忍びなれども
書いたはいいもののまとめきれずに単体で投稿
えっと緊張感あるかと言われれば…
花の内部では依然として三人が閉じ込められた状態が続いていた。紳漓は血の滲む腕へさらに力を込めるが、根はわずかに軋むだけで決定的には断ち切れない。
紫暖もまた拘束を緩めようと意識を集中させるものの思うような成果は得られなかった
紫暖「厄介ね……」
紳漓「あと少しなんやろうけどな」
花そのものの力は確実に弱まっていて根の強度も先ほどほどではないと二人は理解していた
それでも致命的な一手が足りない。その時紳漓の視線が下へ向く。そこには根の上を移動しながら出口を探している朧偈の姿があった
紳漓「……待て」
紫暖「どうしたの?」
問い返す中紳漓は状況を整理するように言葉を続ける
紳漓「俺らは今能力使えへん」
紫暖は一瞬沈黙したのちその意味を理解する
この空間では能力そのものが封じられている
だからこそ二人は純粋な身体能力と根への抵抗だけで耐えている。しかし紳漓は続けた
紳漓「お前はどうや朧偈!」
朧偈「にん?」
紳漓「忍術や」
朧偈「…ぁ…使えるでござる」
紳漓「今気付いたんか」
朧偈「使ってなかったでござる」
紳漓「……間抜けやな」
しかし今はそれを咎める余裕はない。朧偈は唯一拘束されておらず、かつ能力を使用できる存在だった。
朧偈の表情から先ほどまでの緩さがわずかに消えて真剣さが滲む
朧偈「父上と母上を助ければいいのでござるな!」
紳漓「あぁ」
紫暖「無理はしなくていいのよ、でも出来ることはあるはずだから!」
その言葉を受けた朧偈は力強く頷いて忍者ポーズ
朧偈「にん!!」
白煙が弾けたかと思えば…ぽんっぽんぽんぽんぽんっと連続する煙の中から姿が現れる
そこには同じ顔の朧偈、朧偈、朧偈、朧偈、朧偈(以下略)(2回目)
紳漓「増えたな」
紫暖「増えたわね」
十数人の朧偈が整列して全員が同じ笑顔を浮かべている
朧偈達「「「「「「「「「にん!」」」」」」」」」
紳漓「嫌な軍団やな」
紫暖「あなたの提案なのに、w」
紫暖は思わず笑いを堪えきれない。朧偈達は互いに視線を交わして短く相談したのち一斉に頷く
朧偈達「承知!」
紳漓「何がや!?」
そして次の瞬間、一人目の朧偈の肩へ二人目が乗り、その上へ三人目、四人目、五人目と次々に積み上がっていく
夫婦「「……」」
それはもはや戦術ではなく純粋な力技の塔だった。ぐらぐらと揺れる朧偈タワー(?)を見ながら
紫暖「朧偈、それ大丈夫なのかしら」
朧偈達「多分!」
紳漓「多分言うな」
だがその不安定な塔は確かに拘束された二人へ届きそうな高さへと近づいていた。まだ下に立つ朧偈(多分本体)が胸を張る
朧偈「届くかもでござる!!」
紳漓「届くんかい!」
紫暖「ふふっ……w」
紳漓「笑うとる場合か」
紫暖「だって、w」
目の前には世界を覆う異常な花の内部。絶望的な状況にもかかわらず、その中で繰り広げられるのは忍者の増殖とタワーというあまりにも場違いな光景だった
朧偈「助けるでござるー!!」
紳漓「ほんま誰に似たんやろなぁ……」
紫暖「あなたじゃないかしら」
紳漓「否定できへんな」
その下では朧偈軍団が騒がしく連携を取る
<「つぎ拙者でござる!」「にんにん!」「ぐらぐらするでござる!?」「ファイトでござる!」
紳漓「ちょ、一応静かにせぇや!?」
朧偈(多分本体)「拙者、忍びなれども忍ばない精神でござる!」
紫暖「忍ばないの?」
朧偈「暴れて天晴でござるから!」
紳漓「怒られても知らへんぞ」
朧偈「にん〜⤵︎」
場の緊張は完全に別の方向へと崩れかけていたが、それでも確かに空気は変わり始めていた。
花の奥で続く異常な脈動の中にわずかな勢いが混じり込み始めていたのである。
正直怒られても文句言えませんねこれは




