町の探索
無事に山から降りてきた俺たち1人と1匹?は、とりあえず町を探索することにした。
スライムが隣でぴょんぴょん跳ねながらついてきているのを確認しながら、周りを見渡す。
「おぉ、あれ凄くね!?ファミレスみたいなやつあんじゃん!」
「キュイッキュ!」
「ああそうだこいつファミレス知らねえし人間でもねえわ」
というか、周りの人達に比べて俺の服おかしくね?
男性はタキシードみたいなの着てるし、女性はしっかりとオシャレを味方につけている。
それに比べて俺は茶色のカジュアルパンツに「らりるれロールケーキシロップ」って刺繍されてる謎のTシャツに黒コートだぞ!?
周りの人達はもちろん俺を奇異な目で見てるし!
「……はぁ」
それに、スライムと一緒に歩いてる奴だっていない。
いやモンスターと一緒に歩いてる奴はいるにはいるんだが、隣で歩いてるのは大抵めっちゃ強そうなモンスターなのだ。
こんなレベル1のスライムみたいなのと一緒に歩いてる奴はいない。
「キュキュッキュ!」
「………まあ、可愛いからいいか。タバコ吸うか?」
「キュ!」
「はいよ」
………こいつって俺の言ってる言葉分かってんのか?
人の言葉話さないから勝手に進めさせてもらってるけど。
ま、今はその証拠がないから、これは今度考えるとするか。
俺はタバコを2本取り出し、ライターで火をつける。
屈んでスライムに一本渡し、俺自身もタバコを吸いながら町を進んでいく。
暫く歩いていると、何やら人だかりのできている場所があった。
興味本位で近づいてみる。
見ると、男5人と白髪の女が喧嘩をしていた。
男5人は全員この場所には似つかないボロボロの服を着ている。
白髪の女は白無地のワンピースを着こなしている。
白ばっかやな。肌も白いし。
「アンタらが先にぶつかってきたんでしょうが!!」
「違うっつってんだろこのクソアマ!!!さっさと謝らないと痛い目見るぞ!!!」
喧嘩か?それにしては喧嘩の理由がまあまあ子供っぽい気がするが。
女が腕を組みながら大声で叫ぶ。
「誰がクソアマですって!?こちとらまだ17だわ!!!言葉攻めはやめてさっさとこっちに来てみなさい!!口だけだったら私から行かせてもらうわよ!!!」
「チッ、おいお前ら!!こいつに現実見せてやれ!!」
「「うす!!!」」
あーあー。乱闘になっちゃったよ。俺には全然関係ないからいいけど。
でもあの女、生き残れるのか?
5人敵がいるけど。
女が構えをした。
そのタイミングでまずは1人の男が彼女に飛びかかっていく。
女は男に上段蹴りをかます。
吹き飛ばされた男は悶絶し始めた。
嘘だろ。あの人数に勝てるのか?
女が再び構える。
「ハッ、こんなのがアンタらの実力なわけ!?私が修行を始めた頃の2日目くらいの弱さよ!男として恥ずかしくないの!?」
「もちろんウォーミングアップだ!!今のはお前の実力を図るために決まってんだろ!!!自惚れるのも大概にしときな!!こっからが本番だぜぇ!!!いくぞお前らぁ!!」
男達が女へ向かっていく。
しかし彼女は構えを崩さない。顔から見て恐怖も無さそうだ。
すると身を捩らせて攻撃を回避しながら拳を放つ。
彼女の拳をモロに食らった男は白目を剥いて気絶してしまった。
どうやら今ので1人倒したらしい。
強くね?
彼女はすぐに次に移行し、足を引っ掛け、転ばせて腹を勢いよく踏みつける。
彼の様子を見ると暫く起き上がれなさそうだ。
これで2人目。
今度は横からの拳を手をパーにして受け止める。
その体制のままジャンプし肘で男の肩を穿つ。
折れるような音と男の「おげっ」という情けない声が聞こえた。
これで3人目。
ラストのリーダー格っぽい男は正面から正拳突きをするも、彼女は上半身を後ろに曲げて回避。
バネみたいに身体を戻しながら片手で男の手を上に上げ頭突き。
思わず倒れこんでしまった男の腹にかかと落としをして終了。
なんと全員を倒してしまった。
彼女の周りから歓声が上がる。
「ふん。これくらい朝飯前よ。そ、れ、と」
彼女は周りを値踏みするように見渡しながら、やがてニヤリと笑ってこちらを見つめてきた。
え?これってもしかしてもしかするやつ?嫌だよ?異世界なんだから戦うことくらいは分かってたけど、こんな我の強そうなヤツが初戦闘なんて俺は絶対に嫌だよ?
そんな俺の心の抵抗むなしく、彼女は想像通りの言葉を放った。
「アンタ、私と戦わない?」
「嫌です」
「いいじゃない。1回くらい」
「嫌です」
彼女はウインクをして人差し指のみを出しながら懇願してくる。
「でもせめて1回!」
「嫌です」
「やっぱり1回!」
「嫌です」
「いっか」
「嫌です」
「いっ」
「嫌です」
「い」
「嫌です」
「言葉を遮らないでちょうだい!」
「嫌です」
「何で!?」
「とにかく嫌なんです」
「わかったわかった!どちらかが勝ったら負けた方の言う事1回だけ聞く!!これでどう!?」
「なんでそんなに俺と勝負したがるんですか(正論)」
「アンタがこの中で一番強そうだからよ!私は今誰かと戦いたい気分なの!!」
「どんな気分だよ」
「今言ったじゃないの!!もういいわ、始めるわよ!負けた方が勝った方の言うこと1つ聞く!これでいくわね!!それじゃ始め!!」
「は!?ちょっと待て!うわっ!?いきなり正拳突きかよ!?」
人だかりが一瞬で無くなっていく。
「そっちもよく今のを回避できたわね!そこに転がってる奴らは誰も避けられないと思うわよ!」
「そいつぁありがとさんっ!!」
イラつくので強めに殴ってみた。
「ッ……!やるわね!そこの腰に差してある得物二つは使わなくていいの!?」
「そりゃあお前が素手なんだからな!こっちも素手だ!それに生憎身体能力には自信があるんでね!てかお前の名前なんだ!!」
「そう!でも私を舐めてもらっちゃ困るわよ!あと私の名前はジラよ!」
「俺はカイトだ!よろしく!」
「よろしくッ!!」
左方向から蹴りが来た。
しかし地面に手をついてそれを避ける。
あっパンツ見えた。
ってパンツの色はグレーなんかい!!!
おっといかんいかん。集中せねば。
視界の端にいるスライムも不安そうな顔をしている……気がする。
「ちょっと!!アンタ今私のパンツ見たでしょ!!」
「不可抗力だ!!」
「変態!エッチ!!このスケベ!!」
「殴りながら言うことじゃねえだろコノヤロー!!」
しかしこんなことをしているともちろん、あの人がやってくる。
「あそこです!道の真ん中で喧嘩してる2人組!」
「コラ君たち!!!!何をやっている!!」
「やば」
「やべ」
「キュ?」
「逃げるわよ!」
「わかった!」
「キュ?キュエッ!?」
急いでスライムを抱え、俺達は走り出した。
「待てコラガキ!!!待て!!!すまない、至急応援願う!場所は―――」
その後暫く走り続け、ジラが後ろを振り向いた。
「まだ追いかけてきてるのかしら?ってうわっ!」
「なんだどうした………ってええ!?」
めちゃくちゃ人いるんだが!?
見える限りだと15はいるぞ!?
応援呼びすぎだろ!!
「「「待てェェェェ!!!!!」」」
「待てって言われて正直に待つ人間がいるわけないじゃないの……。でも、これはどうしましょうね」
「白旗でもあげるか?」
「いえ、それはやりたくないわ。負けたみたいでかっこ悪いし」
なんなんだよこいつ…。
………待てよ?
「おいジラ、この状況から抜け出したいか?」
「抜け出したいに決まってるでしょ」
「だったらいい方法がある。あそこの屋根までジャンプできるか?」
「できないわよ。もう体力も切れてきたもの。……ってアンタ、もしかして!」
「そのまさかだ。急いで歯ぁ食いしばれ!!」
「っ、ちょっ!!」
俺は彼女のお腹のくびれ部分を抱え、高くジャンプする。
狙うはあの家の屋根だ。
これほど身体能力が強化されているのならいけるはず。
「よし、届いた!!!」
「凄いわねアンタ!」
そりゃ伊達に殺し屋やってないからな。
殺し屋舐めんじゃねー。
「ここからは前に一直線だ!こんなことするのはもうこの1回限りだからせいぜい楽しんどきな!!」
「はいはい、わかったわよ!」
俺はスライムとジラを抱えて1時間ほど走り続け、とうとう警備員さんを撒ききることができた。




