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:てか周りに誰もおらんなwwww
:いつもなら『明星の導き』は大勢の探索者で賑わってるのにwww
:ミヨリちゃんが来たからねwww
:みんな避難したwwww
:探索者同士で声をかけあってたなwwww
:まちがってミヨリちゃんにエンカウントしちゃったら大変だもんね(ガチで)
:そして誰もいなくなったwww
:おまえらミヨリちゃんをなんだと思ってんだよwwww
:↑きみはミヨリちゃんがやって来るダンジョンにもぐれるのかい?
:すまん! 俺がまちがっていたっ!
:秒で謝ってて草
コメント欄に書き込まれていたとおり、辺りにはミヨリたち以外の探索者の姿は見当たらない。『明星の導き』には連日たくさんの探索者が訪れているはずなのに、ミヨリが来たので本日はめっちゃ過疎っていた。
相変わらず同業者たちから恐れられている。ミヨリは不服そうにムッとする。
「なるほど。攻略を狙っているダンジョンから同業者を追い払いたいときは、ミヨリさんを呼べばいいわけですね。そうすれば他の探索者よりも先んじることができます」
:腹黒さん戦略を思いつくんじゃないwww
:確かに効き目バッチリだろうがwwww
:その手があったか、って顔するな腹黒さんwww
:腹黒さん知将だなwwww
:ミヨリちゃんはそういうことには協力しないだろwww
感心したようにうなづいている涼子を見て、やっぱりこの人は性格ゆがんでいるなと、ミヨリは確信した。
「ところで二人がゲストとして参加していたゲームイベントですが、わたしも配信のほうで拝見させてもらいました。とてもおもしろかったです。ムラサメさんが一方的にミヨリさんを殺しまくってるのは、見てて笑いが止まりませんでした」
「や、やめないか涼子くん……お、思い出したら、わ、わたしも吹き出してしまうだろ!」
:確かに笑いが止まらなかったがwww
:オイもう代表が吹き出しそうになってるぞwww
:腹黒さんのせいで代表の腹筋がピンチwww
涼子が先日のゲームイベントの話題を振ってくると、玲奈が口元を手で押さえて小刻みに震えていた。
綾乃もゲームイベントのことはミヨリに申し訳ないと思っているので、「あっ、いや、まぁ……」と取り乱している。
「楽しんでもらえたのなら、よかったです」
ちょっと胸がモヤッとするけど、ミヨリは淡々とそう答えておいた。見てくれた人が楽しんでくれたのならよかったと思っているのは本心なので。
玲奈は腹筋に力を込めて、吹き出しそうになる衝動をどうにか抑え込むと、集まったメンバーたちの顔を見て微笑む。
「こうして若い子たちにかこまれて、冒険できるのはうれしいよ。わたしの配信に出てくる昔の仲間たちは、年寄りばかりだからね。若い子たちから得られる空気は、やっぱり新鮮でおいしい」
:コォラ代表www
:昔の仲間たちは代表と同年代なんだからそこまで年寄りじゃないだろwww
:一緒に配信してる仲間たちから叱られろwww
:確かに年取ったら若い子たちの新鮮な感じは見てて微笑ましいけどもwww
:よし、ここ切り抜いて拡散しようなwwww
:切り抜くなwww
:代表の発言のせいで、昔の仲間たちとの絆に亀裂がwwww
最近になって配信を再開した玲奈のチャンネルでは、伝説のパーティメンバーと呼ばれている昔の仲間たちがよく参加している。同窓会みたいで見てて楽しいと、リスナーからの評価は上々だ。
「まぁミヨリくんとパーティを組むのは、怖くはあるんだけどね。数日ほど悪夢を見るくらい精神に影響が出てしまうが、それでもわたしはミヨリくんのことが大好きなんだ。ミヨリくんのことがほしくてたまらない。だからこうしてミヨリくんの活躍を見るためにやって来たんだよ」
「そうですか」
:ミヨリちゃん塩対応www
:トップクランのクランマスターが雑に扱われてるwww
:ミヨリちゃんへの熱い想いを語ったのにスルーされたなwwww
:パーティを組むのは怖いけど、大好きだからやって来たって、めんどくさいことになってるなこの人wwww
:もしかして代表、ただミヨリちゃんと一緒にいたいから来たのではwwww
:そんなわけないだろっ! 代表は忙しいんだぞ!
:忙しい合間をぬってきたのにミヨリちゃんから雑に扱われてるwwww
:真面目な話、わたしも宮本さんから雑に扱われたいときがあります(先生)
:先生なに言ってんですかwww
:ぜんぜん真面目な話じゃないだろwww
:さらりと自分のヤバイ願望を暴露しないでくださいwww
:小さくてかわいい女の子から雑に扱われたいという先生の気持ちはわからないではない(真顔)
:わかんなwwww
:他にもヤバイ願望の持ち主である紳士がおったwwww
グイグイと迫ってくる玲奈を、ミヨリは適当にあしらっておく。それでも玲奈は構ってもらえたのがうれしかったようで、ニコニコと人懐っこい笑みを浮かべていた。
その一方で、綾乃は小春のもとまで歩み寄っていき声をかける。
「小春。本当にまたミヨリとパーティを組んでもよかったのか? まちがいなく精神にダメージを受けることになるぞ」
「うっ……。た、確かにミヨリちゃんとパーティを組むのは怖いよ。できれば遠慮したい。だけど……」
小春はごくりと喉を鳴らすと、視線を足元に落としてうつむいた。
「…………だよ」
「えっと、すまない。よく聞こえなかった。もう一度言ってもらえるか?」
綾乃は心配そうに小春の顔を覗き込む。
すると小春はガバッと顔をあげてきて、両目を限界まで見開くと、胸のなかに渦巻く思いの丈をぶつけてきた。
「増えるんだよ! チャンネル登録者数と同接がね! ミヨリちゃんとパーティを組んで配信したら、めっちゃ増えるんだよ! わたしがどんなに時間をかけてコツコツコツコツと配信を積み重ねても、ぜんぜん増えなかったのに! ミヨリちゃんと一緒に配信したら、お客さんが一気に増えたよ! 現に今だって普段の配信じゃありえないくらいの人たちが見に来てくれてるよ! あっはははははは! なんだこれぇ? どうなってるの? ちょっと不条理すぎませんかねぇ!」
:オイぶっちゃけすぎだろwwww
:小春ちゃん顔が追いつめられた犯人みたいにヤバくなってるよwwww
:ムラサメちゃんが哀れんだ目をしてて草
:ダメだとわかってるのにギャンブルにハマってやめられない人みたいになってんなwww
:時間を積み重ねてコツコツやるよりも、怖くてもミヨリンと一回パーティを組んだほうがお客が増えるのは事実だからなwwww
:みなさん、これが過程を重視せずに結果だけを追い求めた人間の末路ですwwww
涙目になって不満をぶちまけてくる小春を、綾乃は気の毒そうに見ていた。
「事情はわかったが、それでも怖いのなら無理することは……」
「そうやって心配してくれるのはうれしいよ! うん、ありがとう! ムラサメちゃんはやさしいね! そういうところ大好き!」
小春はコクリコクリと何度もうなづくと、拳を握りながらまくし立ててくる。
「でもわたしだけメンバーから外されて、他のみんなで一緒に冒険しているところを配信で見ちゃったらさ、それはそれで辛くなるんだよ! え? わたしだけスタメンから外された? 戦力外通告! わたしいらない子だった? ってね! アビスソフトのイベントにも呼んでくれなかったし!」
アビスのイベントのことはわたし関係なくないか? 綾乃はそう思ったけど、口にしたら小春を傷つけてしまいそうなので、黙っておいた。
「ゲームでも弱いキャラだからってスタメンから外しちゃうの、わたしアレどうかと思うなぁ! ちゃんとみんな平等に使ってあげなきゃかわいそうだよ!」
「じゃあ小春は、これからも定期的にミヨリとパーティを組みたいってことでいいのか?」
「……え? あっ、いや、そのぉ、それはちょっと精神的にしんどいといいますか……こちらのタイミングで決めさせていただけたらと……」
いきなりしおらしくなった小春は、アハハハと乾いた笑みを浮かべて目をそらす。
:どっちだよwww
:おっと、この子めんどくさいぞwwww
:小春ちゃんは別に弱くはないだろwwww
:小春ちゃんも十分に実力のある探索者のはずwww
:ウザいだけだよwwww
:アビスのイベントに呼ばれなかった理由はウザいからwwww
:アビスのイベントに自分だけ呼ばれなかったの、相当ダメージが入ってたんだなwww
気まずそうに笑っている小春を、湿っぽい目つきで見ていた美鈴は鼻を鳴らす。
「わたし、ゲームの弱キャラは容赦なく切り捨てるわよ。だって足手まといだもの」
「そ、そんなぁ! 美鈴さんひどいですよ! 捨てるんですか! わたしのことも、そうやって捨てちゃうんですか! いらなくなったらポイッしちゃうんですかっ!」
「別にあなたのことは捨てないけど……」
:ツンデレちゃんめんどくさそうwww
:小春ちゃんにからむとめんどくさいことになるwwww
:ごめん、ワイもゲームで弱いキャラはパーティから外しちゃうwww
:ワイもやwwww
:最初は使うけど、強キャラが加入したら外しちゃうなwwww
:一緒に冒険をはじめようと誓い合ったパートナーだったはずなのに、途中で強い仲間が集まってきたら、マッハでパーティから追放したwwww
:おまいらゲームキャラへの愛情はないんかwww 俺も外すけどwwww
:全員ツンデレちゃんと同じじゃねぇかwwww
ヘコんでいる小春を見て、ミヨリは同情する。よっぽどアビスのイベントで展示されていた設定資料やイラストを見たかったんだろうなと、ちょっとズレたことを考えていた。
「小春ちゃん。わたしは弱いキャラでも、ちゃんと使うよ。二周目ならね」
「……一周目から使って」
ウルウルとした目で見つめられる。なぐさめたつもりだったけど、失敗だった。
ミヨリは少しだけ思案すると、今度は素直な気持ちを伝える。
「わたしは、また小春ちゃんと冒険できてうれしいよ。前回は小春ちゃんがいてくれたおかげで、配信が盛りあがったからね。小春ちゃんの存在は、とってもありがたいよ」
「ミヨリちゃん……!」
小春は感銘を受けたように瞳の奥を揺らすと、ミヨリのことを見つめてくる。そして頬をゆるめて、エヘヘヘと笑ってきた。
「えぇ~、もぉう! そんなにわたしのことが必要なら早くそう言ってよぉ! ミヨリちゃんはわたしの価値をきちんとわかってくれてるんだね! やっぱり見る目があるよ!」
自己肯定感が高まったのか、小春は光の速さで上機嫌になる。パチンとウィンクまでしてきた。
……うざい。そう感じたけど、これから一緒に冒険する仲間にそんなことを言ってはいけないので、ミヨリは口を閉ざした。
綾乃、玲奈、美鈴も呆れているが、みんな言いたいことを我慢する。
だけど涼子だけは冷ややかな眼差しで小春を見ながら、ボソリと本音をもらした。
「…………なんだこいつ?」
:腹黒さんwwww
:なんだこいつwwww
:みんなが堪えていたことをハッキリとwwww
:俺もそう思ったけど、さすがに本人のいる前では言えないよwwww
涼子の一言を受けて小春はビクリとするが、自己肯定感が増しているのでへこたれずに笑っていた。




