~二月~ №1茜の結婚式Ⅰ
今日は・・・。
絵美はそっと環の部屋を開けた。
すーすー。
彼女は静かに寝息をたてている。
母は環の眠るベッドの端に腰かけ、愛おしい我が愛娘の顔を見つめた。
「眠れる森の・・・環・・・たまちゃん・・・そろそろおきておきなさい」
絵美はゆっくりと娘の肩を叩いた。
「うーん」
環は寝返りを打つ。
「ほら、たま起きなさい。今日は大切な日でしょ」
「・・・・・・」
母は天井を見つめ一息吐くと、静かに立ち上がった。
「おやすみ」
絵美がそう呟いた瞬間、
ぱちり。
環の目が開いた。
「おはよう」
絵美はちょっとだけ驚き、娘に挨拶をする。
「お母さん、おはよう・・・今日は何日?」
「2月14日よ」
「えっ!」
「大丈夫、まだ式まで時間はあるわ」
驚く娘に、母は柔和な笑顔をみせる。
「さあ、おめかしをしなくっちゃね」
母は環の部屋の扉に手をかける。
環は立ち上がると、
「うん・・・そっか、私、5日も寝ていたんだ」
と、呟く。
「・・・そんなことより、環!朝ご飯しっかり食べて今日を楽しみなさい」
母は努めて明るく言う。
「うん」
彼女は頷いた。
絵美は環の長い髪を櫛で優しく梳き、髪の毛を整えた。
「お母さん、これ結んで」
娘が母に手渡したのは、少しだけ色褪せたリボンだった。
「・・・これ付けるの?ずいぶん子どもっぽくなるし色褪せているわよ」
「いいのいいの」
「そう?」
「お母さんなら上手に出来るでしょ」
「・・・そりゃ・・・まあ・・・ね・・・じゃあ、まかしとけ」
「まかした」
と母娘はそんなやりとりに笑い合った。
ほどなくして、碧と静それに綺羅々たちが明石家にやって来る。
皆はフォーマルな服装をしている。
碧はスーツ、静はフォーマルスーツ、綺羅々は着物を着ていた。
「おまたせ~」
存分におめかしした環は絵美に見送られながら玄関へとやって来た。
「みんな、環をよろしくね」
「はい」
「も~お母さん、私は子どもじゃないよ」
「はいはい」
母の返しに、みんなは笑う。
「アオちゃん」
「ん?」
環はくるりと背を向けた。
「なに?」
「だから・・・」
「・・・・・・?」
「リボンっ!」
「???」
「覚えてないの」
「いや・・・うん」
「幼稚園の時、アオちゃんからお誕生日プレゼントで貰ったの!」
「そうだったっけ?」
と、キョトン顔の碧に、
「ああ」
と母は得心したのだった。
環は顔を碧の直前まで近づけ、
「じゃあ、もう一度聞くよ、似合ってる?」
「・・・ああ、似合っているよ」
勢いにおされた形の碧は苦笑いを浮かべる。
「よし」
「なんだそれ」と静。
「ですね」と綺羅々。
めでたい日。




