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底辺配信者だけどダンジョンで人気探索者を助けたら、なぜかやべぇ女として大バズりしてみんなから怖がられている  作者: 北町しずめ


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 休日の昼下がり、ミヨリはいつものように黒いローブを着てダンジョン配信を行っていた。


 浮遊するドローンカメラが映し出すミヨリの表情は真剣そのもので、物思いにふけっている。


「グギアアアアアッ!」


 前方の暗がりから、翼の生えたコウモリのようなモンスターが突如として現れると、考えごとをしているミヨリに襲いかかってきた。


 ドゴッ! ビシャッ!


 だが、ミヨリが放ったデコピンによって瞬殺される。


:追加階層の強敵と呼ばれてるカーネイジヴァンパイアが相手にならねぇwwww

:おかしいな? このまえコイツと遭遇して、パーティの総力をあげて戦っても勝てないから撤退したんだけど……

:ミヨリちゃんと自分を比べるんじゃない! 頭おかしくなるぞっ!(真顔)

:ミヨリちゃんしゅごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい(大親友)

:あああああああああああああああああああ! ミヨリちゃん強すぎだよぉおおおおおおおおおお! しゅぴしゅぎゅるううううううううううううう!(先生)

:今日も大親友と先生うっせぇなwwww

:ミヨリちゃん追加階層も変わらずにマッハで突き進んでいってるwwww


 左腕に装着したスマホの画面に、コメントが高速で流れていく。それが目につくと、ミヨリは我に返った。


「……今は配信に集中しないとね。明日のことで頭がいっぱいで、適当にモンスターを片づけちゃったよ」


:適当に片づけたってwwww

:もっとちゃんとモンスターと向き合ってあげてwwww

:モンスターかわいそうwwww

:カーネイジヴァンパイア涙目wwww

:今日はミヨリちゃんボーッとしてることが多いなwwww

:ボーッとした状態でモンスたちを虐殺してますwwww

:これはこれでおもしろいがwwww

:ていうか同接が五十万いってるwwww


 ビクッと身体が震える。


 スマホを確認してみると、いつの間にか同接が五十万に達していた。


 伝説のダンジョンと呼ばれる『常闇の迷宮』を攻略したことで、チャンネル登録者数は300万人までふくれあがって、ミヨリの人気はさらにはね上がった。


 もう普通に配信するだけで、同接が十万超えするのは当たり前になっていて、感覚がおかしくなりそうだ。


 ミヨリは軽く首を振って、気持ちを静める。


 ダンジョンの奥に歩みを進めようとするが……。


「…………」


 ぴたりとミヨリは立ち止まった。


:ミヨリちゃん?

:どうしたの?

:急に黙り込んじゃったけど?


 展開していた感知スキルに何かが引っかかる。


 ミヨリは足元の影から触手を生やすと、前方の暗闇に向けて伸ばした。


「ひぃっ……!」


:触手!

:すごいスピードで触手が伸びた!

:なぜに触手を!

:なんか悲鳴が聞こえたぞ!


 手応えを感じると触手を収縮させていき、暗がりのなかから引きずり出す。 


 触手が捕らえたのは……女の人だった。亜麻色のセミロングの髪に、凜々しさのある端整な目鼻立ち。細身の身体には黒の革鎧を装備していて、鞘に収まった二本のダガーを腰の左右に下げている。


 年齢は二十代前半くらいだろう。


 引きずり出された女の人を追跡するように、ドローンカメラが暗がりから出てきた。どうやら同業者のようだ。


 触手が片足に巻きついて宙で逆さ吊りになっている女の人は、おびえながら手足をジタバタとさせている。


:なんか釣れたwww

:フィィィィッシュ!

:女!

:女だ!

:女だぞ!

:女ッッッ!

:ここに女がいるぞ!

:女の探索者だぁ!

:グヘヘヘヘ! ついてるぜぇ! まさか女が釣れるだなんてなぁ!

:山賊さんがわんさか湧いてて草

:ツンデレちゃんじゃねぇかwwww


「あ、足に、足に巻きついて……!」


 よっぽど触手の感触が気持ち悪いのか、逆さ吊りになった女の人は声を上擦らせる。


 ミヨリはそれには取り合わずに、前方に視線を向けた。


「まだもう一人、いますよね?」


 ミヨリが呼びかけると、逆さ吊りになっている女の人はゾクリとして身震いした。


 目の前にある暗がりからも、息を飲む声が聞こえてくる。


 そして足音がこちらに近づいてきた。


「バレていましたか。さすがはミヨリさんですね」


 観念して姿を現したのは、長い黒髪の女性だ。肌が白くて、きれいな顔立ちをしている。


 修道服っぽい白と黒の色調が合わさったローブを羽織っていて、その上から軽装鎧を装着している。おしとやかな雰囲気をまとっているが、それとは対照的に背中には大きな戦鎚を背負っていた。


 年齢は逆さ吊りになっている女の人と同じで、二十代前半くらいだ。


 黒髪の女の人のそばにもドローンカメラが浮遊していて、同業者であることが見て取れた。


「モンスターの悲鳴が聞こえてきたので、美鈴さんに偵察に行ってもらったのですが……おもしろいことになっていますね。美鈴さん、釣られたお魚さんみたいですよ」


「う、うるさいわね!」


:腹黒さんだ!

:ツンデレちゃんと腹黒さんじゃん!

:ツンデレちゃんいたから腹黒さんもいると思ってたぜ!

:確かにツンデレちゃんお魚さんみたいになってるがwwww

:カーネイジヴァンパイアの悲鳴が聞こえて警戒したのかwwww

:偵察に行った先に待っていたのはモンスターよりも恐ろしい存在でしたwwww


 コメント欄に二人のことが書き込まれていく。どうやら亜麻色の髪の女性はツンデレちゃんと呼ばれていて、黒髪の女性は腹黒さんと呼ばれているようだ。   


「ところで美鈴さんは、そのままで大丈夫でしょうか? わたしはそのままでもいいと思いますが」


「いいわけないでしょ! 早くどうにかしなさいよ!」


 ツンデレちゃんが怒気をふくんだ声をあげて、乱暴に手足を動かしてくる。とても活きがいい。本当に釣りあげた魚みたいだ。


「というわけですので、下ろしていただけたらと。まぁ無理にとは言いませんが」


 ……たぶんこの人、性格ゆがんでる。ミヨリはそう確信すると、触手を操作してツンデレちゃんをそっと地面に下ろした。片足に巻きつけていた触手を外していき、影のなかに引っ込める。


 触手から解放されるとツンデレちゃんは胸に手を当てて、フゥと息をついていた。立ちあがって革鎧についた砂埃を手で払うと、ムッとしながらミヨリを睨んでくる。


:今回はミヨリちゃんが告知なしでダンジョンにもぐったから、二人ともエンカウントしちゃったかwwww

:あらかじめ知ってたら避難してただろうなwwww

:ミヨリちゃんが告知なしで配信すると、遭遇する危険性があるwww


 なんだかコメ欄では、ミヨリが危険生物のような扱いを受けている。ちょっと不服なので、ムムッと唇を曲げる。


 だけどこの二人と出会ったのは、コメントに書かれていたように告知なしで配信を開始したからだ。事前に告知していたら、大半の探索者はミヨリと出会わないように逃げ出している。





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