出会い
夕方の墓地には風で運ばれた線香の匂いが少し残っている。
添霧「あ」
紗夜「ん。」
添霧「…見えてる?」
紗夜「見えてるけど」
添霧「え!?ほんとに!?」
紗夜「うん。普通に」
添霧「わ!すごい!!久しぶりに反応された!ねえねえ!君の名前は!?」
紗夜「霊場 紗夜」
添霧「さな!」
紗夜「私紗夜なんだけど」
添霧「あ、ごめん!さな!」
紗夜「…紗夜」
添霧「うん、さな!」
紗夜は一瞬だけ考えて訂正するのをやめた
紗夜「……まあ、いい」
添霧「いいの!?やった!」
紗夜「で、何」
添霧「え?」
紗夜「用事」
添霧「あ、用事?用事かぁ……」
添霧は少しだけ考えるように首を傾げ、それからにこっと
添霧「特にない!」
紗夜「……そう」
添霧「でもさ、君全然驚かないね?」
紗夜「そう?」
添霧「普通は叫ぶとか、逃げるとかするんだけど!」
紗夜「疲れるから」
添霧「そっかぁ……」
少しして線香立ての前で紗夜は手を合わせる
添霧「誰のお墓?」
紗夜「お母さん」
添霧「そっか」
添霧はそれ以上聞かず、ただ少し距離を取って隣に浮く
添霧「ねえ、さな」
紗夜「紗夜」
添霧「まえにさ、僕の居場所壊れちゃったんだ!」
紗夜「大変だね」
添霧「うん!だからさ」
紗夜 (だからさ?)
添霧「ちょっとついてってもいい?」
紗夜は振り返って添霧を見ると、拒絶もしないし許可もしない顔で
紗夜「勝手にすれば」
添霧「えっいいの!?」
紗夜「止めても来るでしょ」
添霧「うん!」
そう言って添霧は嬉しそうに
添霧「じゃあ今日からよろしくね、さな!」
紗夜「……だから」
添霧「?」
紗夜「私、紗夜なんだけど」
添霧「次は合ってる気がする!」
紗夜「気がする、じゃなくて」
添霧「大丈夫大丈夫!そのうち覚える!」
紗夜は小さく息を吐いて歩き出し、その後ろからは楽しそうな声がついてくる
添霧「ねえさな!家ってどっち!?」
紗夜「…教えるとは言ってない」
添霧「じゃあ一緒に帰ろう!」
紗夜「勝手にして」
夕暮れの墓地を出る
生きてる人間と居場所を失った幽霊は、今日同じ方向に歩き始めた。




