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腹黒さんと呼ばれていた女の人は、ツンデレちゃんが立ちあがったのを見て唇をゆるめると、改めてミヨリのほうに向き直ってきた。
「配信でミヨリさんのことは知っていましたが、こうして実物を目の当たりにすると、ただならぬ気配を感じますね。こんなに小さいのに」
……身長のことは関係ないと思う。というか最近知り合う人たちには、よく身長のことを言われている気がする。
胸のあたりがモヤッとするが、その不満を出さないように口をつぐんだ。
:ミヨリちゃんwwww
:身長のこと言われて不満そうだなwwww
:小さくてかわいいのにwwww
:本人は身長のこと気にしてるっぽいからwww
:ミヨリちゃんは小さくてかわいくて素敵だよ! 神だよ! 神神神神神神!(大親友)
:ちっちゃくてかわいいいいいいいいいいい! さいこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおう!(先生)
:二人ともうるせぇwwww
:この二人ホントうるせぇなwwwww
千紗と桜葉先生がコメントで荒ぶっている。
左腕のスマホを見下ろしていると、横から視線を感じた。顔をあげて目を向けてみると、ツンデレちゃんがビクリとして肩を竦める。
「あっ、うっ……あっ……」
ツンデレちゃんは言葉をつまらせて後ずさると、目を泳がせていた。
「あ、あなたの、あなたのことは、はは、配信で見て、し、知ってるわわわ!」
なんだか喋り方もおかしくなって、挙動不審になっている。
:美鈴ちゃんwwww
:どうしたツンデレちゃんwww
:なんか美鈴ちゃん様子おかしくないか?
:ミヨリちゃんと出会って、そういう反応になるのはわからないでもないがwwww
:わかんなwww
:逆さ吊りにされちゃったからねwwww
あからさまに動揺していることを、コメントでも指摘されていた。
ツンデレちゃんは落ち着くために深呼吸をすると、何か言いたそうな眼差しでミヨリのことをジーッと見てくる。
……あれ? この人?
ツンデレちゃんの顔を見つめながら、ミヨリは首をかしげた。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。わたしは有馬涼子といいます。それで、そちらの釣りあげられたお魚さんが」
「誰が魚よ。……わたしは明坂美鈴よ」
腹黒さんこと涼子が自己紹介をすると、それに続いてツンデレちゃんこと美鈴が不機嫌そうに名乗ってくる。
「宮本ミヨリです」
こっちも自己紹介をして、軽く頭を下げておく。
「二人とも、わたしのカメラに映り込んでますけど、大丈夫ですか?」
「それについては問題ありませんよ。わたしたちのカメラでも、ミヨリさんのことを映していますしね。いいですよね、美鈴さん?」
「えぇ、構わないわよ」
そのへんに関しては、涼子も美鈴も気にしてないようで了承してくれた。ミヨリも他の探索者のカメラに映されることには抵抗がないので、問題なかった。
:この二人って、どういう探索者なの?
:知ってる人いる?
:二人とも結構人気あるし、実力も相当だよ!
:戦鎚を背負っている女性は有馬涼子。パワーを活かした前衛での戦いを得意とする。視聴者からは腹黒さんの愛称で呼ばれて親しまれている(父より)
:……え?
:ん?
:お、おとん?
:腰にダガーを下げている女性は明坂美鈴。素早さを活かした近接戦を得意としていて、視聴者からはツンデレちゃんの愛称で呼ばれている(父より)
:二人ともかつてはクランに所属していたが、現在は脱退して個人で活動している。二人でパーティを組んで一緒に配信を行うことが多い(父より)
:ちょっwwww待てwwwwww
:待ってwwwww 頼むからちょっと待ってwwww
:なぜにおとんがそんなに詳しいんだよwww
:いきなりおとんがスラスラ説明しだしたwww
:おとん出てきて説明はじめたから吹いちまったよwwww
:いきなり出てきて笑わせるのやめてくださいwwww
:お父さんはムラサメちゃんのことを調べるうちに、探索者やダンジョンについて詳しくなりましたwwww(母より)
:マジかよwwwww
:おいおいwwww
:ていうか娘のことじゃなくて、推しのことを調べて詳しくなったんかいwww
:そこは娘のことであれよwwww
:おとんどこに向かってるんだwww
:娘と推しに人生を狂わされたおとんwwww
:娘と推しに人生を狂わされたってなんだよwwww
「なるほど」
書き込みを見て、涼子と美鈴についての情報を知ることができた。でも説明してきたのが茂則だったので、多くの視聴者がザワついている。
「どうやら二人のことは、わたしよりも、わたしのお父さんのほうがよく知っているみたいです」
「……なにを言ってるんですか、あなたは?」
「この子、配信で見ていたとおりヤバイわね」
:さっそく二人を引かせるミヨリちゃんwwww
:言ってることが意味不明すぎるwwwww
:二人からしたら、なんでお父さんのほうが詳しいのか理解不能だろwwww
:さすがだね、ミヨリちゃん!(大親友)
:宮本さん。会話をするときは、ちゃんと相手に伝わるように話さないといけませんよ。でも先生はミヨリちゃんのそういうところもだぁいしゅぴなのおおおおおおおおおお!(先生)
:先生wwww 注意してるのか、ホメてるのかどっちなんですかwwww
:先生は途中で人格が入れかわったんだよwwww
事実を伝えたら、なぜか涼子と美鈴を戸惑わせてしまった。




