なんだ、その禍々しい機体は?』


 相手の送ってきたメールの文面が少しの畏怖を含んでいることに、ミュトラはほくそ笑んだ。


「これは俺が自分で作った最終兵装“限界破壊(リミットデストロイ)”」


 限界突破(・・)ではなく破壊(・・)と命名しているのは


「この最終兵装機構の効果は単純だ。無限に発生し循環する魔力エネルギーの変換率の上限を100%にすること!全てを出し尽くしたとき、この機体は昇華するがな!!」


 一般的な量産型の変換効率は約20%に抑えられている。

 それにはちゃんと理由がある。

 いくら無限のエネルギーを生成することが可能な魔鉱石といえども、持続的に変換できる魔力量には上限が存在する。上限を超えた魔力を消費しようと、魔鉱石の魔力は焼失しないが、長い時間インターバルが必要になってしまう。

 それ以前に、100%の魔力が循環することに内部の機関が耐えられるはずもない。ショートするかオーバーヒートするか。悪くすればそのまま大破する可能性さえある。

 だからマドリューM21には限界を突破するような機能はない。

 ミュトラが偶然見つけ、偶然いじることの出来る技術力を有しており、偶然資源があったから付けてしまった、彼だけの切り札。


「さあ、行くぞ」


 両腕を持ち上げ銃口を向ける。

 

「構えろよ。ここからの俺達は―――今までの俺たちを超える」


 瞬間「ギュイイイイイイイイ」という高速回転音が鳴りだしたかと思った次の瞬間、深紅の機体は両手を前に突き出していた。

 そこに飛来する無数の巨大な光弾。

 一弾一弾が全て、その機体の半分以上の大きさを持ったまさに必殺の弾丸。それが絶え間なく飛来すれば、自己修復魔術を付与しているからといってそのまま受けるわけにもいかなくなるのは必然。

 どうやら障壁魔法を展開しているようだが―――無駄だ。

 次第に後方へと押され始めた深紅の機体が展開する障壁に小さな亀裂が入る。

 その部分を狙い両肩に装備されているレーザー砲が動く。

 ただの魔力弾で必殺の一撃となっているのだから、レーザー砲はそのさらに上の威力となっているのが当然である。

 ミュトラが操縦桿の発射ボタンを押して二秒のタイムラグがあったのち


 ヒュ―――ギュユゥゥゥゥゥゥ!


 視界を白く染めてしまうほどの高威力レーザー砲が放たれた。

 言うなれば―――撃滅の一撃。

 必殺をも超えた一撃は、果たして……


「照準、再合成」


 討ち取るには至らなかった。

 しかし成果がなかったわけではない。

 深紅の機体の両足にあった脛当てのような部品が融解し、左足の下半分に関しては消し飛んでいた。

 

(―――いける!)


 ミュトラはモニターに映し出されている機体全体の状態を確認する。

 発動して1分10秒という短い間に、内臓部分にあたる機関の幾つかがエラーを起こし始めていた。

 

(残り、120秒)


 照準はすでに合わせてある。

 今度はミニガンからではなく、四門あるレーザー砲の交互撃ちから行った。

 右肩、左腰、右腰、左肩と順番に砲撃していく。

 マスタング11には照準した相手を射線に捉えるよう自動で動く追尾システムが備わっている。

 ミュトラは地質、ボタンを押すだけでいい。

 

(くそっ、当たらなくなってきた……)


 するりと回転するようにしてまた避けられたのを見て、舌打ちする。

一度自分に手傷を負わせた攻撃を警戒しないわけがない。

 腕の立つパイロットであればあるほど、一度受けた攻撃への対処能力は高い。初見の攻撃だろうと、二発目からは一切受けない。

 アーカリアル・インベックは、そんな腕の立つパイロットの一人であることは今更疑いようがない。

 

(ミニガンに付与してある隠蔽と誘導魔術は残り10発。だがさっきの攻撃で確実に警戒されているだろうな……。それでも、誘導ぐらいにはなるはず)


 レーザー砲で攻撃しながら頭上で片腕を振り10発の光弾を放つ。

 ピクリと反応するが、レーザーが当たることはなかった。

 隠蔽の効果が発動した瞬間、一度大きく跳躍した深紅の機体は、正面へ向けて正拳突きを放つ。

 無意味な動作に思えたその行動に首を傾げながらも、隙だらけの敵へ向けて二門同時に放つ――――が


「はあ!?」


 目の前でありえない事態が起きた。

 横並びに連続して発生する爆発。途切れてキノコの傘状に分散するレーザー。

 連続して起きた爆発はまず間違いなく隠蔽し背後へ向かっていた光弾だ。それが何かに衝突したかのように爆発し、消された。


「まさか設置型の障壁魔法か……?いやしかし、それではあの行動に理由がつかない」


 現在の魔法の体系は呪文+指向補助により構成される。

 呪文は魔力の形をどう変質させるのか指示するもので、指向補助はどこにそれを展開、もしくは発生させるのかを指示するもの。

 先ほど深紅の機体が作った障壁魔法を例に例えると、呪文は聞こえなかったが、両腕を前に突き出すことで「自身の正面に展開する」ということを指向したことになる。

 しかし今回の場合、指向があの正拳突きにより示されたのは百歩譲ってわかる。だが、呪文が聞こえなかったのに発動したことには疑問を呈せざるをえない。

 設置型魔法の場合、設置した部分の魔力を使用し展開する。その為には、その場所に行き魔力へ語り掛けるか、もしくはその場所に届くような大声で呪文を唱えなければならない。

 故にこれは設置型の障壁魔法ではない。だとすれば……


「まさか、自機の魔力だけを放ったというのか……?」


 魔力を変質せず、それでいて自身の乗る機体の魔力に指向性だけを与え目の前に壁のように広げた。そう考えれば、物質に遮られないレーザーが分散したのにも納得がいく。

 ―――などと思考を巡らせ起こったことを理解し終わった刹那、深紅の機体が前傾姿勢をとった。

 接近戦に持ち込んでくる気配。

 体感で図っていたリミットの時間まで残り20秒を切っている。


「……ッ、最終砲門を展開。全力稼働!」


 宣言した瞬間、パネルを操作し胸部装甲をオープンにする。

 中から現れたのは、一球の水晶。マスタング11の全ての武装に魔力を供給している、いわば攻撃面での心臓部をさらけ出した理由はただ一つ。

 

「純粋な魔力の威力を思い知れ!」


 高速循環していた魔力が中心部へ一気に集まり凝縮される。

 アーカリアル・インベックもそれには気づいている筈だが、前傾姿勢のまま微動だにしない。

 エネルギーの凝縮が完了した刹那


「喰らえエエエエエエエエエエエエ―――――――!!」


 全力を尽くした死に際の機械の放つ、最後の足掻きにして最強の光が―――



「―――グラフ・シュープリズム」

 


 放たれることは、なかった。

 

 理由を、ミュトラは理解していた。―――いや、見ていた。

 一瞬にして彼我の距離をゼロにした深紅の機体は振りかぶることもなく右手で水晶に触れ、呪文を唱えた。

 呪文の種類が同じであるため、彼にもそれがどんな魔法かすぐに分かった。

 グラフ・シュープリズム―――氷属性封印魔法。

 触れた対象の活動を急速冷凍するように減衰させ完全に停止させる魔法。

 コアの魔力は完全に霧散してしまい、全身を駆け巡っていたはずの魔力も循環を止めてしまっている。

 完全な傀儡となり果てたマスタング11が何故立っていられるかというと、それはアーカリアル・インベックがマスタング11の首を掴みあげているからだ。

 コクピットの中かで呆然としたまま、目の前の画面に映る敵機の顔を凝視していると、またポンという音が響いた。


『侮っていたこと、謝罪する。貴様は立派な脅威だ』


 最初にこう書かれていた時点で、ミュトラの決心はついていた。


『故に、ミュトラ・マキ・マダムスキー(・・・・・・・・・・・・・・)。貴様を滅する』


 二惑星間最速と言われ最強の一角と目されている相手に認められた。

 それだけで、ミュトラの心中に悔いはなくなった。

 あれだけ怖かった死が、今はこんなに清々しい気持ちで迎えられるなんて、思いもよらなかった。

 左下方より強い魔力の収束を感知した、と機械が知らせてくるが、もう気にしない。

 それを喰らうことで、自分にとって最高の終わりを迎えられると気づいたから。

 アラームを消し、双眸を閉じる。


「……ありがとう。最速のパイロット。あなたと闘えてよかった」


 収束された魔力が向かってくる。

 後3……2……い――――


「―――やらせない」


 ハッと我に返り目を見開く。その瞬間、モニターに映っていた敵機の顔に拳が入る。

 回転しながら吹き飛ばされた深紅の機体だったが、すぐに噴射口からエネルギーを噴射することで体勢を立て直した。

 マスタング11を救ったその機体は――――見たことのない機体だった。

 淡い橙色を基調とした流麗な機体。頭頂部にある後ろに流れるように伸びた部分と男性的な顔が特徴的なそれは、マトラクス側の機体とは思えないその小ささと軽装備に、今まで戦っていた深紅の機体を彷彿させるようだ。


「お前は……」

「お待たせ―――兄さん」


 拡声器から響いたその声に、また目を見開く。

 何度も聞いた。もう頭にこびり付き、消そうとしても―――そんなこと一度もしたことないが――消えない、声。

 その者は


「マグリス!?」


 ――――最愛の家族にして弟であった。


限界破壊リミットデストロイ

 マスタング11のみに搭載されたエネルギー循環率をオーバーランさせる機能。量産型のマドリューM21を改造しただけのマスタング11には各隊長機のような特殊な特殊な魔術刻印武装が無い代わりに連射性と反動に耐えられるようにフィジカルが強化されている。しかしそれだけでは足りないと考えたミュトラが勝手に分解して解析した結果、初代開発者が歴代の開発主任達にしか伝えられていない変換制御装置の限界上限設定装置を発見し改造して生まれた超機構。


・アーカリアル・インベック

 年齢58歳 身長:159㎝ 性別:男性

 ガンダッタ旅団の第四船団艦長にして最強エースパイロット。最速と言わしめたその加速度はまさしく天を流れる流星のようと称されることも多く、2つ名は【ミーティア】。マキュリーとは死闘を繰り広げた戦友として何度か密かに酒を酌み交わしたこともある。



次回は少し遅くなりますが、しばしお待ちください。



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