4話 すれ違い
※男性同士の恋愛を含みます。
苦手な方はご注意下さい。
(いきなり行ったら驚くかなー?)
栄斗はいたずらっ子のような顔をして、慧斗のバイト先へ行く。
すると、丁度慧斗が出てくる。
隣には――キレイな女性。とても仲が良さそうで、今まで、栄斗に向けた事のない柔らかな顔で笑っていた。
栄斗は息をするのも忘れるくらい二人を見つめていた。
「……そっか。…そうだよな。」
ポツリと呟く栄斗の言葉は、自分を慰めるようだった。
一方慧斗は、自分のアパートの部屋へ帰ると、栄斗に電話しようか迷っていた。
「もう、帰ったかなぁ…?」
クッションを思い切り抱きしめて、緊張を紛らわすと、意を決して電話かけた。
プルプル、プルプル…。
『もしもし?』
少し元気がなさそうな栄斗の声。
「栄斗?ごめん、疲れてた?」
『いや…。』
「そっか。また今度二人で、飲みに行きたいな。と思って…。」
『…それで、俺ん家来てキスするの?』
その言葉に慧斗は青ざめた。
「いや、そう言う訳じゃ…。でも俺たちって…。」
『……俺たち、男だぜ?』
慧斗の心臓は冷えていく。
(じゃあなんでキスしたの?俺と同じ気持ちじゃないの?)
頭に言葉が浮かぶのに、上手く紡げなかった。
その後何を言ったか分からないまま、通話を切った。
そしてしばらく、通話が切れたスマホを握ったまま、慧斗は動けなかった。
また連絡をしない日々が続いた。
慧斗は後悔した。この気持ちを…この気持ちに名前を付けるのが怖くて、先送りにした結果、栄斗に嫌われたのかと思っていた。
――10日経った雨の日。バイト終わり。
いつものように、バイト仲間と慧斗は出てくる。
「あちゃ…雨かよ…。」
「慧斗、傘持ってきてないの!?」
隣の女性が呆れたように言う。
「朝は降ってなかったから…。」
「もう…仕方ない!駅まで一緒だから、入れてあげよう!」
「言い方に棘あるなぁ…。」
傘に入ろうとした時――
「慧斗!」
「っ!」
呼ばれて向く方向には、傘をさした栄斗が立っていた。
「…栄斗?」
悩んで、会いたかった栄斗が目の前に居るのに、なぜか声が出なくて、ただ立ち尽くしていた。
すると、横からひょこっと顔が出る。
「え!栄斗くん!?」
「んあ?誰?」
慧斗の隣に居るたけで、嫌悪感なのに、自分を知ってる感じなのが、余計に眉間のシワを濃くした。
「私、花凜!」
「…高三の時の…?」
「そう!慧斗と偶然バイトが一緒だったの!」
ニコリとする花凜。
以前も隣に居たのが花凜だとしても、付き合ってないとは限らない。栄斗は安心出来なかった。
「あ!もしかして、慧斗と付き合ってると思ってる?
あはは、ないよ〜!私、年上彼氏が居るし!」
「え…そう、なんだ。」
少しホッとする栄斗に、花凜は何かに気づいたように、口角を上げる。
「栄斗くんが傘あるなら、私はいらないね!」
「あ、ごめん。ありがとう。」
慧斗が慌てたように言うと、花凜は慧斗の肩に手を置く。
「慧斗、大丈夫だよ!
また、バ・イ・ト、でね。」
含みのある言い方に慧斗は首を傾げたが、花凜はニコっとしてその場を後にした。
「…花凜ちゃんって気づかなかった。」
栄斗が先に口を開いた。
「俺も…話しかけられるまで気づかなった。」
「女の子ってバケるな…。」
二人は小さくなる花凜の背中から、目を逸らさず言う。
「ホントだな。」
慧斗がそう言って横を向くと、栄斗と目が合った。
そうして、男二人は少し窮屈そうに同じ傘に入った。
つづく。




