10話 向き合う覚悟
※男性同士の恋愛を含みます。
苦手な方はご注意下さい。
慧斗は教室から窓の外を眺めていた。
(もう、栄斗の事がわからない…。)
「はぁ〜…。」
「でかいため息。」
ひょこっと慎が視界に入る。
「え?ごめん。そんなだった?」
「うん。何?喧嘩?」
務めて明るくする慎の声は、少し震えていた。
そんな慎に話す事ではないと思っていたのに、誠実でありたくて、簡単に話し始めた。
「喧嘩って言うか、話が噛み合わなくて…。
恋愛の価値観?が違ってて…。」
「そっか…でもそれって――」
慎は親身になって相談にのる。
二人が上手くいくとしても、慧斗が幸せならと…。
一週間後。
栄斗のバイト先のコンビニから出ると、凛花が居た。
「花凛ちゃん!こんな遅くに危ないじゃん!」
「大丈夫。向かいのファミレスに彼氏待たせてるから!」
「それにしても…俺、男だよ?」
「ふふふ、私、信用されてるから!」
花凛は、指をVとすると、ニカっと笑って見せた。
「そうだ!あのね、慧斗がバイト辞めたの。メッセージしても忙しいしか言わないし!」
「…そう、なんだ…。」
「貴方たち、上手くいってるのかと思ってたけど、栄斗くんは遅番になるし、慧斗は辞めるし、どうなってんの!?」
「え?上手くって…え?気づいて…。」
動揺する栄斗。
「わかるよー!慧斗の表情見ればねー。
私、元カノですから。」
得意げな花凛に、声を出して笑う栄斗。
(あ…こんな風に笑うの久しぶりだ。)
「元気なら良いんだけど…あまり言葉にしないヤツだからさー。」
花凛に背中を押されたような気がした。
「明日、慧斗のとこ行ってみるよ。」
「うん。慧斗が辞めたから私サボれない。って言っといて!」
「りょーかい!」
二人は顔を見合せ笑うと、別れた。
次の日。
栄斗は慧斗の部屋のドアの前で、緊張してチャイムを鳴らせないでいた。
そんな栄斗に、後ろから慎が声をかけた。
「あのう…。その部屋に用ですか?」
栄斗が振り向く。
慎は栄斗を見てすぐにわかった。この人だと…。
「あ、俺、ここの人の……友達で、友達が心配してて…えっと、訳わかんねーな…。」
「ここじゃあ、なんなので、あちらへ…。」
動揺する栄斗を連れて、慎は少し離れた自動販売機の前に来た。
「俺、慎って言います。慧斗と同じ大学です。」
慎は自動販売機でストレートティーを買った。
「っ!」
栄斗の心の中はザワついた。
そのストレートティーがジワジワと心を蝕まれていく。
「俺は、栄斗。幼なじみで親友!慧斗が本屋辞めたって聞いて、何でかな?って…。」
「あー、…言ってないんだ。」
「はぁ!?別に俺は気にしてないけど、友達がな!」
慎は、栄斗を見据える。
「あのさ、あんた、慧斗の事どう思ってんの?」
「はあ?好きだし、付き合ってるし!
お前こそなんなんだよ!」
「はぁ〜。…慧斗、頭良いんだよ。システムエンジニア志望なのに、光化学の教授から大学院来ないかって誘われるくらい。」
大きなため息と共に、慎は説明した。
「そう、なんだ…知らない。」
「でしょうね。あんたに言っても無駄そう。
将来の話とか出来なそうだもんね。」
「…将来…。」
いつも栄斗とは昔話ばかりだった。
「で、論文を書いてる。頑張り過ぎして、今、体調壊した。」
「…言ってくれれば良いのに…。」
「はっ。言えないだろ?あんた自分の事ばっかなんだろ?」
栄斗は、はっと顔を上げる。
「お前に、愚痴ってるのか…。
まぁ、そうだよな。俺への不満は尽きないだろうよ。」
「あんたってホント…。
慧斗は…好きだって、一度だけ泣いてた。
羨ましいと、思ったよ。」
「お前…慧斗の事…。」
「大丈夫だよ。ちゃんと振られてるから。」
慎は寂しさが混じった笑顔を向けた。
その笑顔が、未来の自分に見えて顔を背けた。
つづく。




