№7クリスマス
メリークリスマス。
クリスマスイブを迎え、明石家では盛大にクリスマスパーティーが開かれた。
明石家族、それに碧、静、綺羅々が呼ばれ会がはじまった。
リビングには1.5mのクリスマスツリーが飾られ、折り紙を四等分にして切り、丸めたカラフルな輪っかが天井を彩っていた。
テーブルには、わんぱく骨つきチキンにオードブルが所狭しと並べられ、奮発したであろう巨大クリスマスケーキが中央に鎮座していた。
俊二、絵美、和志、綺羅々はシャンパンで、環、碧、静の未成年たちはシャンメリーでの乾杯となる。
「えーでは、乾杯の音頭を環お願いします」
今日に限って俊二はでしゃばろうとせず娘を促す。
「はい」
環はグラスを持って立ち上がる。
「よっ」と和志。
「ほっ」と絵美。
家族の合いの手が入ったところで、
「では、みなさんクリスマスに・・・かんぱーい」
「かんぱーいっ!」
賑やかにクリスマスパーティがはじまった。
料理に舌鼓、ケーキも食べ、ランダムでのクリスマスプレゼントの交換会も滞りなく終わり、現場は酒乱たちが大暴れし混沌としてきた。
「パリピ、パリピ、ぱりぴ~フォウっ!」
和志はアホみたいに連呼しながら笑い上戸のご機嫌だった。
「母さん、カラオケっ、カラオケ大会じゃ!」
俊二は千鳥足でカラオケ大会を勃発させようとしていた。
「楽し、楽しいっ!静ちゃん歌おうよっ」
綺羅々は静の首をロックし、絡んでいる。
「あー待ってね。準備するから~」
と、絵美は一升瓶を片手にカラオケONE番を準備する。
「・・・・・・」
部屋の片隅で楽しそうにだが、第三者のふりをしてやり過ごそうとしている碧の袖が引っ張られる。
「ん?」
振り返った先に、環の顔が迫る。
「碧ちゃん、ちょっと」
「うん」
ふたりは家を抜けだした。
・・・・・・。
「あああっ!環と碧がいません!」
和志の報告に、
「奴等シケコミやがったなっ!」
へべれけ綺羅々が速攻でツッコむ。
「・・・・・・」
しばらく皆でざわつくものの、
「ま、ええか」
と共通した結論が出た。
ふたりは裏手にある矢留神社に来ていた。
「小さい頃ここでよく遊んでいたよね」
「そうだな」
お詣りをしたあと、白秋の帰去来詩碑の前まで来ると、突然スピーカーから音が流れはじめた。
「うわっ」
と驚いた環が抱きつく。
帰去来の歌が夜の神社に響き渡る。
「自動センサーで歌が流れるんだっけ」
碧はそう呟き、
「へ、白秋さんの歌?」
「そう、帰去来の歌だよ。晩年の白秋が故郷柳川を偲んで作った歌だそうだ」
「ふーん、そっか」
ふたりはしばらくその歌に耳を傾ける。
「しかし、(音)やかましいな」
「胸にじんわりくる曲だね。白秋さんは柳川に帰れなかったけど私はここにいるね」
「・・・?」
「うん、気にしないで」
「環」
「私はここに生まれてよかったなと思っている。みんな大好きだもん」
「ああ、俺もだよ」
「うん、知っている」
環は屈託なく微笑み、静かに碧とキスをした。
聖なる夜に。




