№2茜の結婚式Ⅱ
花嫁舟。
4人は掘割の沿いの白秋道路を歩き、神前式が行われる日吉神社へと向かった。
なんだかんだと話をしている内に到着した。
参道では参列者や関係者で賑わっている。
元アイドルたちの登場にその場はざわつくが、本日の主役はそうではない。
すると、彼女等に気づき手を振って来る女性がいた、後ろに続いてゆっくりと歩く男性。
「みんな久しぶり・・・なんか、めっちゃ凄くなって」
真美は目を細める。
後に続いた鎮魂探偵伊武受雷は、片手をあげ、
「よう・・・」
と言い、環を見て一瞬だけ言葉を失う。
「その節はお世話になりました」
碧がぺこりと頭を下げる。
真美はぶんぶんと両手を振る。
「そんな。私こそ、みんなに出会えたことが自慢なんだから」
「それ、俺の台詞な」
「あ、ごめん」
みんなはその言葉に笑った。
「伊武さん、ありがとう」
環は深々とおじぎをする。
「ああ・・・君は・・・」
受雷が話を続けようとした時、ざわざわっと参道が騒がしくなる。
主役が登場したのである。
白無垢姿の茜に紋付き袴の健司が手を繋ぎ、本殿にむかい参道を歩きはじめていた。
「お姉様っ!」
環の声援に、茜は気づくと笑顔で左手を振ってみせる。
ふたりが本殿へ入ると、家族親族が続き、友人、仕事の同僚が続く。
環たちも同じく本殿へと入った。
しばらくすると祝詞があがり厳かに神前式が行われた。
ドンドンドン。
和太鼓が高らかに響く。
参列者たちは一斉に隣にある掘割の桟橋へと向かった。
「さてと」
茜は立ち上がる。
「本当にやるのか」
健司は苦笑いをする。
「やらないでか。ここでやらなきゃ絶対後悔するもん」
「・・・そっか」
「この子ったら」
茜の母は呆れている。
「どうせ、披露宴会場ではドレスチェンジでしょ。なら今、着替えたって問題なし」
「アリだけどな」
「ねぇ」
そういう健司と母に、
「母さん、時間がないから着いたら、着替え、手伝ってね」
「はいはい」
「健司」
「ん?」
「どうする(漕ぐ)?」
「いや、俺は茜の雄姿をみてるよ」
「・・・分かった」
10分後、ばっちょ笠に法被、足袋を履いた茜と袖捲りした健司が颯爽と桟橋に現れた。
「花嫁が花嫁船をおすなんて、前代未聞ですよ」
そう苦笑いする式場のスタッフに、
「ですよね」
茜は笑顔で返した。
本来なら、先に乗船する新郎新婦を先において、両家の家族が乗り込んだ。
茜は右手に竹竿を持ち、左手で係留するロープを握りしめみんなを誘導する。
健司は船頭の茜に付き従い、乗船の手伝いを行った。
ほどなくしてふたりが乗る一番舟は乗船予定の人達を乗せた。
茜は2人分余った空席を見つめる。
「健司・・・じっちゃんとばっちゃんの席だけど」
「ああ」
健司は頷いた。
続いて2隻めの舟への関係者の乗船が開始されようとしていた。
「環ちゃん!碧君!」
茜は続けて、
「こっち乗ってくれる?」
「へ?」
驚く環と碧。
花嫁舟3隻に全員が乗り込むと茜は空を見上げすーっと息を吸った。
「本日はわたしたち二人の門出にみなさん来ていただき、本当にありがとうございます。本来なら花嫁らしく、お舟にちゃんと乗るのがいいと思っていたのですが・・・私は船頭です。ならば自分の良き日を本当に最高の日にしたいと思い、このかたちにしました。みなさんご了承ください。それでは船頭祝い唄・・・」
四海波平らかに
瑞色の天
七宝をのせきたる福神の舟
明澄一曲高砂の舞
家運隆々として万年に及ぶ
茜は一曲歌いあげると、ふうと一息をつき、健司へ笑顔見せる。
彼はサムアップしてみせる。
そして竿を握りしめ、
「それでは出発します」
と宣言し、彼女は力強く舟をこぎだした。
発します。




