その2
「始めまして」
「ええ、お待ちしてました」
数日後、『桜花戦線』に二人の客人がやってきた。以前に、俺たちに会いたいとメッセージを送ってきた人達だ。
「折山光だ。で、こっちのがーー」
「渡辺静也です」
「『桜花戦線』の代表をやっています、ナツメです」
お互いが名乗り合い、そうしてようやく、ナツメの後ろにいた俺たちに視線が向いた。
「それで…そちらの人が?」
「ああ、そうですね。紹介しましょう。この二人が、我々の『ドラゴンを倒した者』です」
「なるほど、お前さんらか。ドラゴンを殺したってのは」
じろり、と無遠慮な視線が投げられる。視線の主は確か、さっき折山光、と名乗った方か。
鍛えられた筋肉と、大きめの体躯から来るイメージは、武人、とでも言うべきか。
対して隣の、渡辺と名乗った方は、俺たちと背丈があまり変わらない。年齢も同じか、少し上と言ったところだろうか。
「いい顔つきだ。お前さん、名前は?」
「須野裕二、です」
「お前さんは?」
「マークっす」
俺たちの名前を聞き、尚もじろじろと視線を上下させた後。にやりと、その武人は破顔した。
「なるほど。二人とも、いい目をしている」
「……驚かないんですね?」
「驚く? 何にだ?」
「俺たちが倒した、ってことにです」
「ああ、そのことか。確かにお前さんたちを初めに見た時はまさか、と思ったさ。が、これだけ地上に不思議なことが起こりゃあな。それぐらい、不思議でもなんでもなくなるさ」
ガハハ、と大声で笑う武人に、若干気圧される。ちらりと、武人の隣をみると、疲れたような顔をしている人が一人。なんだか、この二人の関係性が見えてきたような気がする。
「ま、それ含めて話をしようじゃねーの」
「ええ、そうしましょう。ではこちらへ」
二人を奥に案内するために、ナツメが振り返る。そのナツメの背中に、武人が声をかけた。
「と、待った。ナツメさん、って言ったか? あんた、普段はそんな喋り方じゃないんだろう? 普段どうりで頼めるか」
「ちょ、折山さん。流石に失礼ですって!」
「…驚いた。まさか見抜かれるとは。…いや、ならば楽にさせてもらおう」
そうして改めて、ナツメが歩き出す。
俺たちはその二人をつれて、シェルターの作戦室までやってきた。
当然、現状応接室なんて作る余裕はないから、どんな客人が来ようと、案内するのはここしかないだろう。
それぞれが席についたところで、最初に口火を切ったのは、武人。
「さて、んじゃまずは聞かせて欲しい。お前さんたち、裕二とマークつったか。二人は、ドラゴンを傷つけることはできたか?」
「え、っと?」
言葉はわかる。が、質問の意味がわからないとはこのことだろう。
突然のこともあってか、俺も、隣に腰を下ろしたマークも言葉に詰まってしまった。
「折山さん、それじゃ流石にいきなりすぎますって」
ちょいちょい、と武人の袖を引きながら、渡辺さんが注釈を入れてくれる。
それを聞いてようやく合点がいった。
「ドラゴンを直接傷つけられる人と、そうでない人がいる、ですか」
「その通りです。僕たちの中では、僕と、この折山さんしかいませんでした。他の方は、どうあっても傷つけられないようで……」
「それは、えーと。同じ武器を使っても、ってことっすか?」
「はい。そもそも、僕たち二人と、他の方の武器は特に変わりないんです。それなのになぜか僕たちだけが傷をつけることができました。お二人はどうです?」
「俺は…、ナイフを突き刺すことができました。でもそれはーー」
「いやでも俺は突きさせてないんすよね。なぜだか弾かれてしまったっす」
マークも同じ、と言おうとしたところで、本人から遮られる。それも否定の形で。
が、確かにそうだ。言われてみれば、マークのナイフは未使用だった。それに、刺したのなら地面に落ちているわけがない。
「そうですか。ではやはり、何か法則のようなものがあるのでしょうか…?」
「それは、こちらでは初耳だ。が、確かにその話を聞く限りでは、その説明も頷ける」
「ナツメさん。他にこの『桜花戦線』で傷をつけた人はいませんか?」
「すまないが、わからない、というのが答えだ」
「ですよね……」
話が止まってしまったので、その法則についてはまた考える、ということになった。データが少ない今の状況では、それも仕方ないことなんだろう。
そうして次は検体の話に、というところで、非常事態をしらせる放送が、地下シェルター全体に鳴り響いた。




