9話 慧斗の告白
※男性同士の恋愛を含みます。
苦手な方はご注意下さい。
休みが明けて、慧斗は普段通りに。と心の中で言いながら、教室へ入る。
「慧斗!おはよ〜。」
「おう、おはよ!」
他の友達の輪の中に居る慎はいつもと変わらず、この前の告白も無かったかのようだった。
でも慧斗は見逃していなかった。
慎の指が白くなるまで、力強く組まれている事。それが緊張している慎の癖なのも。
「慎、昼休み、良い?」
慎にだけ聞こえるように言うと、頷くだけの返事をした。
――そして昼休み。
「慧斗、俺…。この前ごめんな。変な事言って…忘れて。」
「慎、俺の話、聞いてほしい。」
慧斗は真っ直ぐ慎を見つめた。
「…うん。」
「俺、慎の事、大事な友達だと思ってる。
一緒に居て楽しいし、楽だし…。
でも好きな人は…前に話した親友なんだ。」
「えっ…。」
慎の目が見開く。
「それって、男…?」
「うん。男。」
慎は片手で目を覆った。
「なんだよ、それ…。辞めてくれ。」
「慎?」
指の隙間から涙が落ちる。
「それじゃあ、期待しちゃうじゃんか!
俺の事も。って…男同士なんて無理って言われた方が、よっぽどマシだ…。」
「慎…ごめん。
男とか女とかじゃないんだ!アイツだから好きなんだ。」
慎は涙を拭った。
「…うん。慧斗っぽい。
ごめん。俺も、お前だから好きなんだ。」
にこりと笑う慎の顔は晴れやかだった。
「慧斗、俺が何を言っても友達でいてくれるんだよな?」
「お、おう。」
「じゃあ、ずっと友達でいろよ!」
「慎…。ありがとう。」
「うん。こちらこそ、ありがとう。」
二人の間には、固い絆が生まれた。
慎と別れた後、慧斗はスマホを取り出した。
【話がしたい】
ゆっくりを息吐いても、震える指は治まらなかった。
しばらくすると、スマホの画面が光る。
【慧斗ん家?】
(部屋はダメだ。)
【○○公園で】
【わかった】
そこは栄斗の部屋へ行く時に通る公園。
日時を送ると、慧斗は震える手を握りしめた。
――そして約束の日、慧斗は公園に居た。
(少し早かったかな…。)
「慧斗。」
振り向くと、人目も気にせず、栄斗は深く口付けをする。
「んっ!」
慧斗は栄斗を突き飛ばす。
「ばか!はぁ、はぁ…こんな、外で何してんだよ!」
「…大丈夫だよ。今、誰も居ないし。」
「そう言う問題じゃ…。」
目が合わない。
栄斗が合わせないように逸らし続けているのがわかる。
「栄斗、話したい。」
「うん、何?」
「俺たちの、今後の事。」
栄斗は下を見たまま、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。
「栄斗…。」
「慧斗は、俺の事どう思ってんの?」
「そりゃ、好き。だよ。」
言葉にすると、恥ずかしくて、慧斗は顔が赤くなった。
「俺たち、好きとか付き合うとか、言って来なかっただろ?
ただ一緒に居るのが普通になって…それに慣れてしまったから…。」
「俺は、言わなくてもわかってると思ってた。」
栄斗は変わらず下を向いたまま。
「そりゃ、好かれてるとは思ってるよ?でも言わなきゃ伝わらない事も――」
栄斗は話終わるのを待たずに、口を開いた。
「わかってるよ!紅茶の事も、嫉妬しただけだよ!大学行くより、お前と居たかった。お前も同じかと…でも違うんだ。それもわかってる…。」
「栄斗、俺はお前の人生の一部で良い。
大学もバイトも、友達やサークル。その中の一つで良いんだ。」
「…だから俺にも。って?」
不貞腐れたように栄斗が言う。
「…でも栄斗がダメになるだろ?
大学も留年したら、おばさんに怒られるし…バイトだって、周りに迷惑に…。」
「ははは。お前はそう言うとこあるよな。
人の事ばっかり。俺は?
好きって、その人が全部なんじゃないの!?」
栄斗の目から涙が流れる。
「慧斗は、それほど俺の事好きじゃないんじゃない?」
その言葉に慧斗の目から涙が零れ落ちる。
はっとして、手で口を抑えるが、もう取り返しはつかない。
「あ、ちが、違う。慧斗、ごめん。」
栄斗は上手く言葉が繋がらない。
「…今日は、帰るわ。」
立ち去ろうとする慧斗。
「待って!うち来れば良いじゃん。」
「はっ。それでヤッて、なぁなぁに。って?ふざけんなよ!」
振り向く事なく、慧斗は去ってしまう。
つづく。




