家族
昴琉→すばる
朧偈→るげ
紫暖→しのん
です
紳漓「帰ったでー」
紳漓の声は外にいた時より少し柔らかかった。
扉が開いた瞬間、室内の灯りが三人を包む。
紗夜「……明るい」
小さく漏れた言葉
紳漓「そら家やからな」
靴を脱ぎながら振り返る。
紳漓「ほな、紹介するわ」
その時
昴琉「父さん?」
階段の上から声がした。
降りてきたのは落ち着いた雰囲気の少年。
昴琉「遅かったね」
紳漓「ちょい仕事な」
少年の視線が紗夜と添霧へ向く。
昴琉「……?」
一瞬だけ目が止まる。
昴琉「……人間?」
少しだけ声が上ずった。
紳漓「せや。夜道で拾った」
昴琉「拾ったって……」
呆れたように言いながらもきちんと頭を下げる。
昴琉「夜刀神昴琉です」
添霧「すばる!」
昴琉「……?」
添霧「よろしく!」
昴琉「あ、うん…よろしくお願いします」
真面目だ。姿勢も綺麗で言葉遣いも丁寧。
紗夜「……紗夜」
短く名乗る。
昴琉「紗夜さん」
昴琉が頭を下げようとした時
朧偈「にんにん〜!」
今度は天井近くから声。
朧偈「父上!客人でござるか!」
紗夜「……?」
添霧「!?」
いつの間にか梁の上に逆さまになっている少年がいた。
紳漓「おい降りてこい」
朧偈「了解でござる!」
ひらり、と軽やかに着地する。
朧偈「拙者、夜刀神朧偈!」
胸を張る。
朧偈「忍術担当でござる!」
添霧「るげ!」
朧偈「にん!」
添霧「忍者!?」
朧偈「そうでござる!」
添霧「本物!?」
朧偈「本物でござる!」
添霧「すごい!!」
朧偈「幽霊殿も十分すごいでござるよ!」
一瞬で距離が縮まった。
紗夜「……仲良くなるの、早い」
朧偈「忍者は察しが良いのでござる!」
昴琉「朧偈、初対面だぞ」
朧偈「大丈夫でござる!家族ぐるみで仲良しでござる!」
昴琉「話を聞け」
そう言いながらも少しだけ口元が緩んでいる。
その時
紫暖「……おかえりなさい」
奥から静かで柔らかい声がした。
現れたのは一人の女性。
息子達と同じような白と黒の混じった髪に無駄のない所作。
彼女の穏やかな微笑みだけで空気がふっと落ち着く。
紫暖「遅かったわね、あなた」
紳漓「すまんすまん」
紫暖「もう」
紳漓は少し照れくさそうに頭をかく。
紗夜「……」
紗夜は目を離せなかった。人外だと分かるけれど怖くない。
不思議なくらい安心する。
紫暖「この子たちが?」
紳漓「せや」
紫暖は紗夜の前まで来ると、ゆっくり膝をつき目線を合わせて優しく微笑む
紫暖「夜刀神 紫暖です」
紗夜「……紗夜」
紫暖「紗夜ちゃん」
その名前を、とても大切なものみたいに呼ばれた気がした
紗夜「……」
少しだけ胸がざわつく
紫暖「今日は大変だったでしょう」
そっと手が伸びる。
紗夜「……少し」
気付けば正直に答えていた。
紫暖「そう」
紫暖は小さく頷く。
紫暖「今日はここで休んでいいのよ」
紗夜「……いいの」
紫暖「ええ」
迷いなく即答する
紫暖「この家はね」
紫暖「迷ってきた子を追い返さないの」
添霧「……」
胸の奥が少し軽くなった気がした。
添霧「……優しい人だ」
紫暖「ふふ」
紫暖は添霧にも微笑む。
紫暖「あなたも、どうぞ」
添霧「……ありがとう!」
その様子を見ながら、昴琉が小さく息を吐く。
昴琉「……父さん」
紳漓「ん?」
昴琉「この家族、誇らしいでしょ」
紳漓「……」
一瞬だけ目を丸くして。
それから笑った。
紳漓「せやな」
朧偈はすでに添霧の袖を引っ張っていた。
朧偈「幽霊殿!」
添霧「なに!?」
朧偈「あとで忍者道具見せるでござる!」
添霧「ほんと!?」
朧偈「にんにん!」
添霧「やったー!!」
昴琉「壊すなよー」
朧偈「壊さんでござる!」
添霧「たぶん!」
昴琉「たぶん?」
紗夜はその光景を静かに見ていた。
賑やかな笑い声。
…自分家の怒鳴り声でも誰かを傷つけるための声じゃない。
暖かく存在する家族の声
紗夜「……」
胸の奥が少しだけ緩む。
ほんの少しだけ
…… 本当に少しだけ。
紗夜(……悪くない)
そう思ってしまったことに、自分自身が少し驚いていた。
カタカナはあれだなぁ、かっこいいのがいいなぁ、せや当て字にしたろ!
その結果がこの難解読な名前になりました
ごめんなさい




