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第二話 零影隊

 道を抜けた先に、古びた一軒家が一つ。

 ただの木造の家なのに、空気が異様だ。


 胸の奥がざらつく。


 耳を澄ます。


(……静かすぎる)


 鳥も、虫も、人の気配すらない。


 まるで時間が止まっているみたいだった。


(……おかしい。殺人現場なら警察が張ってるはずだろ?)


 規制線も、パトカーも、何もない。

 ただ目の前の古びた家だけがポツンと取り残されていた。


 次の瞬間、背後で「カタン」と何かが落ちる音。


 視線を感じ、振り返る。


 誰もいない。


 喉が乾き、心臓が速く打つ。


「……気のせい、だよな」


 その瞬間――頭を殴られたような痛みが走った。


「……っ、ぐ……!」


 視界が歪み、膝をつく。


 頭を抱えたまま、ふと顔を上げた。


 暗い二階の窓。


 そこに、“何か”が立っていた。


 人の形をしている。


 けれど、人ではない。


 ただ、こちらを覗き込む“影”だった。


 ーーー誰かいる。


(家主は死んだはずだ……野次馬? いや、中に入るわけが……)


 思考が空回りする。


 その時、影の中にボーッと浮かび上がった目が泰平を捉えた。


「ヒッ……!!」

 泰平はその目とガッツリ目が合ってしまった。


 ここにいてはいけない。


 泰平は震える足を無理やり動かし、その場を去った。



***



 駅まで全力で走った。


 息が切れる。

 足も震える。


 電車に乗り込むと、帰宅ラッシュで人が多く、少しだけ安心した。


 しかし、扉が閉まると同時――“何か”がホームに現れた。


 黒い影が、睨みつけるかのように目だけがこちらを覗き込む。


 思わず声が出そうになるが、電車の雑踏に紛れて気づかれないことを祈る。


(まさか、追ってきたのか…!? ていうか、周りの人、全く反応が無い……! 見えていないのか!?)



***



 同時刻、泰平が訪れた古びた一軒家の前に人影が一つ。


【報告、例の現場だが悪霊は不在。至急、現在地の特定を求めます】

【了解。暫しお待ちください】


「不味い…急がなければ…! このままでは大変なことに…!」



***



 最寄駅に着くと、全力で家まで走った。


 玄関を開け、全速力で階段を駆け上がる。


 母の声を無視し、部屋に飛び込み、鍵を掛ける。


 息を整え、深呼吸をする。

 部屋の窓やベランダに目をやる。


 気配がする――そこに何かいる。


 呼吸が早くなり、心臓の鼓動が早くなるのが分かる。


 意を決してベランダのカーテンを開ける。



「なんだ…カラスか…」


 その瞬間、人生で最大の恐怖と緊張から解放され、膝から崩れ落ちた。


(よかったぁぁ…)

 そう思い安堵した時、ガシャン!と何かが割れる音と共に、母の悲鳴が突然、家中に響き渡った。


 嫌な予感がする。


 その瞬間、またしても頭を殴られたような痛みが泰平を襲った。しかし、今はそれどころじゃない。


(まさか…まさかまさか…!父さん、母さん!無事でいてくれ…!)


 泰平は階段を急いで駆け降り、音がしたリビングの扉を開ける。


 飛び込んできた光景に泰平は絶句した。


 そこにあったのは、既に事切れている父の姿。


 そして――母の体に絡みつく“何か”。


 今までははっきりと見えなかったが、今は分かる。


 全体が黒いモヤに包まれ、手足の輪郭はぼんやりとしか見えない。


 性別もわからず、鼻は潰れ、口は異常に大きく裂けている。


 その姿は、人間というより化け物――


 “何か”は母の口元に顔を近づけ、母の口から青白いモヤのようなものを吸い取る光景に、泰平は息を呑む。


「……やめろ……やめろぉぉぉ!!!」


 必死に叫ぶが、声は届かない。


(足が…動かない…! なんで……なんでだよ!)


 必死に足を動かそうとするも、動かない。

 まるで、足が拒否しているかのように。


(早く…! 動いてくれよ! じゃないと、目の前で…! 母さんが…!)


 その瞬間、"何か"が母の口からモヤを全て吸い終えた。

 そして母は糸の切れた人形のように倒れた。


「……あ……ああ……あああああああ!!!」


 涙が止まらない。喉が裂けるほど絶叫する。


 その瞬間、“何か”がこちらを向いた。


 息が止み、足がすくむ――口元はありえない角度まで吊り上げられ、首を90度に曲げ、歪んだ笑みを浮かべている。


 そして――泰平に向かって襲いかかってきた。


 体が硬直した。泰平は完全に動けなかった……


 その瞬間――リビングの窓ガラスが弾け飛ぶ。


「――ッ!」


 入ってきたのは一人の男だった。


 男の黒い影が盾のように形を変え、男の手に広がった。




 男はそれを前に構えながら突進

 “何か”を突き飛ばした


 突き飛ばされ、体勢を崩すが、すぐに体を反転させ、その男に襲いかかる


 男の表情は微動だにしない


 次の瞬間、手元から放たれた炸裂弾が――

 “何か”の顔面で弾けた


 爆発の閃光が直撃し、悪霊の顔が焼ける


 “何か”が悲鳴をあげ、背を向けた

 逃げようとするその背に、男が黒いナイフを突き立て、切り裂いた


 鮮血が舞う


 “何か”は絶叫し、黒い霧となって掻き消えた




 あまりの光景に、泰平は声を失っていた。

 男に震える声で問いかける。


「……あ、あんた……何者なんだ…」


 男は顔に付着した血を拭いながら振り返り、言った。


「――零影隊れいえいたいだ」


 その言葉を最後に、泰平の日常は完全に終わった。



「悪霊」


 普通の人間には視認すら出来ぬ存在――

 人を襲い、その命を脅やかす

 彼らはなぜ生まれ、なぜ人を襲うのか――


 それは"カミ"のみぞ知ること


 少なくとも、今のところは……

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