8話 慎の告白
※男性同士の恋愛を含みます。
苦手な方はご注意下さい。
そして朝になり、慧斗は栄斗を起こすが、中々起きなかった。
「栄斗!今日は行くんだろ?早く起きないと、間に合わないぞ!」
「んー…。」
「今日バイトもあるんだぞ!?」
「わかってる…。」
気だるそうに栄斗は起きる。
「俺、そろそろ出ないと…。
鍵、ポストに入れといて。」
その言葉に、栄斗は目を見開いた。
「鍵…持ってちゃダメなの?」
「俺が先に帰ってきたら――」
「バイトの日は、帰りはいつも一緒じゃん!」
慧斗の言葉を遮るように言う。
「そう、だけど…バイト前まで時間があるから…。」
言い淀む慧斗。
「そんな事より、何で紅茶好きなの言わないの?高校までジュースばっかで、お茶なんて味ないし、一生飲まない!とか言ってたじゃん!」
栄斗は怒りませに早口になっていた。
「…そんな事。って。
紅茶の方がどうだっていいよ!早く支度して大学行けよ!」
「っ!」
栄斗は服を着ながら、周りにある自分の物だけ持って玄関のドアに手をかけた。
「お前は、正しいよ。
でも、俺は気持ち優先にしちゃうから…。」
顔は伏せたまま、ドアを開ける。
「今日は、一緒に帰らない。」
そう言い残すと、栄斗は部屋を出た。
「…栄斗。」
慧斗は追いかけられなかった。
友達の頃の喧嘩とは気持ちが違う。
暗い顔のまま、大学へ行った。
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ぼーっとする慧斗に慎が声をかける。
「今日はくら〜い、ね!」
「あ、うん…。友達と喧嘩した。」
「親友ってやつ?」
「うん…一緒にい過ぎたのかなぁ…。」
何気ない一言に慎はピクリとする。
「今日、飯行かね?…相談、のるよ?」
「あー、今日はバイトなんだ。」
慧斗は申し訳なさそうに言う。
「そっか…。じゃあ明後日は?」
明後日は、栄斗と映画を観に行く約束していた。
慧斗は悩んだ挙句、慎と約束してしまう。
「午前中、バイトだから夕飯でいい?」
「おう。じゃあ本屋まで行くよ。」
「うん。」
慎は心の内は喜んでいたが、反対に慧斗は淀んでいく一方だった。
このまま栄斗と仲直りしないとどうなるか…。考えただけで、心臓は軋むけど、距離を置いた方が良いとも思っていた。
そして約束の日。
案の定、栄斗からの連絡は無かった。
(俺も連絡してないし…当然だよな…。)
バイトを終えると、慎が外で待っていた。
少し前までは栄斗が居た場所に…。
(あーくそっ。今は栄斗は忘れよう。)
そんな風に思いながら、慎の元へ駆け寄った。
「ごめん、待った?」
「いや、さっき来たから。」
そんな会話をすると、二人は並んで歩いて行く。
「でさ、先生がさ――」
「あー、わかる!」
他愛のない会話をしながら、居酒屋から出てくると、慧斗がポツリと零した。
「慎と居ると楽だわ…。」
他意はない。
栄斗と比べた訳でも、喧嘩したからでもない。友達として言ったつもりだった。
でもその言葉に慎の視線は熱かった。
「俺が、何を言っても、友達でいてくれる?」
立ち止まる慎に、慧斗は応える。
「…うん。どした?」
慎は目つぶり、深呼吸をして、言う。
「…俺、…慧斗が好きだ。」
「…俺だって、慎好きだ――」
全部言い切る前に、慎が遮る。
「違う!俺の好きとお前の好きは違う…。」
「あ、いや、え…。」
不意をつかれた告白に、慧斗は驚きでたじろんでしまう。
「男なのに、気持ち悪いよな…ごめんな。」
「そんな事ない!」
この言葉だけは即答だった。
「っ!ありがとう…。」
慎は地面を見たまま続けた。
「慧斗が何かに悩んでるのはわかってる。
好きな人、が、居ることも…だから言う気はなかった…。返事はいらないから…また教室で、笑ってくれればいい…。」
今にも泣きそうな慎の顔に、言葉が出なかった。
「慎、俺…。」
「…良いよ、ごめんな。」
「違う。…違うんだ…。」
俯く慧斗の頭を、慎はぐしゃっと撫でた。
「今日はここで…。またな。」
「…うん。また…。」
慎の背中を見ながら、慧斗は思った。
慎に“好きな人”と言われて浮かんだのは、栄斗だった。
なのに、好きとか付き合うとか、話した事はなかった。
一緒に居るのが当たり前すぎて、考えた事もなかった。
「……こんなの、親友の延長だろ…。」
慎への応え、栄斗への答え。
慧斗は伝えようと決心した。
つづく。




