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慧斗と栄斗  作者: 白 月虹


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8/12

8話 慎の告白

※男性同士の恋愛を含みます。

苦手な方はご注意下さい。

そして朝になり、慧斗は栄斗を起こすが、中々起きなかった。


「栄斗!今日は行くんだろ?早く起きないと、間に合わないぞ!」


「んー…。」


「今日バイトもあるんだぞ!?」


「わかってる…。」


気だるそうに栄斗は起きる。


「俺、そろそろ出ないと…。

鍵、ポストに入れといて。」


その言葉に、栄斗は目を見開いた。


「鍵…持ってちゃダメなの?」


「俺が先に帰ってきたら――」


「バイトの日は、帰りはいつも一緒じゃん!」


慧斗の言葉を遮るように言う。


「そう、だけど…バイト前まで時間があるから…。」


言い淀む慧斗。


「そんな事より、何で紅茶好きなの言わないの?高校までジュースばっかで、お茶なんて味ないし、一生飲まない!とか言ってたじゃん!」


栄斗は怒りませに早口になっていた。


「…そんな事。って。

紅茶の方がどうだっていいよ!早く支度して大学行けよ!」


「っ!」


栄斗は服を着ながら、周りにある自分の物だけ持って玄関のドアに手をかけた。


「お前は、正しいよ。

でも、俺は気持ち優先にしちゃうから…。」


顔は伏せたまま、ドアを開ける。


「今日は、一緒に帰らない。」


そう言い残すと、栄斗は部屋を出た。


「…栄斗。」


慧斗は追いかけられなかった。

友達の頃の喧嘩とは気持ちが違う。

暗い顔のまま、大学へ行った。


━━━━━━━━━━━


ぼーっとする慧斗に慎が声をかける。


「今日はくら〜い、ね!」


「あ、うん…。友達と喧嘩した。」


「親友ってやつ?」


「うん…一緒にい過ぎたのかなぁ…。」


何気ない一言に慎はピクリとする。


「今日、飯行かね?…相談、のるよ?」


「あー、今日はバイトなんだ。」


慧斗は申し訳なさそうに言う。


「そっか…。じゃあ明後日は?」


明後日は、栄斗と映画を観に行く約束していた。

慧斗は悩んだ挙句、慎と約束してしまう。


「午前中、バイトだから夕飯でいい?」


「おう。じゃあ本屋まで行くよ。」


「うん。」


慎は心の内は喜んでいたが、反対に慧斗は淀んでいく一方だった。

このまま栄斗と仲直りしないとどうなるか…。考えただけで、心臓は軋むけど、距離を置いた方が良いとも思っていた。


そして約束の日。

案の定、栄斗からの連絡は無かった。


(俺も連絡してないし…当然だよな…。)


バイトを終えると、慎が外で待っていた。

少し前までは栄斗が居た場所に…。


(あーくそっ。今は栄斗は忘れよう。)


そんな風に思いながら、慎の元へ駆け寄った。


「ごめん、待った?」

「いや、さっき来たから。」


そんな会話をすると、二人は並んで歩いて行く。


「でさ、先生がさ――」

「あー、わかる!」


他愛のない会話をしながら、居酒屋から出てくると、慧斗がポツリと零した。


「慎と居ると楽だわ…。」


他意はない。

栄斗と比べた訳でも、喧嘩したからでもない。友達として言ったつもりだった。

でもその言葉に慎の視線は熱かった。


「俺が、何を言っても、友達でいてくれる?」


立ち止まる慎に、慧斗は応える。


「…うん。どした?」


慎は目つぶり、深呼吸をして、言う。


「…俺、…慧斗が好きだ。」


「…俺だって、慎好きだ――」


全部言い切る前に、慎が遮る。


「違う!俺の好きとお前の好きは違う…。」


「あ、いや、え…。」


不意をつかれた告白に、慧斗は驚きでたじろんでしまう。


「男なのに、気持ち悪いよな…ごめんな。」


「そんな事ない!」


この言葉だけは即答だった。


「っ!ありがとう…。」


慎は地面を見たまま続けた。


「慧斗が何かに悩んでるのはわかってる。

好きな人、が、居ることも…だから言う気はなかった…。返事はいらないから…また教室で、笑ってくれればいい…。」


今にも泣きそうな慎の顔に、言葉が出なかった。


「慎、俺…。」


「…良いよ、ごめんな。」


「違う。…違うんだ…。」


俯く慧斗の頭を、慎はぐしゃっと撫でた。


「今日はここで…。またな。」


「…うん。また…。」


慎の背中を見ながら、慧斗は思った。


慎に“好きな人”と言われて浮かんだのは、栄斗だった。

なのに、好きとか付き合うとか、話した事はなかった。

一緒に居るのが当たり前すぎて、考えた事もなかった。


「……こんなの、親友の延長だろ…。」


慎への応え、栄斗への答え。

慧斗は伝えようと決心した。



つづく。

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