7話 知らない事
※男性の恋愛を含みます。
苦手な方はご注意下さい。
「慧斗!俺のレポート手伝って!」
慎が両手を合わせて懇願する。
「それ、今日中のやつじゃん!」
「間違えて明後日までのやつ、先にやってたー。」
呆れる慧斗。
今日は栄斗と夕飯の約束をしていたため、断りたかった。
だが、慎は大学一年から仲良くしている友達。無下には出来なかった。
「…はぁ。待ってて、約束あるから、遅れるって電話してくる。」
「ごめん!でも助かる!」
慎は申し訳なさそうに言う。
しばらく待つと、電話を終えた慧斗が戻ってくる。
「ごめんな。相手怒ってた?」
「いや。向こうも、サークルのミーティング?で、まだ出られないらしいから。」
「ふーん…。」
慎の心の内は面白くなかった。
慧斗が一喜一憂するその相手と、喧嘩になればいいと思っていた。
「じゃあ、早くやっちゃおう。」
「図書室行くか。」
「そうだな。」
──────
少し遅れて、約束の場所へ栄斗はやって来た。
「ごめん!遅れたー。」
「良いよ!俺が、先に時間ズラしてもらったし…。」
三日しか会っていないのに、長い間のような感覚だった。
「レポート出来た?」
「うん!栄斗は?」
「俺は…。」
「……。」
二人の会話は尽きなかった。
そして、朝まで深く体を重ねた。
次の日、慎がストレートティーのペットボトルを慧斗に渡した。
「レポートのお礼…。」
「お、サンキュー。でもあと10本だな!」
「そんなに!?」
笑い合う二人。
「あのさ…。慧斗…彼女出来たの?」
「は、あ、ぇ?」
「いや、なんか楽しそうだし、疲れてるし…。少し前までそんなじゃなかったから…。」
(…慎には嘘つきたくないけど…。相手が男とか、引かれるのも嫌だな…。)
悩んだ慧斗は曖昧に答える事にした。
「親友に久しぶり会って、すげー楽しくて、空いてる時は気づいたら遊んでる。って感じなんだ!」
「へー…。」
慎の胸にチクリと刺さる。
「じゃあさ、俺ともたまには遊ぼうよ。」
「おう!そりゃもちろん。」
栄斗と再会してから、慎との交流は大学だけになっていた事に、慧斗も気づいた。
慧斗のバイト先の本屋の隣のコンビニて、栄斗はバイトを始めた。
帰りは、慧斗と栄斗、花凛が駅まで一緒に行くのが習慣になっていた。
「じゃあまたね。」
「気をつけてな。」
「またね、花凛ちゃん。」
そして二人は自然と、慧斗の部屋へ向かっていた。
激しく求め合うと、また遅めの朝に目が覚める。
(あー、また…ダメだとわかってるのに…。)
そんな事を思いながら、目を覚ました慧斗は栄斗を起こす。
「栄斗!授業、間に合う?」
「んー。…間に合わない…。」
そう言うと、ゴロンとまた横になる。
「俺、午後から行くよ。」
「…慧斗も休めば?」
目を瞑ったまま言う。
「そんな訳にいかねーよ!」
栄斗のおでこを軽く叩く。
「俺は――」
起き上がる栄斗は、何か言いたそうな言葉を飲み込んだ。
「何?」
「ううん…。」
その目は何か訴えているように見えたが、慧斗にはわからなかった。
「うちにいる?」
栄斗の頭を撫でながら言う。
「…うん。明日は行くから、今日も泊まっていい?」
「うん。」
口付けを交わす。もう数え切れない程してるのに、どこかぎこちなくて、離れ難かった。
夕方、慧斗が大学から帰ってくる。
「ただいまー。」
「おかえりー。」
栄斗が慧斗のリュックの外側ポケットにある、ストレートティーに目が行く。
「あれ?紅茶なんて飲むの?」
「うん、大学入ってから。」
「…知らなかった…。」
栄斗は小さく呟く。
「ん?なんか言った?」
慧斗が聞くと、栄斗は首を振った。
少し空気は重くなっていくのを感じていた。
つづく。




