95
「そろそろ、告知していた時刻だね」
左腕にアームバンドで固定しているスマホを見下ろすと、緊張感がせりあがってくる。
今回の配信もだいぶ話題になっていたから、配信前にも関わらず待機人数がすごいことになっていた。『常闇の迷宮』にもぐったときよりも、たくさんの視聴者が見にきている。
今回は一体どれだけの人たちが集まるのだろうか。
力強く胸を叩いてくる心音を聞きながら、ドローンカメラを頭上に飛ばす。他のみんなも各々のカメラを浮かばせていた。
みんなと視線をあわせると、震えそうな指先でスマホ画面の『配信開始』をタップする。
配信が始まると、コメント欄が大量の書き込みで埋めつくされる。
:新たな伝説の開幕じゃああああああああああ!
:新ダンジョンを攻略しちゃうのかあああああああ!
:ついにミヨリ様が『明星の導き』にやって来たどおおおおおおお!
:ミヨリちゃあああああああああああああああああああああああああん!(大親友)
:ミヨリちゃんミヨリちゃんミヨリちゃんミヨリちゃんミヨリちゃんミヨリちゃん あああああああああああああああああミヨリちゃあああああああああああああああん!(先生)
:うるせぇwwww
:大親友さんと先生うるさいですwwww
:ムラサメちゃん、どうか生きて帰ってきてくれ!(父より)
:おとん推しが娘に滅されないか心配してるwwww
:今回もおとんはミヨリちゃんとムラサメちゃんの配信を二窓で見てるんだろうなwww
:告知してたとおりムラサメちゃん、代表、小春ちゃん、腹黒さん、ツンデレちゃんがおる!
:今回は代表も配信してるんだな!
:六人同時配信か!
:多いな!
無数のコメントが雪崩れ込んできたので、ミヨリはビクッとなった。こればっかりは、何度配信を行っても慣れない。
「み、みんな、ちょっと落ち着こうか」
:出た! ビクッ!
:ビクッってするのかわいいwww
:声震えててかわいいwww
:ミヨリちゃんが落ち着こうねwwww
:ミヨリ様をビクッとさせられて幸せwwww
:よし、ミヨリちゃんのビクッも見れたことだし帰るか!
:まだ帰んなwww
:配信はじまったばっかだぞwwww
:てか同接エグいwwww
:いきなり同接百五十万いってる!
:海外勢もたくさん来てるみたいだ!
:まだまだ伸びるぞこれwwww
「百五十万……!」
初っ端から同接の最高記録を更新していた。そのおかしな数字に、ミヨリは思わずスマホ画面から顔を離して仰け反ってしまう。
他のメンバーたちの配信にも、多くの視聴者が押し寄せてきているみたいで、綾乃もスマホを見て目をまん丸くしていたし、玲奈も「これはすごいな……」と言って驚いていた。
「うへ、うへへへへ!」
スマホを見ている小春が、下手したら通報されかねないほど気持ち悪い笑みを浮かべている。たくさんの視聴者が配信に集まってきたのだろう。
:小春ちゃん笑い方wwww
:いっぱい視聴者が集まってよかったねwww
:でもミヨリちゃんとムラサメちゃんには、同接で圧倒的な大差をつけられてるwwww
:代表の配信にも同接で負けてるなwww
:腹黒さんとツンデレちゃんにも負けてるぞwwww
:このなかで一番人気がないのは小春ちゃんでしたwwww
気持ち悪く笑っていた小春だったが、急にションボリとする。どうやら自分のスマホに表示されたコメントによって、このなかで同接が最も少ないことを知ったようだ。
「あっははは、そうだよねぇ! わたしなんてミヨリちゃんとムラサメちゃんには一生勝てないのにねぇ! それどころか玲奈さんにも、涼子さんにも美鈴さんにも負けてるのにねぇ! いつもより同接が多いからって、なぁにをハシャいでたんだか! ホント勘違いしてて痛いよねぇ、この女はさぁ!」
落ち込んでいたかと思えば、いきなり小春は人格が切り替わったようにニコニコ笑顔を浮かべて、ドローンカメラを見あげる。
:小春ちゃん陰の部分が出てきてるwww
:胸が痛くなるから笑いながら陰になるのやめてwwww
:見ろよ、あの満面の笑顔でのカメラ目線。視聴者にもっと集まってこいって訴えてんだぜ?
:あんな笑顔見せられたら逆に視聴者逃げてくだろwww
ミヨリにも小春の必死さが伝わってきたので、なんだか哀れに思えてきた。
「すごい数になるのは予想していたけど、これはとんでもないわね……」
美鈴の配信のほうでも視聴者が爆増しているようで、スマホを見つめながら息を飲んでいる。
「ミヨリさんとパーティを組んだのは、やはり正解でしたね。これで新規の視聴者もたくさん流れ込んでくるはず。……計画通り」
フフッと涼子が怪しく微笑みながら、邪悪なことを口にしている。
:腹黒さんwwww
:なんて打算的なwww
:だがそこがいいwwww
:もっとツンデレちゃんみたいに素直な反応できないのかよwwww
:くっ、俺たちは腹黒さんの掌の上だったわけか!
美鈴と涼子についても、多くのコメントが書き込まれていく。そのなかには二人のことを知っている視聴者もいるようだ。やっぱり人気がある探索者なんだと、ミヨリは再認識する。




