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幽間世界  作者:
41/83

過保護な父親

紳漓「ぶぇーくしゅっ!!」


紫暖「大丈夫?」


紳漓「…………」


紫暖「……あなた?」


朧偈「父上、どうなされたでござるか?」


次の瞬間だった


紳漓「(*゜ロ゜)ハッ!!」


紫暖「うるさ」


朧偈「にんにん!」


紳漓「今!!今昴の声がした!!」


紫暖「気のせいよ〜」


紳漓「冷たない!?」


朧偈「父上、それ先ほども申しておられたでござる」


紳漓「だってや!!『軽くないですか!?』って!!絶対昴琉のツッコミやったもん!!」


紫暖「……」


紫暖は少し考えるようにしてから、さらっと言う。


紫暖「それ、あなたが普段から昴琉の声を脳内再生してるだけじゃない?」


紳漓「やかましいわ」


朧偈「父上、拙者も先ほどから“兄上は今ご無事でござる”という気配しか感じぬ!」


紳漓「ほんまか!?」


朧偈「にんにん!」


紳漓「……」


一瞬だけ安心しかけるがすぐに顔が引き締まる。


紳漓「……いや待て」


紫暖「?」


紳漓「無事と無茶してないは別や」


紫暖「出た、過保護理論」


紳漓「ちゃうねん!!昴はな!!大丈夫ですって言いながら一番無理するタイプやねん!!」


朧偈「……兄上、確かに」


朧偈「父上に心配をかけまいとして余計に抱え込む性分でござるな」


紳漓「やろ!?ほら見てみ!!」


紫暖はくすっと笑う。


紫暖「でも昴琉、ちゃんと助けを呼べる人と一緒にいるわ」


紳漓「……?」


紫暖「あなたが育てた子だもの」


その言葉に紳漓は一瞬黙る


紳漓「……」


照れ隠しのように咳払いをひとつ。


紳漓「…まぁ、せやけどなぁ……」


そのときだった。


紳漓「…今!!」


紫暖「まだ言う?」


朧偈「にんにん……」


紳漓「今度は確実や!!父さんって呼ばれた!!」


朧偈「それは流石に幻聴では?」


紳漓「言うな!!」


紫暖「…でも、心配してる声が届くくらいには距離は近づいてるのかしら」


紳漓「!!ほな、行くか!?」


紫暖「行かないわよ」


紳漓「なんで!?」


紫暖「今行ったら、昴琉全力で逃げる顔してるもの」


朧偈「…想像できるでござるな」


紳漓「…………」(完全に想像してしまった父親)


紳漓「……はぁー、…もうちょい我慢するか……」


紫暖「ええ、その方がいいわ」


朧偈「父上!兄上は必ず帰ってくるでござる!」


紳漓「……そうか、?」


朧偈「拙者が保証するでござる!にんにん!」


紳漓「…昴琉、無事でおれよ、晩飯ちゃんと食えよ……」


その頃遠く離れた場所で、昴琉は理由もなくくしゃみをした。





しばらくしても


紳漓「…………」


紫暖「……また考え込んでるわね」


紳漓「……なぁ」


紫暖「はいはい」


紳漓「差し入れくらいなら…ええやろ?」


紫暖「……何の?」


紳漓「昴琉への」


紫暖は無言でじっと見る。


紫暖「差し入れって、あなたの言うそれは、」


紳漓「飯や!普通に!!親として普通のことやろ!!」


朧偈「父上、具体的には何を送るおつもりでござるか?」


紳漓「……炊き込みご飯」


紫暖「重いわ」


朧偈「保存性ゼロでござる」


紳漓「じゃあ干し肉!」


紫暖「塩分」


朧偈「胃にくるでござる」


紳漓「ほな、栄養満点スープ!!」


紫暖「器は?」


紳漓「……」


紫暖「あなた」


紫暖「それ、差し入れじゃなくて仕送りよ」


紳漓「…ちゃうねん」


紫暖「なにがよ」


紳漓「声がな…さっきから……」


紫暖「はいはい」


紳漓「腹減ったって言うてる気がしてな……」


紫暖「言ってないわ」


朧偈「父上、それは父上の願望でござる」


紳漓「……」


紳漓は拳を握る。


紳漓「…決めた」


紫暖「決めないで」


紳漓「差し入れだけ転送する」


紫暖「…じゃあ条件付きよ」


紳漓「おっ」


紫暖「あなたは能力を使わない」


紫暖「私が座標を絞る。物だけ。人も気配も送らない」


紳漓「……約束やで?」


紫暖「逆よ」


転送準備をし、紫暖は静かに手をかざす。


紫暖「昴琉の持ち物に紐づけて……」


朧偈「兄上の荷物…」


紫暖「…弁当袋かしら」


紳漓「え、袋!?それならもっとええもんを」


紫暖「黙って」


紳漓「」


紫暖「……転送、開始」


次の瞬間、ズドンッ!!!


3人「!?」


紳漓「…今、量おかしなかった?」


紫暖「…失敗したわ」


紳漓「え?」


朧偈「なぬ!?」


紫暖「弁当袋に紐づけたはずが…あなたが直前に昴琉の鞄全部を思い浮かべたせいで」


紳漓「」


朧偈「父上……」


紫暖「鞄の中身がまるごと補充されたわ」


紳漓「……どれくらい?」


紫暖は指を折りながら


紫暖「・炊き込みご飯(3合分)

・干し肉(1週間分)

・栄養スープ(鍋ごと)

・保存食・なぜか替えの靴下」(?)


紳漓「靴下!?」


朧偈「父上、兄上の鞄、もう閉まらぬでござる」


紳漓「…昴琉、逃げるやろな」


紫暖「ええ、全力で」


朧偈「拙者でも逃げます」


紳漓「……」


紳漓は空を見上げて、力なく呟く。


紳漓「…差し入れだけやったのに……」


紫暖「あなたがやるといつもこうなのよ」


朧偈「父上の愛は重量級でござるな」


紳漓「褒めてへんやろそれ」


朧偈「にんー?」

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