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第7話 恩師へ……・4

 みなもはコンパクトとチャームを拾い上げると、叫んだ。


「ドレスアップ!」


 そしてコンパクトを開き、そこにチャームを差し込む。青い光がほとばしり、みなもの身体に魔法少女サファイアマーメイドドレスのコスチュームが装着されていく。ポニーテールが解かれ、青く長い髪へと変わった。

 そして腰のポシェットに、コンパクトが収まる。


「響け、碧海のメロディ! 魔法少女サファイア!」


 みなもは名乗る。

 それからみなもは右手にマイクセイバー、セイバーモードを召喚した。尾びれをかくと、イソギンチャク深海獣に向かっていく。

 イソギンチャク深海獣は両腕を交差させて、みなもの攻撃から身を守るが、みなもは刃でイソギンチャク深海獣の身体を押し返した。さらに尾びれをイソギンチャク深海獣の身体に叩きつける。

 イソギンチャク深海獣は地面を転がった。


「どうして……」


 とみなもは顔も知らない相手に問いかける。


「どうして町を沈めようとするの! この町があなたに何かをしたっていうの!?」


 歌の力で相手を浄化するためには、まず、相手の心の壁を取り払わないといけない。以前のように、救えそうで救えなかったということにはしたくない。今度こそ……。

 しかしイソギンチャク深海獣は何も答えなかった。ただ、触手を伸ばしてみなもを攻撃してくる。

 みなもは水中を左右に泳ぎ、深海獣の触手攻撃をかわす。

 イソギンチャク深海獣が水底を蹴って、みなもにむかって突撃してきた。みなもはマイクセイバーを振るって身を守ろうとするが、そんなみなもの剣を、イソギンチャク深海獣は振り払った。マイクセイバーがみなもの手を離れ、水底に突き刺さる。


「しまった……!」


 さらにイソギンチャク深海獣はその肩でみなもの身体に体当たりをしてきた。

 みなもは水底に、思いきり背中をぶつける。さらにみなも目掛けて、イソギンチャク深海獣の拳が襲いかかる。みなもは水底を転がってイソギンチャク深海獣の攻撃を避けた。

 そして近くの水底に刺さっていたマイクセイバーに向けて手を伸ばす。

 だが、みなもがマイクセイバーのグリップを掴むよりも先に、イソギンチャク深海獣がマイクセイバーを引き抜いた。

 そしてマイクセイバーの刃をみなもの身体に叩き込む。


「うあぁっっ!」


 みなもの身体は回転し、そしてふたたび水底に叩きつけられた。


「そんなもんか」


 イソギンチャク深海獣は言った。


「そんなものか! そんなもので人が救えるのか、星乃みなも!」

「どうして……私の名前を……」


 みなもは両手を使って体を起こす。そしてポシェットからコンパクトを取り出し、その蓋を二回叩いた。尾びれが光の粒子となって弾け、人間の脚が出現する。魔法少女サファイアアクアドレスだ。


「こんなもんじゃ……」


 みなもはゆっくりと立ち上がる。


「こんなもんじゃ終われない! 私は……人を助ける! この町の人たちを! それだけじゃない……深海獣になってしまった人たちも!」


 そしてみなもは水底を蹴って走り出すと、イソギンチャク深海獣に組み付いた。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


 みなもはイソギンチャク深海獣の身体を押し返す。


「それでこそ……だ」


 イソギンチャク深海獣は満足気に言った。


「それでこそこの町を守る魔法少女だ!」


 そしてマイクセイバーを放す。


「え……」


 マイクセイバーを受け止めながらも戸惑うみなもに、イソギンチャク深海獣は言った。


「その剣を使って、俺の首をはねろ。それこそが……みなもが俺を救う道になるはずだ」

「そんなこと……」

「いいから……はねろ!」

「できない!」

「魔法少女なんだろう! この町を守るんだろう! だったら……!」

「私には……そんなこと……」

「ならば俺がやる。俺が俺自身で決着をつけてやる。俺はお前の心に負けた。だから死ぬべきなんだ」


 そしてみなもの持つマイクセイバーに手を伸ばした。しかしみなもは咄嗟にマイクセイバーで突きの攻撃を放ち、イソギンチャク深海獣を引き離す。


「させない! 誰だって……死んでいい人なんてこの世にはいないから!」

「甘い……な」


 イソギンチャク深海獣は言った。


「所詮はみなももまだ子供だったということか……」


 みなもはマイクセイバーの刃を消滅させ、マイクモードに変える。


「みなもちゃん! 無駄だ! 相手の心の壁はまったく取り払われていない!」


 イルが泳いできて叫ぶ。


「わかってる。でも……聞かせてあげなきゃ、私の歌を! 私がみんなを生かすために歌ってきたこの歌を!」


 そしてみなもは歌い始める。『碧海のレゾナンス』を。


「それが……みなもの歌か」


 イソギンチャク深海獣は言った。周囲の水が消滅を始めた。しかしイソギンチャク深海獣の身体から黒い真珠が出てくることはない。やっぱり、彼の心の壁は取り払われていないということなのか。

 やがて、アクア・ドームは消滅し、乾ききった公園の広場で、みなもとイソギンチャク深海獣は太陽の光を浴びて対峙していた。『碧海のレゾナンス』は最後まで歌い終わる。しかしイソギンチャク深海獣の黒い真珠が砕かれることはなかった。

 それでもみなもは言った。


「どう? 少しは変わった?」

「変わるものか」


 イソギンチャク深海獣は言った。


「でも、みなもが昔から変わらない人間だということはよくわかった」


 そしてイソギンチャク深海獣は変身を解いた。

 そこに立っていたのは、舞鶴先生だった。

 みなもは目を見開いた。


「え……嘘……舞鶴……先生……?」

「そうだ、俺だ、みなも。俺は深海帝国アビサルの手先になったんだ」


 それからため息混じりに言った。


「みなもに、本当の相手の救い方を教えてあげようと思ったんだがな……」


 みなもはコンパクトからチャームを引き抜いて、変身を解除する。


「先生、何があったんですか。どうして深海獣なんかに……」


 先生はゆっくりと口を開いた。


「俺がこの町へ戻ってきた理由だがな……。俺は、死に場所を求めてこの町へ戻ってきたんだ」

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