タバコは恐らくもう買えないんだよ!
ゴブリンキングを葬り去った俺は、腰を抜かして立ち上がれなくなっているジラの元へと向かって歩き、手を差し伸べた。
「おーい、大丈夫か?」
「えっ、あ、ええ。大丈夫よ」
「そうか。なら良かった。スライムってどこに置いたっけな?」
確かこの辺の茂みのはずだが………あ、いたいた。
「キューー!!」
「よしよーし。お前相変わらず丸っこいなあ!もっと痩せろ!」
「…………ねえカイト」
「ん?どうした?」
ジラに呼びかけられたので振り向く。
不安そうな声だった。
恐らくあのことだろう。
「さっきのアレは………一体何?」
「…………」
「私を吹っ飛ばして、ゴブリンキングの棍棒にあなたが頭から激突したのを、私はこの目ではっきりと見た」
「……そうだろうな」
「凄く、嫌な光景だったわよ。カイトの頭が潰れてたんだから。
私のせいで死んじゃった、と思ったわ。
でもその少しした後に、首からメキメキと変な音をたてながら皮膚が再生していって、あなたは息を吹き返した。私は頭の理解が追いつかなかったわ」
「………そうか」
「この質問をして、私はあなたとの今後を決める。質問の答えによっては………」
彼女が少し言い淀む。
「あなたを、殺すことになるわ。」
「………なるほど」
「では正直に聞くわ。あなたは、本当に人間なの?」
ジラが夕日の逆光を背に浴びながら構えた。
だがその構えたはずの脚は震えており、瞳も少し我慢するかのように潤んでいる。
これを見ると、彼女は今精神状態がおかしくなっているのが、すぐに理解できた。
良く考えればそりゃそうだ。
短い付き合いだが自分を助けてくれた存在が、人間じゃないかもしれないんだからな。
この状況だと俺がどんなに弁明したとしても、あまり意味はないだろう。
かえって不審になるだけだ。
「………俺は、れっきとした人間だよ。さっきのことは、俺にもよく分からん。
さて、言えるのはここまでだ。
この答えが嘘か本当かを選ぶのは、ジラ、君自身だ。でも、もし嘘だと思うのなら、俺だって容赦はしないぞ」
「………はぁ〜〜っ」
ジラが深くため息をつく。
「分かったわ。私を助けてくれた人を怪物扱いしたくないのもあるけど、1番はあなたを私は少しだけど信用してるっていうことよ。でも、もしまた変なことをしたら、叩き潰される気持ちでいなさい」
「わかったわかった。よーしそれじゃ、ゴブリンキング討伐の証でも持って帰ろうぜ。ジラも疲れただろ?」
「………そうね。あなたの疑いも晴れたことだし、ゆったり帰りましょうか!」
…………こいつ、無実の俺が言うのもなんだが、チョロくね?
俺はそれを頭の中で思いつつ、ゴブリンキングの角を証拠として2本へし折り持ち帰ることにし、帰る途中でジラに角でふざけて呆れられたりもしながら、無事にギルドへと帰った。
俺らはギルドから帰って、金貨3枚を報酬として貰うと、ジラに「あなたが倒したんだから2枚貰いなさいよ」と言われたので2枚貰うことができた。
その後、ギルドに無料と書かれ置いてあった謎の財布っぽい物に金貨を入れ、今後の事に思いを馳せてニヤリと笑うと、隣にいたジラが凄く嫌そうに顔をしかめた。
「キモいわよ」
「うえーん。言葉が鋭いって」
「全く悲しんでない泣き真似やめなさい。もっと言葉を鋭くするわよ」
「キモいより上の鋭い言葉なんて何言われるんだよ」
「死になさい」
「くっ……う……う(泣)」
「本物に寄せた泣き真似もしないの。あなたはこんなことでは泣かないでしょう」
「チッ………」
「急に態度を悪くしない!」
「だってさあ……いてっ!」
男が急に肩にぶつかってきた。
しかし当の男はその事を謝りもせずに、再び走り出してどこかへ向かっていった。
「もう、なんで謝らないんだ最近の若者は。走る道に立ってた俺の方が悪いってか?」
「あなたはまだ若者の部類でしょうが」
頭の中でイラつきながらも、俺はジラとの会話に再び集中しようとした………が。
「ん?」
胸ポケットに変な感覚を感じた。
なんだか、いつもそこに入っているものが無くなっているような、そんな感覚があった。
もしかして。
俺は胸ポケットの中に手を突っ込む。
「やっぱり」
俺は周りの地面を見渡す。
案の定タバコはない。
「ん?どうかしたの?」
「キュイ?」
「いや、なんでもないさ。突然悪いが、スライムよ。またタバコ吸いたいか?」
スライムは深く頷いた。
なんだか見た目は違うがニコチン中毒のおっさんみたいだ。
まあそれが俺なんだけど。
そんなことはどうでも良くて。
「ごめんジラ、先に宿屋行っといてくれ」
「どうしてよ」
「用事ができちまって」
「そうなの?ちょっとおかしな様子だったけれど。本当になんでもないの?」
「ああ、本当になんでもないさ。すぐに終わるから、安心しといてくれ」
「…………わかったわ」
そう言うと、ジラは少し訝しげな目つきをしたが、しぶしぶ先程見つけた宿屋の方向へと向かっていった。
「………さて」
あの男が走っていった方へ向かわなければ。
ああやばい、無性にタバコ吸いたくなってきた。
早く終わらせて吸わないとな。
俺はスライムを連れ男が向かっていった方へ身体を向け、走り出した。
「あの男め、どこ行ったんだ?確かにこの方向へ行ったはずだが」
あれから5分ほど経った頃、俺はスライムと共に森に入って男を探していた。
一向に見つからない。
このままではタバコが吸えなくなって発作が起きてしまう。
その発作は、1年ほど前に1度だけ起こった。
俺がターゲットを発見した直後にターゲットが姿を消し、いくら探しても見つからなさすぎてストレスが溜まったためタバコを吸おうとした所、なんとそのタイミングでタバコを切らしてしまった。
その後再び見つけたターゲットを殺した後に我慢出来なくなって起きてしまったんだっけか。
あと数分でもタバコを吸えていなかったら死んでたかもしれない。
嫌な思い出だ。
俺が昔の事を思い出して悶々としていると、スライムが急に一方向へ走り始めた。
「あっ!?どうしたんだスライム!?」
俺も急いで走りそれに並走する。
その時に見たスライムの顔は、飼い主の役になんとか立とうと奔走する飼い犬のようだった。
1分ほどそうやって走り続けていると、目の前に突然、人工的に森を切り開いたような少しだけ広い平原に出た。
そしてその平原の真ん中に、大きな家が建っている。
家といっても、本当にボロボロだ。
家の周りには草が生い茂っており、かろうじて見えるガラスがあったのであろう箇所は、中から板が貼られ完全に見えなくなっていた。
明らかに人がいそうな感じではない。
しかし、スライムは初めて会った時と同じような目でその家を見つめている。
しばらく入ろうか迷っていると、家の電気がついた。
つまりは人がいるということだ。
しばらくすると、家から大人数で騒ぐような音が聞こえるようになった。
なんかイラついてきたな。
人のもん盗っておきながら家でどんちゃん騒ぎか。
この感じだとあの俺のタバコを盗ってった男はまあまあな悪人だろう。
あいつには少し悪いが、どうやらボコボコに粛清しないといけないみたいだ。
それにもし殺すようなことになったとしても、抵抗はない。
なんせ元殺し屋だからな。
さて、久しぶりにいっちょやりますか。
…………そういえば今着てるコート、結構血がついてるな。
威圧とかもできそうで面白い。
「………10分くらいで、終わるかなあ?」
俺とスライムはボロボロの家に向かって、歩を進め始めた。
日曜日投稿出来なくてすいません!
許してください何でもしますから!
シルバーウィークは4話以上投稿を目指します!




