6話 小さなズレ
※男性の恋愛を含みます。
苦手な方はご注意下さい。
慧斗は授業を終えてアパートへ戻ると、部屋は灯りがついていた。
大きく深呼吸をすると、ドアを開けた。
「…ただいま。」
「おかえり!」
(栄斗の出迎え…なんか可愛いぃぃ!)
一歩入ると、いい香りがする。
「何?作ったの?」
テーブルの上には、見た目は不格好だけど、オムライスが二つ置いてあった。
「ご飯は…どこにあるかわからないから、パックのやつ買ってきた。お前ほど上手くは出来てないけど…良かったら食べて。
あ、後シーツも洗っといた。あと、あと…」
栄斗は恥ずかしくて、早口になってしまう。
「ふふふ。栄斗ってテンパると早口だよな。」
「そんな事っ!…あるのか…。」
「食べていい?」
「…どうぞ。」
二人はテーブルについた。
一口食べると…少ししょっぱかった。
「うわ!ごめん。しょっぱいな…。」
「良いよ。食えなくない。」
慧斗は嬉しさで、味は殆ど分かってなかった。ただ目の前に、栄斗が居て、栄斗が初めて作ったオムライスを食べられるだけで幸せだった。
でも、この時の慧斗は、まだ気付いていなかった。
幸せと一緒に、少しずつ何かがズレ始めていた事に。
「じゃあ、今日は帰るわ。」
「おう…またな。」
しばらく沈黙する。
離れたくなくて、絡み合う視線は熱い。
「…ごめん。手を伸ばしたら、また帰れなくなるから、ホントに行くわ…。」
「うん。俺も、明日は朝から授業、だから…。」
意を決して、栄斗は玄関のドアを開けた。
「明日、また来ていい?」
「バイトの後なら。」
「なら、着替え、持ってくる!」
ニカと笑うと、栄斗は玄関を閉めた。
その言葉で、慧斗の心臓は早くなった。
(ヤバ…ローション、買っておくか…。)
しばらく穏やかな日々が続いた。
毎日のようにお互いの部屋へ行き、体を合わせて、慧斗も栄斗も幸せな気持ちでいた。
そんなある日、慧斗の友達の慎が真剣な顔を話しかけてくる。
「なぁ慧斗…。」
「何?」
「最近疲れてない?」
慧斗は驚いた。
疲れてないとは言いきれないけど、幸せな毎日が、他人からは疲れてるように見えていたなんて…。
「…大学と、バイトと……疲れてるのかな……。」
「あんま無理すんなよ?」
「う、うん。サンキューな…。」
栄斗も同じかもしれないと思った慧斗は、人気のない所で電話をかけた。
……。
『もしもし。どうした?』
「今、平気?」
『おう。』
「レポートがあって、三日間、会うの無しでいい?」
少し申し訳ない気持ちもあった。
『…そうだな。』
栄斗の声が掠れてるように聞こえる。
「いや、ごめん。やっぱり――」
『レポート、大事だろ?』
「…うん。」
嘘はついていない。
実際、提出物はいつも期限より前に出していた慧斗も、今では当日か、一日遅れる事も増えていた。
『……俺も、やらなきゃだから…。
ちょっと寂しいな…って思った、だけ…。』
思いも寄らない言葉に、慧斗は舞い上がった。
「俺も!」
『即答かよ。』
「うん…嬉しかった、から?」
『メッセージ送っていい?』
「うん。俺も送る。」
『じゃあ…。レポート頑張れ。』
「うん。栄斗も。」
通話が切れる。慧斗の顔は赤くなっていた。
その様子を、遠くから慎が見つめていた。
三日間、会えないけどメッセージのやり取りのおかげで、思っていたより寂しくはなかった。
レポートも終わり、期限内に提出も出来ていた。
つづく。




