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慧斗と栄斗  作者: 白 月虹


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11/12

11話 ただ、会いたくて

※男性同士の恋愛を含みます。

苦手な方はご注意下さい。

「さっき寝たから。今日は帰ってやって。

あんたが来た事言っとくから。」


嘘をつくようには見えない。

でも黒い染みは広がっていく。


「そんな事言って、ホントは言わないで、腹の中でざまーみろとか思うんだろ?

今だって、俺の事バカだと思ってんだろ!

その紅茶だって、あいつ、そんなの飲まないのに、お前が教えたんだろ!」


目には涙が浮かぶ。

栄斗はこんな事言いたい訳じゃないのに、どんどん嫌な言葉が頭に浮かんで、口から出ていく。


「…あんた、友達多いけど深く付き合える人は慧斗だけだろ。」


「なっ!」


実際、今は悩みを相談出来る人は周りにいなかった。


「ストレートティーは、慧斗が俺に教えてくれたんだよ。

大学入ってすぐ、親友に」


――「甘い飲み物ばかりじゃ、体壊すぞ!」


「て、言われて、お茶系を色々飲んだらこれが一番美味かったんだって。」


「あ……言ったかも。」


そう言うと、栄斗は目を丸くする。


「何気ない一言だけど、好きな人から言われた事は覚えてるもんだよな。」


「……帰るわ。」


栄斗は慎を見る事なく言うと、その場から立ち去った。


二日後、慧斗の部屋を慎が訪ねていた。


「大丈夫か?」


「うん…サンキューな!資料集め。助かった!」


「全然足りないようだけどな…。」


「助かったのはホント!なんかお礼しないとだなー。」


資料に目を通しながら慧斗が言う。


「…じゃあ、キスして欲しい。」


「っ!」


驚いて慎へ顔を向けると、真っ赤になっていた。


「ごめん!ウソだよ!」


「…ごめん。今の俺がキスしても、慎は喜ばないでしょ…。」


(俺のこと、そんなに理解してるお前とのキスなら、喜ぶけどな…。)


そんな事を思いながら、慎は本当に話したい事を話し始めた。


「あのさ、倒れた日…。

栄斗ってやつ、来たよ。」


慧斗の手から資料が滑り落ちる。


「…あ、ごめん。何も言ってないのに…ビックリした…。」


「友達が心配して…どうのって。」


「花凛かな?高校の元カノ。」


「あー、そうかもな。」


慎は資料を拾い集めると、慧斗に渡す。


「ありがとう。」


「あいつに将来の事とか、何も言ってないの?」


「んー、言っても、何で?今じゃないとダメなの?て、言われそうで…。」


資料を確認する手は止まらない。


「一段落したら連絡してみる。」


「おう。じゃあ俺、帰るな!」


「うん。今度ストレートティー奢るから。」


何気なく言う慧斗。


「ん。」


慎は言いたい言葉を飲み込んで、短く返事をすると部屋を出た。


(ストレートティーにも、あいつが居るんだよな…)


慎は栄斗の影がチラつくストレートティーを、嫌いになれなかった。


一人、部屋で慧斗は集中出来ずにいる。


(んー。ダメだ!)


スマホを手に取ると、栄斗へメッセージを送る。


【この前、お見舞いに来てくれた。って聞いた。ありがとう。】


五度目でようやく、送信ボタンを押す。


「送っちゃった…。」


すると、すぐスマホの画面が光る。


「わ!着信…。」


意を決する慧斗。


「もしもし。」


『俺、栄斗…。』


「うん。」


『大丈夫?』


「うん。」


お互い緊張のせいか、会話が続かない。


『なんか買ってく?』


「いや、いいよ。」


『花凛ちゃんが心配してた!』


「うん。メッセージ送っとく。」


『…論文で忙しいわかってるけど、ちょっとでも、会えないかな?』


自分も会いたい。なのに喉が張り付いて即答出来なかった。


「……ごめん。今は資料整理しないと…。」


『そっか…ごめんな。じゃあ終わったら、また飲みに行こう?』


「そうだな。」


通話が切れる。


慧斗はベッドへ倒れ込む。


「会いたい。でも会うのが怖い…。

俺は、栄斗の事…好きなのか?……。」


外は雨が降り出した。

慧斗の部屋を見つめる栄斗。


会いたい。ただそれだけなのに……。


気付けば肩は濡れていた。


─────────


それから一ヶ月、慎のサポートもあり、論文は仕上がった。


「ホント、サンキューな!」


「いや、俺なんもしてないから。」


「飯、奢る!これから行かない?」


「やった!唐揚げ食べたい。」


「いいねー。」


そして祝賀杯を交わし、居酒屋から出てくる二人。

外はポツリポツリと雨が降っていた。


「あー、雨降ってきた?」


「俺、傘ある。」


ゴソゴソと、慎はリュックから折りたたみ傘を出す。


「用意良いな。」


「俺、髪の毛濡らしたくないから!」


「いつもガチガチに固めてるもんなー。」


そんな会話で笑い合う。

慎が傘をさして歩き出す。


しばらく他愛のない会話が続く。

目の前の人影に気づき、二人は立ち止まる。


「…なんで?」


慧斗は目を見開く。

そこには栄斗が立っていた。

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