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幽間世界  作者:
24/83

平和の延長線



翌日の昼、夜刀神家の居間には慎重に整えられた食事が並んでいた。


紙の上に置かれたそれを見て、紫暖が穏やかに告げる。


紫暖「今日は軽めにね」


添霧「はい……」


添霧は素直に頷き、白粥を一口食べた。すると一瞬動きが止まり、次の瞬間目がゆっくりと見開かれる。


添霧「……あれ?」


もう一口…もう一口。沈黙の後、ぽつりと呟いた。


添霧「…なにこれ、うま……」


昴琉「……何を食べた?」


添霧「白粥……」


添霧「昨日と違う!!今日の白は深い!」


紳漓「何言うてんねん」


紗夜「…昨日も同じ」


添霧「違う!!味が進化してる!!」


数分後、紫暖が煮物を勧めると添霧は首を振った。


添霧「いりません!」


全員「「「!?」」」


添霧「白粥だけでいいです!漬物も!白いもの最高!!」


朧偈「に、にんにん!?極端でござる!」


昴琉「……偏食が始まったな」


添霧「味覚が覚醒したんだよ!!」


紳漓「嫌な覚醒やな!!」


夜、添霧は布団でぐったりしていたが、白粥の余韻だけが残っているようだった。


添霧「胃もたれは治ったけど…白粥ほしい……」


その隣に紗夜が静かに正座する。


紗夜「…添霧」


添霧「…なぁに……?」


紗夜「看病する」


添霧「え!?ありがとう!!」


数秒後、紗夜は体温計を持って戻ってくる。


紗夜「……測る」


添霧「幽霊なのにぃ!?」


とりあえず脇に挟み(?)数分後ピピッと音が鳴る。


紗夜「……エラー…金属部分つめたい」


添霧「低すぎない!?」


紗夜「……平常」


添霧「基準が分からないね!?!」


次に布団がきっちり整えられる。角は異様に直角だった。


添霧「寝にくくない!?角が主張してる!!」


さらに水が差し出されるが、紙の上に置かれる。


紗夜「……供え」


添霧「看病の方向性なんかやだ!!」


そこへ紫暖が静かに台所へ向かい、しばらくして戻ってくると、半透明に淡く光るスープを持ってきた。


紳漓「…何やこれ」


紫暖「幽霊にも効く養生食よ」


昴琉「理論は?」


紫暖「気持ち」(?)


昴琉「強すぎる」


添霧は恐る恐る一口飲み、目を瞬かせる。


添霧「…なにこれ…胃がなんか、納得していく……」


朧偈「にんにん!?拙者にも効きそうでござる!」


紳漓「それもう万能薬やん」


数時間後、添霧はすっかり回復していた。


添霧「白粥も好きだけど、やっぱり色あるのも食べる!」


昴琉「学習したな」


紗夜「…看病、成功?」


添霧「うん!」


紗夜「……よかった」


紫暖は微笑みながら湯呑みを手に取る。


紫暖「ふふ、家族が増えると賑やかね」


紳漓「ほんまや、幽霊が胃もたれして偏食して看病される家やで?」


昴琉「カオスすぎる」


けれど、そのカオスすらいつの間にか日常として馴染んでしまうのが…この夜刀神家だった。



翌日、夜刀神一同は外出した


街の建物は高く、多く、そしてやたらと圧があった。


その前で紗夜と添霧は並んで呆然と立ち尽くしている


添霧「さ、さな…これ……山?」


紗夜「……みたことない」田舎民。


添霧「建物にしてはデカすぎない!?山だよこれ!!」


紗夜は首をゆっくり上に傾けたまま呟く。


紗夜「……空、見えない」


昴琉「ここがショッピングデパートですけど… …」


朧偈「にんにん!拙者はこういうのも好きでござる!」


二人「……人多い…いや多すぎる」


建物の中へ入った瞬間、光と音と匂いが一気に押し寄せる。


添霧「…………」


紗夜「……添霧?」


添霧「情報量…墓地の三年分……」


紗夜「それは盛りすぎ」


紳漓「例えどうなっとん」


自動ドアが開いた瞬間、添霧がビクリと跳ねる。


添霧「え!?勝手に開いた!!」


紗夜「…しらない」


添霧「罠だよね!?これ絶対罠だよね!?」


昴琉「普通に入店システムですよ!?」


添霧「システムって何!?」


さらにエスカレーターの前。


紳漓「ほな上行こか」


動く階段を見て、紗夜が止まる。


紗夜「…階段が動いてる」


添霧「生きてる!!」


紳漓「動く階段や!!」


昴琉「普通に乗るだけ」


紗夜は慎重に一歩乗ると、無言で目を見開いた。


紗夜「…勝手に上がる」


添霧「文明すごい!」


紗夜「怠惰」


添霧「急に辛辣!」


紳漓「文明から隔離されとったんか?」


フードコートではさらに混乱が加速する。


紗夜「…選べない」


添霧「全部美味しそう!全部食べたい!!」


朧偈「にんにん!あの光る飲み物が気になるでござる!」


紳漓「それただのジュースや!…え?光る?」


紗夜は紙を敷いて小さく食べ物を置く。


紗夜「……一応…供えとく」


紳漓「都会でも供えるんかい」


添霧が一口食べて固まる。


添霧「…………」


紗夜「…どうしたの」


添霧「都会の味…墓場にはなかった……」


紳漓「まぁせやろな」


紗夜はハンバーガーを見つめる。


紗夜「…丸い……肉」


添霧「語彙が原始に戻った!!」


移動先のデパート上階の扉が開いた瞬間、爆音と電子音と音楽が一斉に押し寄せた。


\\\ ドォン!! ///

\ ピコピコ!ガシャーン! /

\♪♪♪♪♪♪/


\\\\ꐕ ꐕ ꐕ//// (?)


紗夜はその場で完全に固まった。


紗夜「…………」


添霧「うわぁぁぁ!?なにここ!!戦場!?」


添霧の目だけが異様に輝いている。


紗夜「……音……多い……」


紗夜はこめかみを押さえたまま、ゆっくりと周囲を見回した。


紗夜「…刺さる……」


昴琉「大丈夫ですか?」


朧偈「にんにん!賑やかでござるな!」


紳漓「ええやんええやん!テンション上がるわ〜!」


一番元気だったのはこの男だった。


添霧はクレーンゲームに吸い寄せられるように駆け寄る。


添霧「なにこれ!?物取れるの!?物理的に!?幽霊なのに夢の国じゃん!!」


アームが動くと、ガシャンッ!


添霧「動いた!!意思ある!!」


紗夜「……意思はない」


添霧「すごい!!文明!!」


その隣で紗夜は完全に限界に達していた。


紗夜「…………音が……刺さる……」


紫暖「紗夜ちゃん、少し外に――」


\\\ ドンッ!! ///(太鼓の〇人)


紗夜「……っ」


紗夜はその場で膝をつきかける。


添霧「あっ……さな……!」


紗夜「……紗夜」


添霧「ごめん!!楽しくて!!」


紗夜「…分かる……でも次は、静かなとこ……」


紫暖はすぐに前に出て、軽く手を振った。


紫暖「少し静かにするわね」


すると周囲の音がふっと柔らかくなる。


紗夜「助かる……」


添霧「ご、ごめん……」


紳漓は太鼓の前でバチを構えたまま振り返る。


紳漓「ほな、ちょっとやってみよか!」


昴琉「やるんですか?」


紳漓「当たり前やろ!!」


ドン!カッ!ドン!


紳漓「うおおお!!懐かし!!」


朧偈「にんにん!?父上、動きが軽いでござる!」


添霧「すごい!!さすが父!!」


紳漓「誰が父や!!」


紗夜は壁に寄りかかったまま視線が虚ろだった。


紗夜「…あたま……」


添霧「さな!!ぶじか!!!」


紗夜「……大丈夫じゃない……」


そのまましゃがみ込む。


紫暖「……!」


紫暖はすぐに紗夜の前に立ち、能力を最小限だけ使って音を和らげる。


紫暖「大丈夫よ、少し静かにするわ」


紗夜「ありがと…」


添霧「ごめんほんとに…」


紗夜「分かってる……でも…次は……耳栓……」


添霧「そだね!!!」


帰り際、紗夜はようやく回復して立ち上がる。

添霧はまだ余韻でふわふわしていた。


添霧「…ゲームセンター楽しかった……」


紳漓「ほな最後にもう一回や!!」


添霧「まだやるの!?」


昴琉「一番ハマってない?」


紫暖「ふふ…昔を思い出すわね」


朧偈「にんにん!父上、童心でござる!」


紗夜はぽつりと呟いた。


紗夜「……また来るなら…静かなやつ……」


添霧「次は静かなゲーム探す!!」


紳漓「そんなもんあるか!!」


こうして一番はしゃいでいたのは紳漓で、一番ダメージを受けていたのは紗夜だった。



服屋は明るかった。広くて鏡が多くて、どこを見ても自分が映る。


紗夜は入口で固まった。


紗夜「……多い」


紫暖「ふふ、大丈夫よ」


昴琉「一応、普段着は必要ですよね……?」


紗夜「…今のだけが普段着」


全員「「「それは違う」」」


紫暖はすでに服を数着抱えている。


紫暖「これと…これと……」


紗夜「…多い…布1枚なのに形が違う……」


添霧「さな、これ全部着るの?」


紗夜「……着るらしい」


添霧「らしい!?」


試着室に入り、しばらくして紗夜が出てくる。

上下も色もバラバラ。センス0


昴琉「…逆ですね」


紫暖「紗夜ちゃん、上のはパジャマよ……」


朧偈「に、にんにん……拙者、目が追いつかぬでござる……」


紗夜「…着れた」


紳漓「着れてない!!」


紫暖がちゃんと選んだ服で紗夜再登場。一瞬空気が止まる。


添霧「…あ、似合う……」


紗夜「何が?」


紫暖「ふふ、お洒落よ」


紗夜「……戦闘力上がった?」


紳漓「なんで今に限ってボケ側やねん」



その後、記念写真撮影をしようと並ぶ


紳漓「ほら並べ並べ!」


添霧「僕も!僕も!」


紳漓「写らんやろ!」


パシャ!


確認すると全員いる。ただし……添霧だけいない。


添霧「あ、やっぱり」


紗夜「…いない」


紫暖「うん」


朧偈「にんにん…透明でござる……」


添霧「いや違う!!」


紳漓「次いこ次」


二枚目


紳漓「供え紙持って撮ったらええんちゃう?」


パシャ。


今度は全員いる。だが……紗夜の肩に白い手。


添霧「………え」


昴琉「……これは……」


紫暖「……」


紳漓「やめよか」


添霧「ちがう!!僕の手!!」


紳漓「余計怖いわ!!」


紗夜「…燃やす?」


添霧「やだぁ!?」


紳漓「判断が早い!!」


夜は屋上で涼む。


屋上は静かで、街の光が広がっている。

車やネオン、人の流れを見ながら紗夜は柵に手を置いた。


紗夜「……綺麗」


添霧は隣でふわりと浮いている。


添霧「墓地とは全然違うね」


紗夜「……うん、でも嫌いじゃない」


添霧「分かる!静かなとこなら好き」


紫暖は少し離れて見守り、紳漓は腕を組む。


紳漓「ええ顔しとるな」


昴琉「…初めてですね」


朧偈「にんにん…夜景、忍者にも優しいでござる……」


紗夜は空を見上げた。


紗夜「…都会はうるさい…でも光が多いから」


添霧「生きてる感じするよね!」


紗夜「……うん」


少しだけ呼吸が深くなる。今日一日は騒がしかった。


ちょっとした事故も、混乱も、笑いもあった。

でも今はただ、静かに夜が流れていた。


区切り時を上手く描けなく…

というか手元で完成してるのを貼ってる為文字数グラグラ

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