12話 最終話
※男性同士の恋愛を含みます。
苦手な方はご注意下さい。
「怖!あんた、着けてたの?」
呆れたように言う慎をチラリと見ると、慧斗へ視線を戻す。
「あの居酒屋は、俺だって行くよ。お前と何回も行ってるから。それより、なんでこいつといんの?論文は?一ヶ月間、こいつ何回か慧斗の部屋行ってるよね!?」
「あんた、部屋にも来てたのかよ!」
慎は声を荒らげた。
「会いたいから!慧斗を…見たら帰った。」
「栄斗…。
論文は今日終わって、打ち上げしただけ。」
慧斗は冷静だった。
「終わったなら俺と居よ?こっちの傘の方が大きいし。」
栄斗は手を差し出すが、その手は次第に濡れていく。
「…慧斗?」
栄斗の声は震える。
「栄斗…もう、辞めよう。
好きだけど、一緒に居たらお互いダメになる…。」
「…なん、で?」
差し出された栄斗の腕は、力なく垂れ下がった。
「俺、栄斗の事すげー好きで、でも栄斗も俺の事好きかわかんなくって、合わせてた気がする。」
「俺だってすげー好きだよ!」
「うん…わかってるけど…。
俺たち、もっと気持ちを口にすれば良かった。」
「今、言ってる、じゃん…。」
栄斗は言いながら、そうじゃない。と感じていた。
「今、栄斗と一緒に居ても、体を重ねても、お互い満たされる事はないよ。わかってるだろ?もう戻れないって…。」
「だから別れるのか!?」
栄斗の目には涙が滲む。
「違うよ。」
慧斗は首をゆっくり横へ振る。
「付き合ってもいなかった…。」
「……お互い、何も言って来なかったから?…」
栄斗はポツリと言ったけど、雨音で殆ど聞こえなかった。
「俺たち、何も言わなくてもわかってると思ってたけど、それは友達だから成立してたんだ。」
慧斗の瞳から涙が零れる。
「言えば良かった。好きだって…会いたい。って。だけど栄斗に俺は違う。って言われるのが、怖くて、言えな、かった…。うぅ。」
隣に居る慎が、慧斗の背中をさすった。
慧斗の言葉を聞いて、栄斗は泣きながら頷いた。
何か言わなければ。
引き止めなければ。
そう思うのに、言葉が出てこない。
自分の気持ちを伝えれば良かった。
何も言わなくてもわかると思っていた。
でもそれは信頼なんかじゃない。
自分もまた、傷つくのが怖かっただけだった。
どちらかともなく、それぞれは来た方向へと戻って行く。
雨音は二人のすすり泣く声を消していた。
──────────
月日は流れ――卒業間近。
「慧斗、ホントに大学院へ進むんだ!」
待ち合わせ場所で、友人数人と談笑をする。
「うん…迷ったけど。せっかくだから、やってみようかな。って。」
「お待たせ!」
そこへ走って来た慎が合流する。
「おせーよー。」
「ごめん。なんか信号が全部赤だった。」
「はいはい。」
「信じてないな?」
そんな会話をしながら歩いていると…
向こうから、数人のグループとすれ違う。
………
「慧斗!?」
「栄斗!?」
少し大人になった二人。
だけど呼び合う声は、あの頃のまま――
おわり。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
慧斗と栄斗の物語はいかがでしたでしょうか。
二人が過ごした時間や想いが、少しでも皆様の心に残れば嬉しいです。
本当にありがとうございました。




