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慧斗と栄斗  作者: 白 月虹


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6/12

6話 小さなズレ

※男性の恋愛を含みます。

苦手な方はご注意下さい。

慧斗は授業を終えてアパートへ戻ると、部屋は灯りがついていた。

大きく深呼吸をすると、ドアを開けた。


「…ただいま。」


「おかえり!」


(栄斗の出迎え…なんか可愛いぃぃ!)


一歩入ると、いい香りがする。


「何?作ったの?」


テーブルの上には、見た目は不格好だけど、オムライスが二つ置いてあった。


「ご飯は…どこにあるかわからないから、パックのやつ買ってきた。お前ほど上手くは出来てないけど…良かったら食べて。

あ、後シーツも洗っといた。あと、あと…」


栄斗は恥ずかしくて、早口になってしまう。


「ふふふ。栄斗ってテンパると早口だよな。」


「そんな事っ!…あるのか…。」


「食べていい?」


「…どうぞ。」


二人はテーブルについた。


一口食べると…少ししょっぱかった。


「うわ!ごめん。しょっぱいな…。」


「良いよ。食えなくない。」


慧斗は嬉しさで、味は殆ど分かってなかった。ただ目の前に、栄斗が居て、栄斗が初めて作ったオムライスを食べられるだけで幸せだった。


でも、この時の慧斗は、まだ気付いていなかった。

幸せと一緒に、少しずつ何かがズレ始めていた事に。


「じゃあ、今日は帰るわ。」


「おう…またな。」


しばらく沈黙する。

離れたくなくて、絡み合う視線は熱い。


「…ごめん。手を伸ばしたら、また帰れなくなるから、ホントに行くわ…。」


「うん。俺も、明日は朝から授業、だから…。」


意を決して、栄斗は玄関のドアを開けた。


「明日、また来ていい?」


「バイトの後なら。」


「なら、着替え、持ってくる!」


ニカと笑うと、栄斗は玄関を閉めた。

その言葉で、慧斗の心臓は早くなった。


(ヤバ…ローション、買っておくか…。)


しばらく穏やかな日々が続いた。

毎日のようにお互いの部屋へ行き、体を合わせて、慧斗も栄斗も幸せな気持ちでいた。


そんなある日、慧斗の友達の慎が真剣な顔を話しかけてくる。


「なぁ慧斗…。」


「何?」


「最近疲れてない?」


慧斗は驚いた。

疲れてないとは言いきれないけど、幸せな毎日が、他人からは疲れてるように見えていたなんて…。


「…大学と、バイトと……疲れてるのかな……。」


「あんま無理すんなよ?」


「う、うん。サンキューな…。」


栄斗も同じかもしれないと思った慧斗は、人気のない所で電話をかけた。


……。


『もしもし。どうした?』


「今、平気?」


『おう。』


「レポートがあって、三日間、会うの無しでいい?」


少し申し訳ない気持ちもあった。


『…そうだな。』


栄斗の声が掠れてるように聞こえる。


「いや、ごめん。やっぱり――」


『レポート、大事だろ?』


「…うん。」


嘘はついていない。

実際、提出物はいつも期限より前に出していた慧斗も、今では当日か、一日遅れる事も増えていた。


『……俺も、やらなきゃだから…。

ちょっと寂しいな…って思った、だけ…。』


思いも寄らない言葉に、慧斗は舞い上がった。


「俺も!」


『即答かよ。』


「うん…嬉しかった、から?」


『メッセージ送っていい?』


「うん。俺も送る。」


『じゃあ…。レポート頑張れ。』


「うん。栄斗も。」


通話が切れる。慧斗の顔は赤くなっていた。

その様子を、遠くから慎が見つめていた。


三日間、会えないけどメッセージのやり取りのおかげで、思っていたより寂しくはなかった。

レポートも終わり、期限内に提出も出来ていた。



つづく。

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