№4碧と
環と碧。
環は夕食後、
「ちょっとでかけて来る」
と、ふらり家をでた。
絵美は彼女の身体を気遣い、一瞬だけ行くのを止めようとしたが笑顔を作り、
「碧君のところね」
と笑顔をみせる。
振りかえった彼女は、
「もう」
と頬を膨らませ微笑んだ。
環は狭い道を歩き、数分のところにある碧の家に着いた。
二階にある彼の部屋の灯りが点いている。
彼女は一瞬、裏庭にある木をよじ登って、窓から覗き込み驚かしてやろうと思ったが、
「・・・・・・やめた」
と玄関のインターホンを鳴らした。
「ピンポーン」
どたどた。
ガチャリ。
「はーい。いらっしゃい、環ちゃん、碧いるよ。ささ、あがってあがって」
碧の母が扉を開け出迎える。
「お邪魔します」
「碧~環ちゃんよ」
「ん・・・おう!」
バタン。
二階部屋の扉が開き、碧が階下をのぞく。
そこには久しぶりの環がいる。
「よう」
片手をあげる彼に、
「おう」
と、彼女はおどける。
部屋に入ると環はベッドの縁に座り、碧は勉強机の椅子に腰をかけた。
「・・・(体調)大丈夫なんか」
彼はちょっぴり細くなった彼女を気遣う。
「うん、まあね。そっちこそ・・・」
逆に環は机に無造作に散らばる本や講義ノートをみて慮って言った。
「まあな。でもなんとかなりそうだよ」
「そう。よかった」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばしの沈黙となり、
パンパン。
と環は突然右手で隣を叩く。
「はよ。おいでよ」
「うん」
碧が環の隣に座ると、彼女はぴたっと彼の肩に頭を預けた。
「ん」
と潤んだ瞳で口づけをせがむ。
そんな彼女の姿に彼は煽情をそそられる。
「ん」
とふたりはキスをする。
「する?」
と男の本能が炸裂する碧。
「ばーか」
と返し、碧の肩にしばし身を預ける環。
「ずっとこうしていたいな」
「ずっとできるだろ。きっと」
「うん」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あー幸せ」
「そうだろ」
「ぱーか」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
すーす。
やがて環の寝息が聞こえだす。
「寝ちゃったか・・・おやすみ」
そっと布団をかけ、椅子に戻ると頬杖をつき彼女の寝顔を見つめる。
それから一時間後、
碧は眠る環をおんぶし、外へ出ようとする。
玄関先で、
「環を送って来る」
碧はそう伝える。
「うん、いってらっしゃい」
母の言葉を背に受け彼はゆっくりと歩きだす。
外に出ると月あかりと星空が瞬いている。
ちょっとだけ、嬉しいような切ないような感情に襲われる。
「おやすみなさい。俺の眠り姫」
そう呟いた碧は自身に、
「・・・キザだな」
と苦笑する。
碧は環を背に夜の道をゆっくり歩いた。
次回、最終話です。




