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幽間世界  作者:
53/83

同じ少女のおもい

注意⚠️とっても長い

分けろって話ですがキャラの感情系にはとても熱が入ってしまいました

その姿を見た瞬間恋冬の瞳が大きく揺れる

そこに居たのは、間違いなく自分だった


白い病衣に色素の薄い髪、小柄な体と…あの日々のままの姿。


病室のベッドへ腰掛けていた少女はゆっくりとこちらへ顔を向ける。


その瞬間、ぞくりと全員の背筋を冷たいものが走った。


笑っていたけれどそれは優しい笑顔ではなく楽しそうでもない。


どこか壊れたような不気味な笑みだった。恋冬のような少女は恋冬を見つめながら首を傾げる。


『なんであなたが生きてるの?』


恋冬「っ、!?」


ドクンと心臓が大きく脈打つ。その声は自分そのものだった。


『だっておかしいじゃない』


少女はくすくすと笑って


『碧春が死んだのに』


『なんであなただけ生きてるの?』


恋冬「やめ……」


『病気だったのはあなたでしょ?』


『苦しんでたのもあなたでしょ?』


『本当なら死ぬはずだったのに』


少女はベッドから立ち上がった時点滴台がカラカラと音を立てる。


『全部碧春が代わりになったからだよね?』


『否定できないよね。だって事実だもん』


恋冬の肩が震えた。紗夜が一歩前へ出ようとするが恋冬は止めるように手を伸ばした


添霧も昴琉も何も言えなかった


あれは敵ではなく、恋冬自身の傷だった


『ずっと思ってたんでしょ?』


『私が死ねばよかったって』


恋冬「……っ」


『碧春が生きてた方が良かったって』


恋冬は答えられなかった。少女は恋冬だから、誰よりもその痛みを知っている。


『病院で目を覚ました時嬉しかった?』


恋冬「……」


『苦しくなくなった時嬉しかった?』


恋冬が俯くのを見て少女は笑う


『ねぇ、嬉しかったんでしょう?』


恋冬「ちがう……!」


思わず声が漏れる。少女の笑みが深くなった。


『じゃあどうして泣いたの』


恋冬「……」


『どうして今も苦しいの』


誰も何も言わないし、言えない


虚だけがじっと病室の少女を見つめていた


少女はゆっくりと視線を虚へ向ける。


『可哀想』


虚「は?」


『全部あなたのせいで死んだんだよ』


恋冬「やめて!!」


『なんで?違うの?助けたかったんでしょう?なら最後まで責任取らなきゃ』


虚の表情は変わらない。だが拳だけが僅かに握られて


『恋冬を一人にして、死んで、世界まで壊して……本当に最低』


恋冬「やめて……!」


『なんで泣くの?』


恋冬「やめてよ……」


『だって全部本当だもん』


少女はゆっくりと歩き出した。病室から降りて恋冬の目の前まで近付いてくる。


『あなたはこう思ってる』


恋冬「……」



『ずっと』



『ずっっと』



『ずーーっと』



少女の笑顔が近付き、耳元で囁くように



『あなたが死ねばよかったのに』



恋冬の瞳が大きく揺れたその瞬間、ガシッと少女の手首が掴まれる。


『……え?』


初めて少女の表情が止まった。手首を掴んでいる虚は少女を見下ろしながら静かに言う。


虚「うるさいな」


その声には今までになかった苛立ちが滲んでいた。


目を見開いた少女の目を虚は真っ直ぐ睨む。


虚「それは確かに恋冬がずっと自分に言ってた言葉だ」


少女の表情が僅かに歪んだ


虚「だが、だからなんだ」


虚は昔と同じように、恋冬を庇うように前へ立った。


虚「俺は一回も思ったことないぞ」


恋冬の瞳が大きく揺れるが虚は振り返らない。ただ前を向いたまま続けた。


虚「恋冬が死ねばよかったなんて一回も思ったことない」


静かな声だけれど嘘はなかった。


虚「俺は助けたかったから助けた。それだけだ」


恋冬「……っ」


虚「勝手に選んだのは俺だ。勝手に約束を破って移植したのも俺だ」


恋冬「碧春……」


虚「だから恋冬が背負う必要なんて最初から無い」


少女の笑顔が少しずつ崩れていく。虚はさらに言葉を重ね


虚「お前は恋冬じゃない。恋冬の後悔、罪悪感、そしてずっと離れなかった傷だ」


少女の顔から笑みが消える


『違う』


虚「違わない」


『違うッ!!』


病室が大きく揺れ、壁が軋んで床が震える。それでも虚は目を逸らさない


『私は恋冬だ!!』


虚「なら分かるだろ……恋冬は、そんな顔で笑わない」


その言葉に少女は初めて言葉を失った


だが次の瞬間には少女は再び歪な笑みを浮かべた。


『分かったようなこと言わないで』


虚「分かるよ」


『分からない!!』


少女の叫びが病室に響き渡る。


『だって私は知ってる!!病院で泣いたことも、苦しかったことも、みんなに嫌われたことも、死ねばよかったって思ったことも!!』


叫ぶたびに空間が歪み、病室の床から黒い根が這い出し始める。恋冬は震えながらそれを見つめていた。


少女は恋冬自身だった。だから分かる。あれは全部本当に思ったことだ。


誰にも言わなかっただけで、誰にも見せなかっただけで、確かに存在した感情だった。


『私は恋冬だ!!恋冬の全てだ!!苦しかった気持ちも、悲しかった気持ちも、憎かった気持ちも、全部!!』


少女の瞳からは涙が零れ落ちているのに笑っていた。


泣いているのに笑っている顔は見ているだけで苦しくなるような表情だった。


『なのに何で。何で私だけ否定するの』


恋冬は言葉を失う


『私はずっとここにいたのに。ずっと一緒だったのに』


否定できなかった。本当にずっと居たのだから


碧春が死んだ日から、葬式の日から、街が壊れていく日から……誰も居なくなった日から。


ずっと、ずっと、心の奥に少女は居た


『私がいたから忘れなかった。私がいたから碧春を覚えてた。私がいたから苦しめた。私がいたから生きられた』


恋冬の肩が震える。少女はゆっくりと手を伸ばした


『だから、私を捨てないで』


その言葉だけは不気味でもなく歪んでもなく、ただ泣きそうな少女の声だった。


恋冬の瞳が揺れる。紗夜達は何も言わない

これは誰かが代わりに答えるものではない。


恋冬自身が向き合わなければならないものだから


少女は恋冬を見つめて恋冬も少女を見つめていたが、やがて恋冬は小さく息を吸った。


恋冬「……うん」


少女の目が見開かれる。


恋冬「居たよ、ずっと」


恋冬は一歩前へ出た


恋冬「苦しかった。悲しかった。何度も自分が嫌になった。碧春が死んだ時、私も死んじゃいたかった」


『……』


恋冬「だからあなたが居たのは本当。でもあなたは私の全部じゃない」


『……っ』


恋冬「私は碧春と笑った。紗夜ちゃんとも添霧くんとも、昴琉くんともたくさん話した」


少女が後ずさるが恋冬はさらに一歩踏み出した


恋冬「苦しいだけじゃなかった。悲しいだけじゃなかった。私はちゃんと生きてた」


『違う』


恋冬「違わない」


『違う……!』


恋冬「違わないよ」


今度は恋冬が優しいけれどはっきりと言う


恋冬「ありがとう」


少女が固まる。


恋冬「ずっと一緒に居てくれて。忘れないようにしてくれて。苦しかった気持ちも、碧春のことも全部」


恋冬は昔のような柔らかい笑顔で


恋冬「でも、もう大丈夫」


少女の瞳からは、その言葉をずっと待っていたかのように大粒の涙が溢れ出した。


ぽたぽたと床へ落ちた雫は淡い光となって消えていく


先程まで空間を満たしていた重苦しい圧迫感もいつの間にか薄れて


初めて泣くことを許された子供のように少女は震えていた。


『……』


恋冬はゆっくりと少女へ近付いた。少女は逃げず泣きながら立ち尽くしている。


『私……』


声が震える。


『私、ずっと苦しかった』


恋冬「うん」


『ずっと怖かった』


恋冬「うん」


『ずっと許せなかった』


恋冬「……うん」


少女は顔を伏せる。


『碧春が死んだのに、私だけ生きてるのがずっと嫌だった』


嘘ではなかったから、自分自身が抱えていた感情だったから恋冬は何も否定しなかった


少女は涙で濡れた顔のまま恋冬を見る


『ねぇ』


恋冬「?」


『もう、私はいらないの?』


不安そうで、どこか怯えていて、今にも消えてしまいそうな声


恋冬は少しだけ目を見開いてゆっくり首を横に振った


恋冬「ううん」


少女の瞳が揺れる


『じゃあ、なんで……』


恋冬は小さく泣きそうなくらい優しい笑顔で


恋冬「忘れないから」


少女が息を呑む。


恋冬「碧春のことも、苦しかったことも、悲しかったことも全部」


恋冬は少女の前へ立ってそっと抱き締める


『あ……』


恋冬「ありがとう」


少女の肩が大きく震えた。


恋冬「ずっと一緒にいてくれて、忘れないようにしてくれて……ありがとう」


少女は何も言えないまま涙だけが止まらない。


やがて、その体から淡い光が溢れ始めた。


『あ……』


恋冬「……」


『私』


自分の手を見ると透けて、指先から少しずつ光になって崩れていた。


『消えるんだ』


少女は不気味な笑みではなく、今度は本当に恋冬と同じ笑顔だった


『良かった』


恋冬「……」


『やっと、終われる』


その言葉と共に、少女の体は粒子となって舞い上がる。


病室の光景も揺らぎ、全てが淡く崩れていく中で少女は最後に恋冬を見た。


『……生きれる、?』


恋冬「…うん」


『ならちゃんと、幸せになってね』


恋冬「……わかってるよ」


『…私は、碧春と会えて良かった』


少女はふわりと光が空へ溶けるように消えた




誰も言葉を発せなかった


恋冬はしばらくその場に立ち尽くしている。抱き締めていた腕の中にはもう何もない


それでも、不思議と長い間抱えていた何かが少しだけ軽くなった気がした。


その時、突然空間全体が揺れ始める


添霧「うわっ!?」


昴琉「何ですか今の!?」


病室だった場所の床に大きな亀裂が走った。

紗夜は即座に恋冬の腕を掴み後ろへ引く。


紗夜「下がって」


恋冬「えっ……」


次の瞬間には床が崩落し、巨大な穴が口を開けるのを見て全員が反射的に覗き込む


そして言葉を失う。地下の遥か下方には無数の根が絡み合う異様な空間が広がっていた。


建物を支えている根ではない。街を飲み込み、世界そのものへ食い込むほど巨大な根


その中心にはしろとも黒ともつかないような色をした、美しく禍々しい巨大な花が咲いていた


まるで世界そのものが咲かせた傷跡のような花


添霧「…なにあれ」


昴琉「馬鹿な……」


虚だけ黙っていた。紗夜は横目でその表情を見る。


まるで何かを思い出したように虚は花を見つめたまま動かない。


添霧「虚?」


呼ばれても返事をしない。


恋冬「碧春……?」


虚の肩が僅かに震えた。そして、誰にも聞こえないほど小さな声で


虚「……次は」


恋冬「え?」


その瞳には今までになかった不安が浮かんでいる


虚「次は俺の番かもしれない」


その言葉と共に、花の中心が脈打つように赤く光った。


4000ですって。ほほほ

と言っても長い…ごめんなさい……

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