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№3茜の結婚式Ⅲ

 披露宴。

 

 環は舟のデッキの上で操船している茜を見た。

 真剣な眼差しで舟を進めている。

 ふと2人は目が合うと同時に笑った。

「おめでとうございます。それとありがとうございます」

 環は心からの思いを伝え、

「こちらこそ、ありがとう」

 茜はそう返した。

 それから環と碧、茜と健司は互いに幸せを噛みしめるかのようにいっぱい笑い合った。



 高砂や

 この浦舟に

 帆をあげて

 月もろともに出で潮の

 波の淡路の島影や

 近く鳴尾の沖過ぎて

 はや住の江に着きにけり 

 はや住の江に着きにけり



 花嫁茜は高砂の祝い唄を披露しながら、ゆっくりと岸辺へと近づける。

 そして彼女の操る花嫁舟は無事に披露宴会場のある桟橋へと到着した。

 

 新郎新婦のふたりはみんなの下船を見送る。

 その間、家族親族友人は会場までの道のりに、左右に分かれてウェディングロードを作った。

 それから、腕まくり新郎と法被姿の茜が腕を繋ぐとフラワーシャワーの中をくぐった。

「おめでとう!」

「お姉様おめでとうございますっ!」

「皆さん、こんな姿でごめんなさい」

 少しだけバツが悪そうに、でも幸せいっぱいに茜と健司は少しだけ足早に歩いた。


 それから。

 茜は純白のウェディンドレスに着替え、健司はタキシードへと衣装替えを行い、雛壇に座っている。

 宴も進み、乾杯の音頭で会食となる。

 環たちは美味しい食事に舌鼓をうつ中、司会のアナウンスが会場に響く。

「それでは余興とまいります。新郎、新婦様のご友人、明石環様、白石静様、流星綺羅々様・・・なんとあの元ちぇんじまいらいふの皆様と倉野碧様ステージへの御登壇よろしくお願いします」

「よし。いこうみんな」

 碧は立ち上がると、ネクタイの首元を整え、みんなを促した。

「うん」

「よしきた」

「いきましょう」

 面々は立ち上がる。

 

 四人はどよめきと歓声の中、ステージ上に立つと、中央に環、右に静、左に綺羅々とアイドル時代と変わらぬ基本フォーメーションをとった。

 碧は彼女から少し離れた奥に立ち、スーツの両ポケットから扇子をとりだした。

「おめでとございます!」

 四人は雛壇の二人に深々と頭をさげる。

 パンっ。

 碧は両扇子を開き、

「茜さん、健司さんの幸せな門出に際しいざっ!」

 3人も合わせ、

「いざっ!」

 3人はマイクを持ち歌いはじめ、碧はぎこちない動きで扇子を上下させ応援する。

「♪ちぇーじまいらいふ、ちぇんじまいらいふ♪※リフレイン」

 拳を振りかざし原点の曲を歌いだすと、会場からは声を合わせ腕をつきあげる者もいた。

 30秒ほど続けると、

「なんちて」

 とてへぺろする環に、会場はどっと笑いが起こる。

 すぐ「ユー・レイズ・ミー・アップ」の前奏が流れはじめる。

 静をメインとして環、綺羅々は優しく温かく歌いあげた。


 拍手の中、席へ戻った4人は息を弾ませ満面の笑顔だった。

「あー久しぶりに緊張した」環。

「ね」静。

「手に汗かきました」綺羅々。

「いや、よかったよ。みんな」碧。

 そんな中、ポンと環の背を受雷が叩いた。


「?」

「ちょっといいかい」

 環と受雷はそっと会場を抜け、人もまばらなエントランスへでた。

「環君・・・君は・・・」

 受雷はじっと彼女の瞳を見て、

「こんなことを言うのはおこがましいかもしれないけど・・・なんとか・・・」

(してみせようか)

 鎮魂探偵の矜持を胸に、そう言葉を続けようとしたが、環は静かで揺るぎのない真っすぐな目を彼に見せていた。

「・・・伊武さん」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・そうか・・・そう決めたのか」

 受雷は肩をすくめ、右手を差し出した。

 環は柔和に表情を崩し、その手を取った。

「おめでとう・・・でいいのかな」

 彼には不意にそう言葉がでた。

「ありがとうございます」

 環は笑顔で答えた。



 思い。 

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