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ファンタジーハンター  作者: Who
歴史を回す者
29/49

その3

「ナツメさん! これは!?」


がたっ、と音を立てて渡辺さんが立ち上がる。その質問には答えないまま、ナツメは現状の確認をし始めた。

モニターには、もすごい勢いで動く点が複数。それも、一直線にこちらに向かってきている。


「空から接近する生物多数……、反応からドラゴンだと推測できます!!」

「高度、下がり始めてます!! コンタクトまで3、2、1……」


ぜろ、とカウントダウンがいうのと同じタイミングで、シェルターそのものが揺れる。それも一度じゃない。二度、三度と揺れ続ける。立っていられないほどの揺れじゃないけれど、それが一向に治らない。ついで、上からは、重圧。


「ぁ、ぐ…」


何もないはずの頭上に、突然重りが出現したようにさえ感じる。足がふらつき、頭は揺れる。そうして、いつの間にか、俺の体は地面に手をついていた。ーーと、そこに手が差し伸べられる。


「どうした、裕二。情けねぇぞ」

「立てますか?」


手の主は渡辺さん。そしてその側には武人の姿もあった。二人とも、揺れも重圧も感じていないように、平然としている。


「ありがとう、ございます」


ぱし、とその手を掴み体を起こす。未だ重圧は消えていないが、一度立ち上がれば少しマシになった。


「…っく! 『桜花戦線』、動けるものは市民の安全を確保しろ!! シェルターの奥に避難させるんだ!!」


こちらもなんとか立ち上がったナツメが、マイクに向かって叫ぶ。その声に、廊下からは誘導を促す声が聞こえ始める。少しもすれば、その声と足音は遠ざかっていった。


「これで、一旦はしのげる。後は上の連中だが……」


珍しくナツメが口籠る。だが、少し考えれば、それも納得だ。

前回は一応の作戦があった。が、今回はそれすらない。そんな状況で奴らに対抗できるのか、そう考えているんだろう。

そこに言葉を投げ込んだのは、武人だった。


「それなら、俺たちに任せてもらおうか」

「っ! それは、ありがたいが…いいのか?」

「困った時はお互い様だ。な、いいだろ? 静也」

「はいはい、そう言うと思ってましたよ」


ため息をつきながらも、渡辺さんもそれに倣う。が、その体は自然体そのものだ。突然襲われたというのに、一切の緊張がない。


「わかった。なら、足止めはこちらが担当する。二人は今すぐ必要な準備をして、戦闘を開始してくれ」


手段があった場合の、ナツメの判断はやはり早い。あっという間に、方針を大まかに決定し、二人にそれぞれインカムを渡した。

それを受け取った後、思い出したかのように俺の方に向き直る。


「そういうわけだ。これから、俺たちはあのドラゴンどもとらんでぶーかますわけだが……お前さんも来い」


そうして、そんなことを宣った。


「ちょ、折山さん!? 急に何言ってるんですか、危険ですって!!」

「これから先、俺たち二人で全国のドラゴンを殺して周るわけにもいかんだろ。若い力は多いに越したこたぁない」

「……私も反対だ。そいつはまだ、回復しきっていない。危険すぎる」


ヘラヘラとした声を出しながらも、その顔は真剣そのものだ。この人は、冗談を言ってるわけじゃない。


「もちろん、無茶はさせない。が、これぐらいの危険は渡っておいた方がいい。それこそ、現状をどうにかしたいって思うのなら、これは絶好の機会だ」


二人に反対されてもなお、武人はそう言う。相変わらず、真剣な顔で。

その顔につられるように、俺の口からは自然と言葉が漏れた。


「……正直、俺には現状をどうにかしたい、とか他の人を守りたい、とかはまだよくわかりません。けれど、それが俺にできることなら、やってみせます!!」


そうだ、俺は白奈の敵を…。そのためにもこの機会を逃すわけにはいかない。

俺の頭上にかかっていた重圧は、既に消えて無くなっていた。

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