その4
「よっしゃ、じゃあ行こうかね!!」
武人、いや折山さんと、渡辺さんの準備が整い、俺たちは扉の前に集まった。
この目の前の大扉を開ければ、もうそこは戦場に近い状態になっているだろう。
「準備は大丈夫そうですか?」
「あ、はい」
言われて、改めて装備を確認する。といっても、俺の装備は前回から大きく変わってはいない。
例のナイフが数本と、替のカートリッジにスタンガン。
前回はロープからの電流で足止めしたが、今回はそれができない。そのため、ナイフで物質を送り込んだ後は、スタンガンを浴びせる戦法で行くことになった。
「基本的に戦うのは俺たちが『めいん』だからな」
「戦術としては、まず俺が奴らの目潰しを行います。そこに須野さんの足止め、止めは折山さん、というのが基本戦術になります」
大丈夫、そのことは頭にたたき込んだ。特に難しくもないはずだ。
「じゃあ改めて。行くぜ!!」
言って、折山さんが扉を押し開く。それと同時に、俺たちは外へと駆け出した。
ーーー
「静也、目を頼んだ!」
「了解です!!」
折山さんと渡辺さんの連携は、正直言ってかなりすごい。俺たちとは違い戦うことに慣れているのか、動きに全然迷いがなく、あっという間にドラゴンどもが倒れ伏していく。
今もまた出会い頭に、ドラゴンの目が渡辺さんによって潰される。
「よし、次頼みました、須野さん!!」
「っ!」
返事もできないまま、俺はドラゴンに食らいついた。そこまでしないと二人にはついていけない。
それでも、決定的な事まではできないのだから、悔しい限りだ。
「いいぞ、その調子だ!!」
折山さんの声が少し遠くに感じる。
違う、全然いい調子じゃない。
足はまだ重いし、腕も頭も、うまく働いていない。それでも、なんとかナイフを突き立ててスイッチを押し込んでいく。
ぷし、と音を聞くか聞かないかの内に、今度はスタンガンを当てスイッチを押し込む。
バヂっ! と今度は少しばかり派手な音が鳴る。ドラゴンの足が鈍った。あとはーー
「後は、任せろ!!」
器用に体を駆け上がっていく。そうして、一息に頭の上にたどり着くと、二刀を突き込んだ。
ずちゃっ!
肉を引きちぎったような音ともに、一本が頭を貫通し、口内からはその刃が見え隠れする。
そうしてもう一本からは。ぷし、と聞き慣れた音。
「っと。こんなものか」
「お疲れ様です」
ズダン!!
そんな音を鳴らしながら、ドラゴンの頭が地面に着く。
その横に、降り立った折山さんに、渡辺さんが走り寄る。そんなふうに、俺たちは奴らを撃退していった。
「しかし、ようやくこのあたりも静かになってきたな」
「そうですね。ただ……」
「ああ。静かすぎる」
言って周りを見渡す折山さん。それに合わせるように俺も周りを見渡してみるが、怪しいものはもちろん、動く影すらも発見できない。
精々が瓦礫と、それが形作る影が見えるぐらいだ。
「気にしすぎか…?」
「どうでしょう」
折山さんの言葉に、肩をすくめて渡辺さんが返す。
「ナツメさん、そちらからはどうですか?」
『ああ、こちらからも反応は消えている。が、一部に電波の障害があるみたいでな。済まないがもう少し当たりの警戒を頼みたい』
どうやら、一応片がついたらしい。
それでもまだ、警戒を解くわけにはいかないようだが…。
「了解しました。……ただ、ちょうどいいタイミングです。ここらで一度一休憩としましょう」
そうしてそのまま、腰のポーチから、何やら缶を取り出した。
「非常用の物ですが…ないよりはマシでしょう。こちら、水です」
「ありがとう、ございます」
受け取って、開ける。ぺきょ、と独特の音を立てて開いたそれに、早速口をつけた。
「おや、そんなに喉が乾いていましたか?」
口をつけてからようやく、喉が乾いているのを自覚する。渡辺さんの声でようやく気がついたが、無意識のうちに缶の中身は半分ほどまで減ってしまっていた。




