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慧斗と栄斗  作者: 白 月虹


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4/9

4話 すれ違い

※男性同士の恋愛を含みます。

苦手な方はご注意下さい。

(いきなり行ったら驚くかなー?)


栄斗はいたずらっ子のような顔をして、慧斗のバイト先へ行く。


すると、丁度慧斗が出てくる。


隣には――キレイな女性。とても仲が良さそうで、今まで、栄斗に向けた事のない柔らかな顔で笑っていた。


栄斗は息をするのも忘れるくらい二人を見つめていた。


「……そっか。…そうだよな。」


ポツリと呟く栄斗の言葉は、自分を慰めるようだった。


一方慧斗は、自分のアパートの部屋へ帰ると、栄斗に電話しようか迷っていた。


「もう、帰ったかなぁ…?」


クッションを思い切り抱きしめて、緊張を紛らわすと、意を決して電話かけた。


プルプル、プルプル…。


『もしもし?』


少し元気がなさそうな栄斗の声。


「栄斗?ごめん、疲れてた?」


『いや…。』


「そっか。また今度二人で、飲みに行きたいな。と思って…。」


『…それで、俺ん家来てキスするの?』


その言葉に慧斗は青ざめた。


「いや、そう言う訳じゃ…。でも俺たちって…。」


『……俺たち、男だぜ?』


慧斗の心臓は冷えていく。


(じゃあなんでキスしたの?俺と同じ気持ちじゃないの?)


頭に言葉が浮かぶのに、上手く紡げなかった。

その後何を言ったか分からないまま、通話を切った。

そしてしばらく、通話が切れたスマホを握ったまま、慧斗は動けなかった。


また連絡をしない日々が続いた。

慧斗は後悔した。この気持ちを…この気持ちに名前を付けるのが怖くて、先送りにした結果、栄斗に嫌われたのかと思っていた。


――10日経った雨の日。バイト終わり。

いつものように、バイト仲間と慧斗は出てくる。


「あちゃ…雨かよ…。」


「慧斗、傘持ってきてないの!?」


隣の女性が呆れたように言う。


「朝は降ってなかったから…。」


「もう…仕方ない!駅まで一緒だから、入れてあげよう!」


「言い方に棘あるなぁ…。」


傘に入ろうとした時――


「慧斗!」


「っ!」


呼ばれて向く方向には、傘をさした栄斗が立っていた。


「…栄斗?」


悩んで、会いたかった栄斗が目の前に居るのに、なぜか声が出なくて、ただ立ち尽くしていた。


すると、横からひょこっと顔が出る。


「え!栄斗くん!?」


「んあ?誰?」


慧斗の隣に居るたけで、嫌悪感なのに、自分を知ってる感じなのが、余計に眉間のシワを濃くした。


「私、花凜!」


「…高三の時の…?」


「そう!慧斗と偶然バイトが一緒だったの!」


ニコリとする花凜。

以前も隣に居たのが花凜だとしても、付き合ってないとは限らない。栄斗は安心出来なかった。


「あ!もしかして、慧斗と付き合ってると思ってる?

あはは、ないよ〜!私、年上彼氏が居るし!」


「え…そう、なんだ。」


少しホッとする栄斗に、花凜は何かに気づいたように、口角を上げる。


「栄斗くんが傘あるなら、私はいらないね!」


「あ、ごめん。ありがとう。」


慧斗が慌てたように言うと、花凜は慧斗の肩に手を置く。


「慧斗、大丈夫だよ!

また、バ・イ・ト、でね。」


含みのある言い方に慧斗は首を傾げたが、花凜はニコっとしてその場を後にした。


「…花凜ちゃんって気づかなかった。」


栄斗が先に口を開いた。


「俺も…話しかけられるまで気づかなった。」


「女の子ってバケるな…。」


二人は小さくなる花凜の背中から、目を逸らさず言う。


「ホントだな。」


慧斗がそう言って横を向くと、栄斗と目が合った。

そうして、男二人は少し窮屈そうに同じ傘に入った。



つづく。

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