暖かな家族達
翌日の昼夜刀神家のリビングは妙に活気があった。
紳漓「というわけで!」
一同「「「え?」」」
紳漓「今日はピクニックや!!」
朧偈「にんにん!平和記念でござるな!!」
昴琉「…普通、平和だからって外に出ます?」
紫暖「いいじゃないたまには!お弁当もちゃんと作ったわよ」
紗夜「……弁当」
添霧「え!?僕のも!?」
全員「「「?」」」
紳漓「当たり前やろ?」
添霧「やったー!!」
尚、案の定弁当問題が起こる
紫暖は紙を一枚広げ、その上におにぎりとおかずを並べた。
紫暖「添霧くん、一応…こうすればお供え扱いになると思うの」
添霧「なるほど……!」
ぱく。
添霧「…食べれる!!!」
朧偈「にんにん!?幽霊革命でござる!!」
紗夜「……よかったね」
添霧「うん!!ありがとう!!」(なお量の概念はまだ理解していない)
ちょっとした移動中には
昴琉「今日は本当に何も起きないな……」
その瞬間、全員が周囲を見る。
「……」
何もない。
紳漓「逆に怖ない?」
紫暖「言わないの」
紗夜「……フラグ」
昴琉「立てないでください」
本確ピクニック開始時、芝生の良い木陰にシートを堂々と置く
紳漓「ほらほら!!陣形組むで!!」
昴琉「なんで戦闘配置なんですか」
朧偈「にんにん!拙者は見張り役でござる!」
昴琉「いらないからこっちこい」
添霧「平和だねぇー!」
紗夜「…うん」
風が吹いて木が揺れる。…本当に何も起きない。
そして、案の定
添霧「この唐揚げ美味しい!!」
添霧「これも!!」
添霧「こっちも!!」
紫暖「あまり急いで食べると……」
添霧「……」
紗夜「…」
添霧「……あれ」
紗夜「?」
添霧「おなかが…重い……」
紳漓「また!?!?」
朧偈「にんにん!くりかえしでござる!!」
昴琉「笑ってる場合じゃない」
そして紗夜の看病(※2回目)
紗夜「…どうする」
添霧「ごめん…調子乗った……」
紗夜は少し考えてから、自分の上着をそっとかける。
紗夜「横になって。これ貸すから」
添霧「…さな…優しい……」
紗夜「看病だから」
添霧「死なないためにやるのに幽霊にやるの違和感すごいなぁ!!!」
紫暖「ふふ、じゃあこれを」
透明なゼリーのような養生食が差し出される。
紳漓「……それ」
紫暖「前のやつのゼリー版!」
紳漓「相変わらずポーションみたいやな」
添霧「なにこれ!すごい染みる!生きてないのに……」
紳漓「ほんま何でもありやな……」
しばらくして。
添霧「回復した!!」
朧偈「にんにん!次は腹八分目でござる!」
昴琉「学習したな……」
紗夜「平和」
空を見上げる。
紗夜「……悪くない」
紳漓「せやろ?人外出なくても騒がしいのが夜刀神家や!」
全員「「それはそう」」
芝生の上に笑い声が広がる。
何も起きない一日。
でもそれは、もう十分すぎるほど特別な時間だった。
日が傾き始め、芝生の色はゆっくりと橙に染まっていく。
さっきまで賑やかだった空気は少しずつ落ち着き、会話も自然と途切れていった。
朧偈はぼんやりと空を見上げたまま
朧偈「…にん……」
と呟き、そのままごろんと横になる。昴琉はそれを見て
昴琉「おい、そこで寝るな……」
注意しながらも、自分もシートに腰を下ろし、気づけば静かに目を閉じかけていた。
紫暖はその様子に小さく微笑みながら
紫暖「みんな、疲れたのね」
紳漓は仰向けに倒れ込むように寝転がって
紳漓「平和って地味に体力使うんやな……」
ぼやいたあと、もう起き上がる気力もなさそうに目を閉じた。
その中で添霧は、自分の手を見つめて小さく首を傾げる。
添霧「…あれ、僕、眠くなってる……?」
紗夜「幽霊なのに?」
添霧「それ!そこ疑問!寝なくていいはずなのに!」
力がふっと抜け、添霧はそのまま紗夜の隣にゆっくりと座り込む。
添霧「…まあ、今日は楽しかったし…少しだけ……目、閉じよ……」
紗夜「……少しだけなら」
その一言に安心したように、添霧は目を閉じた。
朧偈はすでに完全に眠りに落ちている。
昴琉も静かに呼吸を整え、紫暖の肩にもたれかかるように目を閉じる。
紳漓は最後まで起きていようとしていたが
紳漓「紫暖……」
と小さく呼びかけたあと、
紳漓「一緒に寝よ……」
紫暖「全く、あなたったら…」
紫暖に支えられるように眠りへ落ちていった。
芝生の上には静かな寝息だけが残る。
添霧は半分夢の中で小さく呟く。
添霧「…さな、今日さ…楽しかったね!」
紗夜は一拍置いて静かに答える。
紗夜「…うん」
その声を聞いたまま、添霧は完全に眠りに落ちた。
幽霊であるはずの存在がまるで呼吸をするように静かに沈んでいく。
紗夜は少しだけその横に寄り、何も言わずに目を閉じた。
敵も、事件も、緊張もない一日。
ただ疲れて、安心して、眠っているだけの時間。
紗夜もいつの間にかそのまま夢の中へ落ちていく。
今日は誰も起きていなかった。そしてそれが何より平和だった。
夕焼けが、暖かくみんなを包み込む
芝生の匂いや食べ終わった弁当のほんのりいい香り。
夕暮れ特有のあの穏やかさが、みんなの心を満たしていた




